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奴は魔界四天王の中でも最弱  作者: 公心健詞
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お祖父ちゃんを殺したのは誰だ!

森の化け物の正体はカルビンであった。

ユリウスを探して人里まで降りてきていたのだ。

「マサキ!」

 ユリウスは思わずマサキの前に飛び出して化け物に向かって両手のひらを向けた。

「アクアトルネード!」

 本能的に叫んでいた。

 両手のひらから猛烈な勢いの水の竜巻が噴射して化け物の体を覆っていた緑色のコケの表皮をすべてこそぎおとした。そして……目の前に立っていたのは、ユリウスの家のメイド、カルビンだった。

「ふ……ふ……ふんがあああああああー」

 カルビンは泣きながらユリウスに抱きついてきた。

「お前だったのか」

 ユリウスはカルビンを優しくだきしめた。すると柔らかい胸がユリウスの服の上から押し当てられ

カルビンの乳首の感触がはっきりと感じられた。ユリウスの体はカーッと熱くなったが、必死に平静をよそおた。

「そ、それにしても何でこんな魔法が使えるようになったのかな、今まで使えなかったのに」

「それは制約結界だよ」

 マサキが答えた。

「制約結界?」

「ああ、自分の行動に制約をかけることによって魔法や魔力が強くなる。この他には一度に戦うパーティーの人数を制約することによって強い魔力を手に入れる方法などがある。一人が一番強いが、それじゃ、回復役がいないからな。次の枠組みが五人。その次が五〇人まで、だから、通常パーティーは五人縛りで編成する。一旦五人縛りで制約をかけると五人以上のパーティーでは戦えない。もし編成を解くと、それまで蓄積した経験値が消失する」

「ボクは何も制約してないけど?」

「私の下僕になるって制約したじゃないか。あれはけっこうキツイ制約だぞ」

「それでこんな力を手に入れたんだ」

 ユリウスはまじまじと自分の両手のひらを見た。

「それより、こいつ、何だよ」

 マサキはカルビンを指さす。

「あ、この子はカルビンっていうんだ。うちのメイド。たぶんボクを探してここまで来てくれたんだ」

「ふんがぁ♪」

 カルビンは笑顔で答えた。

「うわっ、しゃべれねえ制約結界か、すげえドギツい制約ぶち込んでるな。これ作った奴すげえわ」

 マサキは呆れたように言った。

「そりゃそうさ」それはボクの誇りであるおじいちゃんが作ったんだから。ユリウスはあえてその言葉を口から発しなかった。

「とにかく、こいつが人間のパーティー57人も殺したことは人間の村では口が裂けても言うなよ」

「うん、わかった」

 ユリウスは頷いた。


 街のギルドに帰ったユリウスは賞金を受け取り、まず汚れてボロボロになったカルビンの服を新しいメイド服に買い換え、その後に孤児院に行った。

 孤児院では里親制度ということで子供を現金で売り渡すこともあったが、金髪青目の子供達の場合は、役所の調査員が相手の家庭の状況や近所の噂を徹底的に調べるが、黒髪で黄色い肌の子供の場合、その場で金を払えばすぐに引き渡された。

「君、名前は何て言うんだい?」

 ユリウスはしゃがんで目線を幼女のところまで持っていってたずねた。

「サカガウィア」

幼女は答えた。

「さが?え」

 聞いたことのない特殊な名前だったのでユリウスは口ごもる。

「サエでいいですよ、みんなそう呼んでたし」

 サエはそう言うと手に持っていたクマのヌイグルミの方を見た。

「やったねサエちゃん、新しい家族が出来たよ!」

 サエはクマに向かって叫んだ。

「うん、クマたん、よかったね」

 サエは自分一人で会話している。いままでこうして孤独を紛らわせてきたのだろう。

「サエちゃん良かったわね、新しい家族ができて」

一人の金髪で青い目の保母さんがサエに声をかけた。

「あ、エミリー先生ありがとう。先生の焼いたクッキーおいしかったよ、最後に食べたかったな」

「ごめんなさい、今は無いの。またクッキー焼いた時にもっていってあげるね」

「うん!それじゃ、ばいばーい!」

「はい、ばいばい」

 エミリー先生は笑顔で手を振りながらサエを見送った。


 ユリウスはマサキ、カルビン、サエと一緒にロダム公の王城の公募会場に向かった。

 マサキはユリウスの服に勲章を二つつけた。そして自分はその下僕を装った。

 会場に到着すると、まず下級の職員が勲章の有無を確認する。今回は中年のやる気のなさそうな職員だった。

「はい次、あ?勲章ない?そんなの論外だね、帰った、帰った!」

 かなり態度が横柄だ。

 ユリウスの番がまわってくる。

「はい、次。どうせお前も勲章もってないんだろ?帰った帰った」

「いいえ、持っています」

「持ってるったって、皆勤賞とか、地方大会の準優勝じゃだめだぞ、ちゃんと戦場でとったもんじゃないとな。お前みたいなガキがそんなもん、もってるわけないだ……おあっっ!」

 職員が驚いて飛び退いた。

「こ、これは四天王討伐勲章!失礼いたしました!シードコースに起こしください。上級勲章をお持ちの方にはシード権があたえられます!」

 職員の態度が急に恭しくなる。それより、ユリウスは職員の言葉に戦慄した。四天王討伐勲章!怒りに体がワナワナと震えた。マサキはまさにユリウスの大切なお祖父ちゃんを殺したのだ。いままでマサキに持っていた淡い好感はすべて吹き飛んだ。

殺してやると心の中でつぶやいた。しかし、ここで気づかれてはならない。今は従属の身だ。幸い、カルビンが来てくれた。自分では殺せなくても、カルビンにマサキを殺すよう命令すればいいのだ。しかし、もし自分の命令でマサキを殺させたら、制約の制限はどうなるのだろうか。制約破りの罰でユリウスの命を奪われることはないのだろうか。そこいらへんの情報が必要だ。

 カエサルは怒りに震える心を抑え、必死に平静を装った。

「おい」

 マサキが声をかける。カエサルはビクッととびあがる。

「な、なんだい」

「お前震えてるぞ、怖いのか?」

「まさか、武者震いだよ」

「そうか、それならいい」

 カエサルたちは職員に案内され、シード権を保有する者が集められる特別会場に向かった。



マサキは四天王討伐勲章をもっていた。これは、とりもなおさずユリウスの祖父を討った者だけが

あたえられる勲章であった。

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