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奴は魔界四天王の中でも最弱  作者: 公心健詞
16/20

突然の惨劇

ユリウスたちを襲う突然の衝撃

 仲間になると残月組は非常によく世話をやいてくれた。

 朝比奈はカルビンに拳法を教え、キチ子はユリウスに槍術や剣術を教えてた。

 日々の努力によりユリウスは着実に戦闘能力を向上させていった。

 そんなある日、ドニー公がロダム公と会合を行うため、ゼピュロスを連れて王都を出た。

 残月隊とユリウスたちは国境までドニー公を見送ったあと、王城への帰路についた。

 途中、背中に大きな荷物を担ぎ、ボロ布のようなほっかむりをした老人がよろよろと歩いているのに出くわした。

「おい、危なっかしいなあジイサン。どこまで行くんだい、私が持ってやるよ」

 キチ子が老人に近づく。

「いえいえ、そんなもったいない」

「気にスンナ、俺たちはお前らの税金で飯くってんだからさあ、たまには役に立ちたいじゃねえか」

「そうですか、それじゃ、遠慮なくさせてもらうぜ!」

 ドスッ!と鈍い音がした。老人の手から鋭い黒い爪がはえてキチ子の腹を突き抜く。武装してないので、鋭い爪は軽々とキチ子の体を貫通して、背中まで貫いた。

「ぐはっ、天弓、私ごとやれえええええー!」

 キチ子が血を吐きながら大声で叫びながら老人にしがみつく。

「おう!」

 天弓が素早く弓をつがえてキチ子に向かって放つ。

 弓はキチ子の頭を貫通して老人の顔に直撃する。

「よし、手応えあった!」

 天弓が叫んだ。

「くくくっ」

 老人が押し殺したような声で笑う。その声はしだいに若い声へと変化する。老人が頭からかぶったボロ布のベールを脱ぐ。老人の目には歯があり、それで鏃を噛んで頭を貫通するのを食い止めていた。

「私の目に歯が無いとでも思ったかい?」

 老人はキチ子の頭を貫通した矢を引き抜く。その体はムクムクと大きくなってゆく。

 ボロ布のベールを脱ぎ捨てた男は真っ白な服を着ており、それがキチ子の血で真っ赤に染まっている。

「あーあ、汚い血だなあ」

 端正な顔をゆがめてその青年は言った。真っ白な髪に赤い目、矢は左目に当たっていたが、その左目には歯があってがっちりととじられていた。その歯がゆっくりとひっこんでゆく。

「キチ子が!キチ子があ!うおおおおおおおー!」

 大声で怒鳴って残月が刀を引き抜く。

「朝比奈!」

 藤林が叫ぶ。

「承知!」

 叫ぶが早いか朝比奈は残月の後頭部を殴りつける。

「ぐはっ!」

 不意打ちを食らった残月はその場に倒れる。

「天弓も逃げろ!」

 藤林が叫ぶ。

「いやだ!」

 叫びながら天弓は矢をつがえて、青年に放つが、青年はそれを手で受け止める。

「遮蔽物もなしに、私が矢を食らうと思うかい、嘗められたもんだね」

 青年は侮蔑の笑みをうかべる。

 ドスッ!

 朝比奈は天弓の腹を殴る。

「ぐはっ!息が息ができないっ!」

 うめく天弓と残月を担いで朝比奈が青年の横をすり抜けようとする。

「逃がすと思うかい?」

 鋭い黒い爪を振りかざして朝比奈を狙う。

「こっちが相手だ!」

 叫びながら藤林が青年に突進する。

「来るかい、正面から」

青年は容赦なく鋭い爪で藤林の体を貫く。

 ドロン!

 変な音がして白い煙が舞い上がる。すると、藤林の体は藤林の服を着た大きな丸太になっていた。

 しかも、その芯からは大量の粘着液が流れ出している。

「なんだこれはっ!」

 その粘着液は青年の足下まで流れ出し、動くたびにネチャネチャとくっついて動きが鈍くなる。

「逃げられると思うなよ!モローあいつらを追え!」

 青年が叫ぶと地面が割れて、そこから牛の化け物、モローが這いだしてきた。間違いない。

 フロラに握りつぶされた方の手には銀色の鉄球がついていた。

「モロー!」

 ユリウスが叫ぶ。

「ん?なんだ落ちこぼれか。こんなところで低レベルの人間どもと暮らしていたか、今はお前の相手をしてるヒマはねえんだ。こいつらを殺してから、ゆっくりとなぶり殺しにしてやるよ」

 そう言ってモローは走りながら藤林と残月と天弓を担いで逃げている朝比奈を追った。

「クソッ、これじゃマトモに戦えない。せっかく人間の討伐軍が万全になる前に奇襲したというのに!リリアー!」

 青年は天に向かって大声で叫んだ。

「はーい、アルブ様、ここはリリアにお任せください」

 天から背中にコウモリの羽が生えたサキュバスが舞い降りてきた。

「こいつらの始末はお前にまかせた。私は帰って強酸の悪魔の沼で体を洗って、この粘着液を溶かしてくる」

「お任せ下さい、人間などこのリリアだけで十分ですわ」

「念のためにアザゲルもつける。アザゲルー!」

 アルブが叫ぶと遠くから一匹の山羊が走ってきた。山羊はアルブの前で立ち上がり二足歩行になった。

「どないしましてん、アルブ様ともあろうお方が」

「子細はあとで話す。ここに残ったクズどもはリリアだけでも簡単に皆殺しにできるが、獅子は子ウサギを狩るにも全力を尽くすという。見せしめのためにチリになるまで粉々の肉片になるまで叩きのめしてやれ!」

「はい、かしこまりましたで、このアザゲルにまかしときなはれ」

 そう言うと山羊は山羊の角の生えた人間の姿に変化する。

「アザゲル!」

 マサキが叫ぶ。

 アザゲルは眉をひそめる。

「アホかお前、ワシは知恵の魔人アザゲルやど、そんな手にひっかかると思てんのかボケが」

「では任したぞ、お前ら」

 アルブの背中からコウモリの羽が生え、そのまま飛び立っていった。

「ははーっ」

 リリアとアザゲルはアルブに深々と頭をさげる。

 リリアはユリウスの方を見る。

「あらあ、あのときの坊やじゃない。これからじっくりと夢の中で犯して、淫乱狂いにしてやろうと思ってたのに、惜しいわあ。貴方だけ手足をちぎって私専用の家畜奴隷にしてあげようかしらん」

「アホぬかせ、こいつらは肉の一片も残さず粉々に粉砕せよとのアルブ様のご命令やど」

「わかってるわよ、ヤギ公」

「ヤギ公言うな、のアバズレビッチが!」

 悪魔どもが言い争っているところにカルビンが割って入る。

「ふんがー!」

 カルビンがリリアを殴りつけるが、リリアはふわっと霧になってカルビンの拳をすりぬける。

「バカじゃない、この娘。夢魔に物理が効くわけないじゃない」

 リリアがあざけり笑う。

「ふんがー!ふんがー!」

 それでも必死にカルビンは殴り続ける。

「うっとおしいんじゃ!」

 アザゲルがカルビンの腹部に手をかざす。

ドウン!と鈍い音がしてカルビンが吹っ飛ぶ。

「ふ……ふんがあっ」

 カルビンは立ち上がるが足がよろけている。あきらかにダメージを受けている。

「カルビンに何をしたっ!」

 ユリウスが叫ぶ。

「さあ、何やろなあ」

 上から目線でアザゲルがつぶやく。

「チッ、天狗の隠れミノ!」

 マサキが胸の谷間からワラのミノを取り出すと隣にいたサエの頭からかぶせた。するとクマのヌイグルミをかかえたサエの姿が透明になって消えた。

「そこを動くんじゃないよ、それから何があっても絶対しゃべっちゃだめだよ。私達が殺されても絶対しゃべっちゃだめ!」

「うん」

「蕩魔杵!」

 マサキは大声で叫んで胸の谷間から巨大なハンマーを取り出す。

「くらえーっ!」

 アザゲルの頭上にその巨大なハンマーを振り下ろす。 

 アザゲルはそれを片手で受け止める。

「なんや、こんなもの、効くかいな」

「ば、ばかな、蕩魔杵が効かないだと!」

 と、その瞬間、アザゼルはマサキのすぐソバまで来て腹に手をかざす。

ドウン!と鈍い音がしてマサキはふっとばされる。

「うううっ……」

 マサキはうなったまま立ち上がれない。

「よくもマサキをっ!」

 ユリウスはアザゲルに突進する。

 アザゲルはユリウスの胸に手をかざす。

ドウン!

 鈍い音がして、ユリウスの体が揺れる。

「バ、バカな、ボクはどんな物理攻撃も効かないはず……」

 ユリウスはその場に倒れた。

「アホか、誰が物理じゃ、ごっつい気いを打ち込んだったんじゃ、魔人をなめんなよ、この底辺のクソ精霊が!」

 アザゲルはユリウスを蹴り飛ばす。

「げほっ!」

 ユリウスはうめく。

「はーっ、ほんま手応えないなあ、他にだれもおらんのかいな、こんなもん、殺す価値もないゴミどもやわ」

 アザゲルが呆れてため息をつく。

「ふ、ふんがあっ……」

 よろよろとよろめきながらカルビンがアザゲルに近づく。アザゲルは自分からカルビンに近づき、カルビンを蹴り飛ばす。カルビンは吹っ飛び、ゴロゴロと転がって、そこで気絶した。

「他に誰もおらへんのかいなあ、だれか~、なんかもう一匹居たように思うんやけどなあ~」

 アザゲルが周囲を見回す。

「そこに居るみたいよ」

 リリアが前に進む。リリアが進む前の空中に小さなクマの耳のようなものが浮いている。

「何かしらこれ」

 リリアがつまみあげると、その空中からクマのヌイグルミが出てくる。

「あ、だめ!私の友達返して!」

 サヤが天狗の隠れミノをはねのけて出てくる。

「まあ、こんなクソ虫がまだ隠れていたのね」

「サヤちゃんに手出ししたらボクがゆるさないぞ!」

 サヤは涙ぐんで体をガタガタと震わせながらもクマのヌイグルミの口マネをした。

「あら、このクマさんがあなたを守ってくれるの?やってみなさいよ、さあ、さあ!」

 リリアはサヤに詰め寄る。

「バッカじゃないの、くだらないゴッコあそび、そんなもん、どこにも無いのよ、現実をみなさい、あなたは、無力で何の役にも立たない人間なの。それが自分でも分かってて現実逃避してるだけなの。分かる?あんたは、仲間がやられてるのに、こそこそ隠れて自分だけ生き残ろうとしたのよ、分かってる?このクズ!なんとか言ってみなさいよ、人にたかることしかできない寄生虫!」

サヤは体をガタガタと震わせ、目からボロボロと涙をながした。

「そんなことないやい!サヤちゃんは良い子だい!」

 サヤはクマの口マネをして必死に抵抗する。

「あら、じゃあやってみなさいよ」

 そう言うとリリアはクマのヌイグルミを地面に叩き付ける。

「さあ!さあ!」

 リリアは何度もクマのヌイグルミを踏みつけ、クマのヌイグルミはボロボロになる。

「やめて!クマちゃんをいじめないで!私は殺してもいいから、クマちゃんは助けて!」

「そう」

 リリアはにんまりと笑った。

「じゃあ、あなたは殺さないわ。このクマのヌイグルミをジワジワとちぎって粉々にムシって、そのあと、あなたは魔物たちの慰み者にしてあげる。一生、死ぬまでいたぶられ、犯され、狂ってしになさい、あはははは!」

 リリアはボロボロになったクマのヌイグルミを拾い上げ、ゆっくりと首をちぎる。

「やめてええええええー!」

 サエは叫ぶ。

 ミシミシと音がする。

 ブチッ!

 クマのヌイグルミの首がちぎれて綿がとびちる。

「ぷはーっ!びっくりしたなあ、もう!」

 ちぎれたクマのヌイグルミの首の中から頭に二つシニオンをつけた東洋人の子供の顔が飛び出してきた。

「鬱クラッシャーニケタン、ただいま参上!生駒山上遊園地!」

 その東洋人の子供は意味不明な事を口走った。

「ワシにまかしとけや!」

 アザゲルはリリアが持っているクマのヌイグルミの処まで走ってきてその後頭部に手を当てる。

「ハッ!」

「は?」

 女の子が振り返る。

「オッサン、冗談は顔だけにしとけや」

「ななな、なにいいっ!」

 アザゲルが後ずさる。

「ば、化け物っ!」

 リリアはクマのヌイグルミを地面に投げつける。

ブベッ!

 クマは変な声をあげる。

「何すんのじゃ、この中古の腐れビッチが!耳から指つっこんで奥歯ガタガタいわしたろか!」

 クマが怒鳴った。

「こ、このおっ!死ネッ!」

 リリアがクマを踏みつける。

「は?」

クマは平気な顔をしている。

「何なんじゃ、こいつ!」

「ほんじゃ、反撃いくよー!」

クマはアザゲルのところまでトコトコと歩いていく。

「ひ、ひいっ!」

 ペチッ!

クマがアザゲルにパンチするが、何も怒らない。

「あれ?なんや、全然弱いやんけ、驚かせやがって!」

 アザゲルがクマを蹴り飛ばす。

「ぎゃっ!」と声をあげてクマはゴロゴロと転がる。

「ほんじゃ、このメスガキと一緒に殺したろかあ」

 余裕の表情でアザゲルはクマに迫る。

「プンスカ、もう怒ったどー!」

 クマは叫ぶとサエの処まで行ってその背中によじ登り、ピトッっとくっつく。するとサエの体がワナワナと震え出す。

「うおおおおおおおおおおーああああああーがああああああー!」

 サエが大声で叫ぶ。

「クソがあああー!」

 アザゲルがサエの処まで行って頭に手をかざす。

ドウン!

 鈍い音がしてアザゲルは吹っ飛ばされる。

「何なのよ、こいつ!」

 リリアがサエに走り寄って顔を殴るがサエはびくともしない。

「うおおおー!」

 サエはリリアを殴る。しかし、リリアの体は霧になってサエの体をすり抜ける。

「バカね、私には物理は効かないわ!死になさい!」

 リリアはキチ子の死体の近くに落ちていた、天弓の弓を拾い上げ、サエに突進してその脳天から天弓の矢を突き立てる。

 ガリッと音がする。

 しかし、矢はサエの頭を傷つけることすらできない。

「なにっ!魔法処理した対魔用矢尻が貫通しないだと!」

 「や、やばい、リリア姉さん、そいつ、ベルセルクや、そのクマ、怒りの神ヒューリーや、逃げて!姉さん!」

 アザゲルが叫ぶ。

「大丈夫よ、私には物理は効かないから!」

 その時である。

「京橋は、ええとこだっせ!恋いのはーあなもさきまっせー!」

 サエの背中にひっついたクマが両手をバタバタさせて不思議な踊りを踊りながら意味不明の歌をうたいだした。

「な、何なのよ!」

 リリアは唖然とする。

「トーレトレ、ピーチピチ、メスビッチー!」

 煽るようにクマが歌う。

「なんですって!」

 リリアが拳を振り上げ、サエに迫る。

「うがあああああー!」

 サエは叫びながらリリアの腹に腕を突っ込んで内蔵をひきずりだす。

「グベッ、な、なんで……」

「姉さん、エナジートレインや!物理攻撃無効が使えんようになるまで姉さんのレベルを下げたんや!姉さん逃げてっ!」

「ぐぐっ……げほっ!助けて……」

 リリアがうめく。

「姉さんごめん、うわああああー」

 アザゲルは泣きながらにげていった。

 リリアはその場に崩れ落ちると、クマはサエの背中から離れる。サエは放心状態でその場に崩れおちた。

「くっ……早く殺せ……」

 リリアは頭から下がクマのヌイグルミの女の子を睨んだ。

「はあ?冗談は吉田のよし子さんやで、こんだけの事やっといてただですむと思っとんのんけー?」

 クマは煽るように首を斜めに傾けてリリアの顔をのぞき込んだ。

 クマはそこに落ちている天弓の矢をひろいあげた。

「ぴゃーっ!」

 叫びながらクマはその矢を石壁にこすりつけながら走り回る。猛スピードで走ったので、矢ジリが摩擦熱で真っ赤に焼ける。

「ぴゃあっ!」

 叫びながらクマはその真っ赤に焼けた矢尻をリリアのケツに突っ込む。

「ぐはっ!殺せっ!殺せええっ!」

クマは矢ジリを引き抜いてまた壁にこすりつけて真っ赤になるまで走りつづける。

そして、耳、目、鼻とあらゆる穴に矢ジリをつっこんでリリアをなぶり殺した。


犠牲は大きかった。

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