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奴は魔界四天王の中でも最弱  作者: 公心健詞
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勇者退治

フロラにケガをさせたけしからぬ勇者一行を退治することになった。

ユリウスが教室に帰ってくると、フロラと出くわした。フロラは腕と口から血を流し、手にはフサフサの毛が生えた茶色のしっぽのようなものを六本持っていた。それはピチピチとまるで生きているかのようにせわしなく跳ね回っており、異様な光景だった。

「フロラ!ケガしてるじゃないか、大変だ、保健室に行こう!」

 ユリウスがそう言うとフラウは微笑を浮かべる。

「たいしたことないわ。それよりこれを校長先生にとどけないと」

「なんだいそれ?」

「魔法のしっぽよ。これを付けると誰でも魔法を使えるようになるの。今回襲ってきた獣人はかなり強かったからかなりの魔力を持っているはずよ、先生たちも喜ぶわ」

「それならフロラが持ってなよ」

「それは出来ないわ。私が四天王の地位に居られるのも、こうやって手に入れたアイテムは全部魔物に引き渡しているからなのよ。実力だけでのし上がったのではいつか足をすくわれる。この世界、営業力も必要なのよ」

「……」

ユリウスはその場に立ち尽くした。なにかフロラが手の届かない大人の世界に行ってしまったような気がした。そんな、営業とかユリウスには思いつかない言葉だった。なにか、とても寂しい気持ちになった。

「どうしたんだ、フロラ!」

 サイコの怒鳴り声が聞こえた。

「たいしたことないわ」

「君のような美しい女性を傷つけるなんて、ゆるせない!勇者め皆殺しにしてやる!」

「もうほとんど殺したわ」

「でもまだ生き残りがいるんだろ?」

「気にしないで。魔力のしっぽも引き抜いたからもう、抜け殻みたいなもんよ。相手にする価値もないわ」

「そうはいかない、しかも獣人だろ?人間よりもさらに卑しい存在でありながら我らを侮辱するとは許せん。見せしめに粉々の肉片にしてやる!」

 そう言ってサイコはパーティーの方を見る。

皆、自信満々に笑顔で頷いた。

「おい、お前も行くぞ」

ドスの聞いた声でタロースが言った。

「はい」

 ユリウスが頷く。

「お前は、俺の後ろにへばりついてろ」

「どういう事です?普通、前衛は横に並列に並ぶでしょ?」

「前衛は俺だけで十分だ。それより、俺の背後に誰も寄せ付けるな」

「どういうことです」

「俺の端のカカトのところに栓があるだろ?」

ユリウスがタロースのカカトを見る。言われた通り、カカトには鉄のネジのようなものがねじ込んであった。

「これが抜かれると体内のマグマがすべて流れ出て俺は死ぬ。だから背後を守ってほしいんだ」

「わかりました!」

 ユリウスは答えた。

逃亡した勇者一行を追っていると、途中で人間の千人ほどの騎士団に遭遇した。重武装の甲冑を着込んで馬に乗った騎士百人ほどと重武装歩兵、弓隊などで構成された部隊だった。

「貴様らか、我らの第一王子を傷つけた不埒な魔物たちは!モンスタースレイヤーと名高い、この騎士団長ガブリス様が刀のサビにしてくれるわ!」

騎士団長らしい恰幅の言い男が怒鳴った。

サイコが無言で手をかざす。

クシャッという音とともに男は拳大の鉄くずになり、周囲にブシャーと血が飛び散る。

「う、うああ、騎士団長があ!」

兵士たちは恐れて逃げ出す。

「フレイムやれ」

 抑揚のない声でサイコがつぶやく。

「はいはい」

 フレイムがうすら笑いを浮かべながら杖をかざすと、一斉に千人の騎士と兵士たちは炎に包まれる。

「があああああ」「ぎやあああああ」

わめきながらそれはすぐに炭の塊になった。

「カオスホール、おかたずけ」

「やれやれ、またボクですか、へいへい」

そう言ってカオスホールが手をかざし、それら炭を全部吸い込んだ。

「ちょっと待てや、今回も俺の出番なしか、いいかげんにしろよ」

タロースが眉をしかめる。

「君は我々の最後の切り札なんだ、そう簡単には出番は無いと思ってくれよ」

「あーあ、もっと強い敵が現れねえかな、弱すぎてつまんねえよ」

タロースが肩を落とす。

「こいつらが言っていた王子様とやらが少しは手応えがありそうだよ、なんたって、フロラに手傷を負わせるくらいの奴らだからね」

「フロラったってたかが精霊だろ、精霊と俺たち魔族を一緒にしないでくれよ」

小馬鹿にしたようにタロースが言った。

ユリウスは無言のまま唇をかんだ。

しばらく進むと、サイコが何かを発見する。

「ん?これは血のあとだな。よし、見つけたぞ、この先にお目当ての連中がいる。急ごう」

サイコが走り出したので他の者もそれに続いた。

杉木立の森の中、遠くから声が聞こえる。女の声だ。

『ちょっと待て!話が違うじゃねえか、私はお前たちを守るために手傷を負ったんだぞ!お前達が、もし私の協力で四天王を倒せたら、私達を人間と同等と認めると言うから」

「お前が手傷を負って血を流しているから、それが敵が我らの場所を特定する目印になる。お前らごときを守るために王子様を危険にさらすわけにはいかぬのだ。ここで死んでくれ」

「危険にさらすって、腕自慢の王子様が王国じゃ誰も相手にならないからって、調子に乗って四天王狩りをいいだしたんじゃねえか、その時から危険は覚悟だろ!」

「だまれ、卑しい身分で王子様に逆らうか、死ね!」

「や、やめろー!」

剣をふりかざす騎士、その下で尻餅をついている黒いフードをかぶり顔は白い布で覆面をした従者。

 そこにユリウスたちは出くわした。

「な、なんだ、お前たちは!」

騎士が驚いて叫ぶ。

「やっと見つけたよ、さあ、ダンスを楽しもうじゃないか」

サイコがうすら笑いを浮かべた。

「踊れ!」

サイコが手をかざした。

「リバースシールド!」

騎士の後ろから声が聞こえる。それと共にサイコの放った衝撃波が跳ね返されてユリウスが粉々になる。

タロース、は防御姿勢で少しあとずさり、カオスホールは手の中に衝撃波を吸収した。フレイムは炎化して衝撃をかわした。

 ユリウスの体は元に戻る。

「大丈夫かオルレオーネ卿」

騎士の後ろから細身で銀色の鎧を着た美少年が進み出る。

「王子、危のうございます、おさがりください」

「大事ない、この程度の魔物、我が敵では……」

と、タロースが一瞬で王子の前まで突進して腕を振り抜く。

王子の首が中に飛び、血しぶきが縦にふきあがった。

「王子!」

オルレオーネ卿が叫ぶ。

「おいおい、よそ見はいけないよん、お前さんの相手はこっち」

そう言ってカオスホールが手をかざす。

「う、うあああああああー」

オルレオーネ卿は一瞬にしてカオスホールの手の中に飲み込まれてしまった。

「ちょっと、カオスホール!騎士を殺すのは私の役目でしょ、あなたは死体掃除だけしてなさいな」

「そう言うなよフレイム、ボクだってたまには戦闘に参加させてくれなきゃ、腕がなまっちゃうよ」

「二人ともケンカしない。フレイムはそこに転がっている従者を燃やしていいからさ」

サイコがなだめる。

「そんな弱っちそうなのいらないわよ、あなたが始末して、サイコ」

 「ふっ」

 サイコは片頬をゆがめて笑いを漏らし、肩をすくめた。

「さて、残ったのは哀れな従者君ただ一人だ。君のお仲間の六人の獣人君もフロラに全部退治されちゃったみたいだねえ、さあ、君はどんな殺され方がいいかな?」

 従者は下を向いて答えない。

「さあ、どうした?怖くて何もしゃべれないのかい?さあ、さあ?」

 白い布で覆面をした従者は急に顔をあげてサイコの後ろがわに視線をやると、指をさした。

「あ、羽の生えたウンコが飛んでる!」

「え?」

サイコが振り返る。

「アホが見る豚のケツ!」

従者は懐からナイフを出してサイコに飛びかかる。

「させるかあ!」

タロースが拳をふりかざしながら従者に殴りかかる。

従者は顔に巻いた白い布をときはなち、タロースに投げつける。

「紫綬羽衣!」

 布はタロースの体にグルグル巻きにまきつき、動きを封じる。従者はタロースに走り寄り、そのカカトの栓をナイフでこじあげる。

「ぬぐおおおおおあああああがががががああああああー!」

タロースはわめき声をあげて絶命した。

「よくもタロースを!」

激怒したフレイムが杖を天にかざす。そこに巨大な火の玉が浮かぶ。

「なんだい、フレイム、お前、こいつと何発やったんだい?」

従者はうすら笑いをうかべながら腰につけたひょうたんの水筒を手に取り、その栓をあけてフレイムに向けた。

「なんだって!」

フレイムが叫んだとたん、ものすごい風が起こり、巨大な炎の玉とともに、フレイムがひょうんの中にすいこまれる。従者はすばやく栓をする。

「まぜまぜまぜ~る、まぜればまぜるほど溶けちゃうよ~」

従者はうすら笑いをうかべながらひょうたんをシャカシャカシェイクする。

「シェイク!シェイク!不気味なむーなさわぎー!」

従者は変な踊りをおどる。

「ぎゃああああああああー、ぐえ、ぐえ、ぐええええああああああ」

ひょうたんの中から叫び声が聞こえるが、すぐに声は消えた。

「こいつめ!」

激怒の表情でカオスホールが手をかざす。

「寄生ダニ!」

叫びながら従者は腰の袋の紐をといて投げつける。中から無数のダニが飛び散り、すべて

カオスホールの手の中に吸い込まれる。

「ぎゃああああー、かゆいよー、痛いよー!」

カオスホールが叫ぶ。

従者はカオスホールに走り寄る。

「ちぇっく、めいと!」

笑いながら目にナイフを突き刺す。

「ぐへっ」

カオスホールは事切れた。

「貴様ああああああー!」

サイコが手をかざす。

従者の体が宙に浮く。従者は懐から紙で出来た無数の人形をまき散らす。

すると従者の体は下にストンと落ち、紙の人形のうち一つが宙に浮いて粉々にちぎれた。

「くそっ、大木で押しつぶしてやる!」

サイコは両手を横に広げる。すると、杉林の大木が抜けて宙に浮く。

「これで圧死しろ!」

サイコが叫ぶと同時に杉の無数の大木はボタッとその場に落ち、かわりに紙の人形が宙に浮いたかと思うと、一斉に従者に向かってぶつかっていった。

「ふふん♪」

従者は鼻で笑いながらカオスホールの顔に突き刺さったナイフを引き抜く。

「や、やめろ、やめろお!」

サイコはあとずさる。

従者は素早くサイコに走り寄る。

「カ・イ・カ・ン……」

言いながらサイコの首を切り裂く。

サイコはよだれをたらしながらその場に倒れる。

「くそおーっ!」

ユリウスが従者に突進する。

従者は素早くユリウスをかわすとナイフでユリウスの顔を切り裂く。しかし、ナイフは素通りする。

「あれま」

従者が驚く。

「ほんじゃ、じゃっじゃかじゃじゃっじゃっじゃーん!マンドラの根-!」

従者はわざとしわがれた声を出して叫んだ。

それは、マンドラごらの根でできた杭に悪魔の腸をつないで、途中にコックがついていて、反対側にもマンドラゴラの根で作った杭がついているものだ。

 従者はその一方を地表に刺す。すると一瞬でマンドラゴラは根を張る。

「くそっ!くそっ!くそっ!」

ユリウスは闇雲に必死になって従者に突進する。従者は無慈悲にその一方の杭をユリウスの首筋に突き刺す。すると、マンドラゴラの杭はすぐにユリウスの首筋に根を張る。

「このコックを開くと、根が泥を吸い上げて、水精のお前は死んじゃうんだけどどうする?どうする?どうする、ど、う、す、る、君ならどうする~?」

従者は歌いながら踊った。

「いやだ!死にたくない!」

ユリウスは叫んだ。



ユリウス絶体絶命のピンチ!

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