フェーレース
2章スタートです。
いつもよりも、少し長いです。
俺達は、故郷のルーポ村から、迷宮都市の一つである【フェーレース】に向かって歩き出した。フェーレースまで徒歩で5日掛かる日程だ。簡単にフェーレースの事を話してみようと思う。
フェーレースは、レオーネ国が管理している、迷宮都市の1つで、初心者向けのダンジョンがある所だ。フェーレースには、村に無い施設が沢山ある。先ず、冒険者ギルドを始め、宿屋、武器屋と防具屋。魔道具屋に、服屋や商業ギルド。勿論、村にあるような肉屋とか生活に困らない程度にある。そしてこれが重要で、ダンジョンがある事。誰もが一攫千金を求めてやって来たり、力試しの人も多い。ダンジョンの事を父親に聞いた事があるけれど、「めんどくさい」「ギルドの人間に聞け!」っと教えてくれなかった。まぁ~俺は、それはそれで良かったと思ってる。何故かって、楽しみが1つ増えたから。どんな所なのかワクワクしてる。簡単だけどこんな所かな。
さて俺達は、西門から出て来た訳だが、フェーレースに行くには街道を進めば着く。道が有る無しでは疲れ方が違うのは言うまでもない。途中で母さんに、作ってもらった弁当をカーティアと一緒に食べて、また歩き出した。途中で安全な岩場に囲まれた場所が有ったので、そこで野宿をする。
「カーティア、俺が見張ってるから休んで。」
「ありがとう。休ませて貰うね。」
「良いよ」
「おやすみ。」
「ああ。おやすみ。」
俺は、焚火を絶やさないように適当に、枯れ枝を入れる。そして、周りに注意するように、【気配探知】を張り巡らす。幾ら安全だと思ってもこの世界では、絶対はないからだ。特に夜の野宿は危険と隣り合わせなのだから。
「おはよう。」
カーティアが起きて来て、挨拶してきた。
「おはよう。良く寝れた?」
「うん。」
「それは、良かった。顔を洗って、朝食にしてフェーレースに向かって出掛けようか」
「うん。」
朝食を取って俺達は、この場所から歩き出した。この後何事も無く、無事にフェーレースに到着した。
「カーティア見て。フェーレスの門が見えて来たよ」
「あ、本当だ。無事に着いて良かったね」
「そうだね。」
俺達は、フェーレースの南門に近づいて行くと、門に常駐する兵士の人に声を掛けた。
「すいません。」
「おう、迷宮都市フェーレースにようこそ。身分証明書は有るか?無ければ通行料として、1人大銅貨2枚だ。」
「村から出て来たばかりでまだ持ってないのですが」
「それなら、最初にこの玉に触れてくれ。悪いが町の規則でな。」
「「はい。」」
そう言って来たので俺達は、玉に触れた。兵士の人は玉を確認すると頷いて用紙を持ってきた。
「問題無いな。この用紙に、名前を書いてくれ。」
「これは?」
「これは、仮の身分証明書代わりになる。但し、あくまでも仮だからな」
「はい」
俺達は、用紙に名前を書いて兵士の人に渡した。
「よし。ちょっと待ってろ。」
暫くして、兵士の人がやって来て……。
「確かに。フェーレースに来た目的は……格好見れば分かるが聞いても良いか?」
「はい。俺達は、冒険者になって迷宮挑もうと思ってます」
「やはりか。よし、これがお前たちの仮の身分証明書だ。この用紙で10日は大丈夫だが、冒険者になるならギルドに登録すれば良い。それが身分証明書の代わりになるからな。」
「はい。ありがとございます」
「良いって事よ。これも仕事のうちよ」
「兵士さんに質問が有るのですが、宜しいでしょうか?」
「ん、何だ?」
「えっとですね、宿屋と冒険者ギルドの場所を教えてもらえないでしょうか?」
「良いぞ。先ず宿屋なら、すぐそこに有る【コリーリョ】って宿屋が良いぞ。ちょっと値は張るがとても良い所だ。そこの親父はちょっと見た目が……。ゴホン、何でもない。」
「はぁ」
「ギルドはこの通りを真っ直ぐに進むとレンガ作りの建物がそうだ。行けば解かる。」
「色々とありがとうございました。」
「いやいや。お前たちも頑張れよ。」
「はい。失礼します」
「おう。」
俺達は、さっき兵士さんに教えてもらった宿屋に向かって歩き出した。宿屋は南門の近くだった。もうじき夜になるので今日は宿屋に泊まって、ギルドは明日だな。そんな事を考えてると、看板に【コリーリョ】って有ったので入った。
ここの宿屋は、3階建ての作りをしていて、1階が酒場になっていた。酒場はカウンターの席が10席ある。その他にも、テーブルの席も10もある横に広い作りだった。
俺達は、中に入って声を掛けた。すると、奥からスキンヘッドの強面の親父さんが出て来た。
「おう。らっしゃい。何の用だ坊主。」
「え、えっと。宿をそこの門の兵士さんに教わりまして、やってきたのですが、空いてますか?」
「空いてるぞ。1人、1泊2食付きで、銀貨2枚と大鉄貨1枚だ。お湯は別で銅貨2枚だ。それ良かったら泊な。」
「2人なのですが部屋はべ「一緒で」お願いします。」
と、カーティアに遮られてしまった。
「ええ、カーティアそれは不味くないか?」
「何で?私は構わないけどね。」
「おじさん二人部屋でお願いします。」
「おう、良いぞ。って言うが、実は二人部屋しか空いてないんだがな」
「……分かりました。」
「取り合えず、3日分でお願いします。」
「よし、解かった。今日は少しまけてやるから、2人で銀貨6枚で良いぞ。」
「え?良いのですか?」
「構わん。ほれ、これが鍵だ。場所は階段上がって3階の右端だ。」
「ありがとうございます。親父さん。」
「エリクだ。」
「え?」
「名前だ!」
「あ、お、俺はルカです。」
「カーティアです」
「おう!頼むぞ」
俺達は、エリクさんに教わった部屋に行って鍵を開けた。部屋の中に入ると、少し広かった。入って右側にクローゼットが2つ有って、中央にテーブルと少し広いソファーが2つ。テーブルの奥にベットが2つある。入口の左側には水を流せる場所があった。
俺達は、早速クローゼットに村から持って来た、金目以外の物をしまった。装備品はベットに横に置き、武器だけ腰に刺してソファーに座ってこれからの事を話した。
「カーティアちょっと良いか?」
「どうしたの?」
「これからの事を少し話そうかと」
「うん。良いわよ。」
「明日、冒険者ギルドに行って登録で良いよな。」
「勿論、その為に来たんだから良いわよ」
「登録したら、町の情報収集して、その後にダンジョンで良いかな?」
「ルカ、に任せる。」
「わ、解かった。」
「ルカ~。お腹減った」
「確かにそうだなぁ。よし、下に降りて食事にしよ。」
「うんうん。」
俺達は、鍵を閉めて下に降りた。1階のカウンターに座るとエリクさんが来たので、注文した。
「あ、エリクさん注文良いですか?」
「おう。何にするんだ?」
「えっと、ここの名物料理って何ですか?」
「オーク肉の煮つけと、ステーキだな。」
「じゃあ、それを2人前と果実のジュース。これも2人前で。」
「あいよ! 酒もあるぞ。」
「すいません。俺、酒飲めないので。」
「ガハハハッ。まだまだ穴の青い坊主だなぁ。」
「アハハ」
そんなやり取りしてたら奥から、女の人の声が聞こえて来た。
「エリク、そんな事を言わないの。困ってるじゃないの。」
「おっと……悪かったな。こいつは俺の女房のサロメだ。」
「は、初めまして! じ、自分ルカって言います。」
「私は、カーティアです」
「うふふ。ルカにカーティアね。初めまして。サロメよ。よ・ろ・し・くね~」
「じゃあ、ちょっと待っててね。」
「「はい」」
先に飲み物がやって来て、暫くして、料理がやって来た。感想は母さんに悪いが物凄く美味かった。味は濃厚で癖が全く無かった。肉料理以外にパンも付いて来たんだけど、これが一番驚いた。いつも食べてるパンは固い黒パンなんだけど、そのパンが柔らかくてビックリ。
食事を食べ終わって部屋に戻るときにエリクさんにお湯を頼んだ。暫くして、桶に入ったお湯を持って来たので、銅貨2枚を払った。桶を水を流せる所に持っていき、カーティアが先に使ってもらってからその後に俺が使った。ソファーでゆっくり休んでいると、カーティアが隣に座って来た。少し話してベットで寝ようかと思って、立ち上がったら不意に背中にカーティアが抱きついて……。
「え、カーティア?」
「えっとね……。子供の頃からずっと好きだったの。」
って言うと俺の正面に回って、カーティアの唇が俺の唇を塞いだ。俺は何が起きたのか理解するのに時間が掛かった。
「カーティア?」
「フフフ、今日は一緒のベットで寝ていい?」
「は?べ、別に良いけど」
「それじゃあ寝ましょう」
「ああ」
そう言って、ランタンの火を消して2人で寝ました。俺は、少し放心状態だったけど、カーティアは何事も無かった様に隣で寝ていた。俺は、眠かったのかそのまま意識を手放した。