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現世で運を使い果たしたらしいです

時間がある時しか書けない作品になると思いますが、楽しい作品にしたいと思いますので宜しくですにゃ

「今度、今度こそ。あ~まただめなのです。確立悪すぎです」


 ワンクリックするたびに五百円を費やし続け、今回もあと2回で一万円の大台に。月に二、三万しかない、お小遣いの全てをリアルの自分の服ではなく、アバターへと注ぎこんで、初めは魔力をあげる為に杖、次は死なない為に服、次は知力上げのティアラと、レア装備を当てる為ひたすら続けてきた。全身のレア装備にゲーム内でのついたあだ名が癒しの課金女王。回復職のキャラをやりこみつつ、さりとて常にログインしている様な上位陣には、仕事しながらの私は素のキャラだけではついて行けず、それが元で差を少しでも埋める為、始めた課金装備なのだったが、その中の一つ熾天使装備シリーズという物があり、あまりの可愛さに、


「絶対にコンプしてみせるのです」


 一人そう意気込んで始めたのが、もう五年も前。確かに腕も上がり装備も揃ってきたのですが、最後の最後が手に入らない。それもそのはず今まで手に入れた全身装備を足して十倍位難しい程の低確率でしか当たらない様なレア中のレア。公式が発表して運営が見せた事はあってもサーバーに装備している者がいないという、伝説の装備なのでした。しかし、それでもそれを上回る恩恵に狙っている者は多く、ゲーム内には嘆きの声が散漫していたりするのですが、それでも私は頑張っていたのです。


「もう一回です、ぽちっと」


 画面に向かい囁きながらクリックすると、長く続けてきたゲームなのに、初めて見る様な輝きが放たれると、目の前の表示には輝く六枚の羽根を模した背中装備が。思わず、


「き、き、きたのです、伝説なのです」


 部屋の中で大声でそう叫んでしまうのだった。そして、その装備を自分のアイテムボックスに受け取り、装備欄にドロップし、装備した瞬間、


「あ、あれ」


 めまいと共に、意識がドロップアウト。薄れゆく意識の中、私のキャラが全ての装備を付け微笑んでいるのを見ながら、闇に沈んでいくのでした。



 目覚めるとそこは真っ白の空間。どこまで見渡しても遮るものもない代わりに、全体の広さすらわからない様な広大な、そんな空間でした。


「どこなのでしょう、此処は」


 何時もの如く独り言をつぶやくと、突然、


「狭間の世界と言われている所じゃよ。天野美織さん」


 威厳のありそうな風貌の老人が現れた、としか表現できない様な形で目の前に立ち、そう告げてきたので、唖然としつつも、なぜか素直に、


「あの~、おじいちゃん。ここは何処なのでしょう?」


 真面目な口調で、普通の人に接するときの言葉遣いで丁寧に訊ねると、申し訳なさそうに、


「うむ、何から説明したらよいか。まずはお主だが、あの世界では死んでしまったぞ。医者ならばショック死、と名付けるとこなのだろうが、まあ、事実は生きていく上での運を全て使い果たした為、というのが真実かの。心当たりはあるであろうが」


 私の方を見つつ、そう呟いてきた。で、倒れる前の事を思い出しつつ、一つしか思い浮かばない心当たりに、


「あ、あの羽なの?」


 老人へとそう訊ねると、頭を下げつつ、


「すまんかったの、全部儂らのせいなのじゃ。本当に申し訳ないの」


 私へと謝罪し続けるのだった。なので、


「どういうこと? おじいちゃん」


 理由が判らない事には、話が進まないので、訊ねてみると、こういう事だったのです。



 神々たちが別の次元で創っている世界があって、その世界の方針を決める為のテストの場所が、あのゲームらしいのです。この世界の人には内緒で世界においても問題が出ないアイテムや道具、装備などの影響を調べていたらしく、出すべきか迷う程の物をレアとして、このゲームの維持に必要な人の持つ運というのと交換に出していたそうなのですが、目玉商品として運を使って貰う為に当たるはずもない、という設定にしておいた物を、運がいいのか悪いのか、私が引いてしまったみたいなのです。当然設定されていた量の運をシステムより引きずり出され、生きていくのに必要な最低限の運すら無くなり、今に至る、と、なのでおじいちゃんに、


「事情は判ったけど、私はどうなるの? もしかして消滅とか?」


 ゲームしてて消滅させられました。なんて冗談みたいなことで死にたくはないので聞いてみると、困った様な顔をしつつ、


「美織さんや、あのゲームは好きかの?」


 私にそう聞いてこられたので、


「はい、好きですよ。伊達に五年以上も続けてません。他の人に合わせる為に始めたはずの課金装備も、いつの間にか、お気に入りになっていますし、知り合った皆に鍛えてもらいLvも上がりましたし、スキルもコンプしたんですよ。第一に世界観がいいですね。現実ではあり得ない、俺が盾になるから、皆先に、とか、二人はいつまでも一緒だ、とか、掛け算ネタの溢れる世界はそうそう・・・・」


 熱く語りだそうとすると、


「良く判ったからちょっと聞いてくれんか。先程も説明したように儂らが作った世界はそのゲームが現実になった世界だ。まあ、ゲームにしかない設定は現実である向こうにはないがの。しかし、死なせてしまった詫びとして、全ての神々と協力して、お主には向こう世界のゲーム内で出来たキャラ、そのままをお主として生活できるようにし、送る事にした。なので、それで許してもらえんかの?」


 低姿勢でそう聞いてきたので、


「えと、いくつか聞いてもいいですか?」


 私がそう言うと、真剣な顔で、


「うむ、構わぬが、答えられんことも、出来ない事もあるかもしれん。それでもよいのなら」


 おじいちゃんは、そう言ってきたので、


「えと、まずはこれが大元、元の世界には戻れる?」


 疑問を口にしてみると、悲しそうな顔で、


「それがの、向こうの世界のお主の身体はすでに灰になっておる。なので、無理なのじゃ」


 私へとそう言ってくる。なので、次は、


「じゃあ、私が五年以上かけて育て上げたキャラだけど見掛けも、装備もスキルも全部持って行けるの? 最後に当てたあの羽も?」


 まだ装備したのを動かしていない私としては純粋に動かしてみたくもあったので、そう訊ねると、


「それに関しては、約束通り問題なく可能じゃ」

「職業もだよ? メインの回復職の上位とサブ職業のシーフや召喚士なんかも出来るの?」

「うむ、問題ない。お主は唯一システム画面なるものを使えるようになるので、そこで今まで通り切り替えれば使える様にしよう」

「じゃあ、最後に、毎月のお小遣いで楽しみに引いていた、死因でもあるクジ、あれはなくなるの?」


 悲しく思い、そう訊ねると、


「うむ~、そうじゃの。向こうの世界のダンジョンに、宝箱として出しているようなアイテムやレアな御供を出してやれんこともないが、ちょっと待っておれ」


 こちらに向け、そう言った後、後ろを向き、誰かとぼそぼそと話しているようだったが、暫くして、


「うむ、皆と話した結果、システム画面より引けることにする。但し、魔物の討伐数で引けるようにするのでな。それもちゃんと成長できる位の相手しかカウントされぬようになっておるので雑魚を倒し続けても、クジは引けんぞ」


 私にそう言ってきたので、


「じゃあ、サブ職業増やせますか? 今の回復職なんかもう余程のとこじゃないとあがりませんよ」


 おじいちゃんに、そう言うと、


「ではそれもシステム画面よりおこなえるようにしておこう」


 すぐにそう答えてきたので、そこまでしてもらえるならいいかな。そう考えて、


「そこまでして頂けるなら、行ってみたいです」


 私のその言葉に、やっと安堵の息をしつつ、


「では、送るのでな。元気にがんばるのじゃぞ」


 突然足元が光り出したと思ったら、その光に包まれつつ、またも意識が途切れていくのでした。

読んでくれると嬉しいですのにゃ^-^ノ

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