森の赤い悪魔
村から歩いて少しの所で、カーティアと2人で、モンスターを狩る為に草原に来ている。それは、さっき母さんから教わった魔法を、使ってみようかと思ったからだ。この草原にはたいした事のない一角兎が主体で、滅多に強いモンスターが出て来る事がないから、周囲を確認していれば安全だ。何故、周囲を確認しているかというと、それには二つの理由がある。
一つ目は、今日は父さんが居ないからだ。いつも、父さん任せなので、ちょっと緊張している。でも、いつも父さんが居るとは限らないので、慣れるしかないのだけどね。
二つ目は勿論、カーティアの存在だ。父さんは、「女を守れる存在になれ!」っていつも、酔っ払っては言ってくる。過去に何が有ったかのか解からない。でも父さんの言う通りだと思い、いつに増して警戒を強めていると……。
【気配探知】を覚えました。
って頭の中で響いた。
まじか、いつも突然だからビックリする。この【気配探知】凄いことに、周囲を見なくてもモンスターの位置がわかるから有り難い。ん?この反応は……。
「カーティア、前方にモンスターの反応有り。その数、3体。注意して。」
「え?何でわかるの?」
「良いから、後で話す。来るよ」
「うん。」
俺はさっき覚えた魔法を撃った。
「いけー。【ファイアーボール】」
一体に命中した。腰に刺している銅のショートソードを抜いて走り出した。その時、カーティアが声を掛けて来た。
「私も、魔法を撃つからちょっと避けて。いくよー【ウォーターボール】」
「うおー、あぶねー。」
前方にバシャーンって音ともに、一角兎がまた倒された。後一匹は、【剣術・スラッシュ】で止めをさし倒した一角兎を解体中に……。
「ねぇ、ルカ。何でわかったのか教えて?」
「ああ、【気配探知】を覚えたんだよ。そしたら、急に周りの状態が解かってさ。」
「そうっだたのね。やっぱ、ルカはすごいなあ~」
「いやいや。俺なんか父さんに、足元にも及ばないよ。」
「ううん、それでも凄いと思ったよ。」
「ははは、ありがとう。褒められるとちょっと恥かしいな。」
「うふふ。」
「よし、解体終了。」
「はい、おつかれさま~。」
「これは、村に帰ったら分けるから、取り合えず俺が持っておくね。」
「うん。ありがとう。」
「ちょっと休憩しようか」
「うん。」
そう言って、その場に腰を下ろし、近くにモンスターの気配を確認しながら、水と食料を取ることにした。もちろん、解体した余分な物は、土を掘り埋めましたよ。じゃないと余計な魔物を、引き寄せるだけだからね。俺たちは、今後の事を話し合い、ちょっと早いけど村に戻ることにした。
無事に村に着き、解体した一角兎の素材を分けて、それぞれの家に帰宅した。
次の日の朝、朝食中、父親に、今日の予定を聞いてみた。
「父さん、今日も草原で狩りするの?」
「いや、今日は南の森に行って狩りをするぞ。」
「森かぁ~。楽しみだ。そうだ、隣のカーティアを誘っても良いかな?」
「ああ、構わんぞ。」
「じゃあ呼んでくるね。」
「ああ。」
そう言って食事を終わらせ立ち上がって、食器を片付けていると、扉が開く音と聞きなれた声が聞こえて来た。
「おはようございます。」
振り向いたらカーティアが来た。
「「「おはよう。カーティア。」」」
「今、呼びに行こうかと思てたんだけど、丁度良かった。」
「そうだったんだ。」
「今から、父親と森に行くんだけど、行く?」
「うん。おじ様、よろしくお願いします。」
「ああ。無理せずに着いてくれば良いぞ。」
「はい。」
「ルカ、準備終わったか?」
「うん。後は母さんから人数分の昼飯と水筒を貰えば行けるよ。」
「お待たせ、はい。あなた、これね。」
「ああ、悪い。行って来る。」
「いってらっしゃい。」
家から南門に向かって、歩き出していく。途中にある雑貨屋で、必要な物を買っていき村を出た。
森は村から少し歩いた所にある。俺は、少し警戒しながら父親の後を、カーティアと一緒に歩いていた。少し喋っている時に、モンスターの気配を感じたので、父さんに声を掛けた。
「父さん、森の近くに感じたことのない、モンスターの気配を感じる。」
「ああ、お前は初めてか。」
「うん。この気配何なの?」
「行けば解かる。ただ、警戒だけは怠るなよ。」
「解かった。」
森に近づくにつれて気配が強くなって来た所で、身長は低く、二足歩行の緑色した魔物が5体、姿を現した。「何だあれは、キモイ!」の一言。カーティアも首を縦に振って頷いてる。
「父さん、あれは何?」
「ゴブリンだ」
「あれがそうなのか。」
「奴を仕留める! いくぞ!」
「うん。」
「はい」
俺と父さんはゴブリンに向かって、切りかかり倒していく。カーティアは、【土魔法・アースバレット】を使い倒しているようだ。俺と父さんとカーティアは全てのゴブリンを倒した。
俺は少し油断したのか、軽い怪我をして、カーティアに【回復魔法初級・ヒーリング】をけてもらい、事なきを得た。【回復魔法】はやはりいい。持ってる人が居ると居ないとでは雲泥の差だ。改めて、カーティアの凄さを感じづにいられなかった。
ゴブリンを倒し、森の中に入る前に太陽が真上に来ていたので、森の手前で、軽い昼飯にすることにした。昼飯が終わり、森の中に進んでいくと、色んな薬草と木の実を発見したので、採取した。
採取を終えてまた森の中を歩いていく。近くの小川に差し掛かって来た所で、とても大きな熊が居る事に気が付いた。熊はこちらに気が付いたのか、突然走り出し襲ってきた。
「父さん、カーティア、熊が襲ってくる気を付けろ!」
「奴は、森の赤い悪魔と言われている、レッドベアだ。かなり凶暴な上に厄介な相手だ。村人の何人かが怪我をしているから気を付けろ!」
「「はい!」」
父さんと俺は腰に刺してある剣を抜き、体勢を整える。カーティアは俺たちの後ろに下がっていく。レッドベア、村の誰かに傷を付けられたのか、片方の目の所に切り傷がついていて、凄く怖さを感じる。レッドベアは、立ち上がり鋭い爪で、俺たちを攻撃してくる。
「あぶねー。これでもくらえ! 【スラッシュ】」
レッドベアは、「この俺様に、傷をつけたな!」、みたいな咆哮をあげて、俺に鋭い爪でラッシュしてくる。それも何度も何度もだ。
「くっ。うわ~!」
「ルカ、大丈夫?今、回復するから。 【ヒーリング】」
「た、助かった。カーティア、ありがとう」
「うん。回復は任せて。」
「ああ、助かる。」
俺は何か無いか考えて、父親に任せていた。そして、ん?これなら奴だって、耐えられないかもしれない。
「父さん、離れて! 魔法を撃つから」
「おう。」
そう言って5本の炎の矢を頭上に出し、レッドベアに食らわした。
【ファイアーアロー】を覚えました
って頭の中で響いた。
レッドベアはかなり弱っていた。父さんは素早く真横に移動すると、剣を首に目掛けて降り抜く。するとレッドベアの首がずるっと落ち、「ドスーン!」と、音ともに倒れ絶命した。
「はぁはぁ……。やっと倒れたー。父さん、カーティア、無事?」
「ああ、お前も良く頑張ったな。」
「私も無事だよ。」
「そうか、良かった。」
「少し休んだら、こいつを村に運ぶから手伝え。」
「了解。」
俺たちはその場で少し休んで、森を後にし村に帰還した。