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誕生日

「そういえばよぉ。ラ族も俺らとそんなに変わらないんだな。パッと見ると人間に間違えそうだぜ」


 魚料理をムシャムシャ食べながら、ゴランはそんなことを言ってきた。


「確かにそうだな。俺も初めて人間と会うが、あまりにも人間と容姿が似ているからビックリしたぞ」


 焼いた魚の味を確認せず飲み込むように食べていた俺は適当に返すが、


「あれ? ラオさん、さっき上で『人間共と一緒にするな!』って言ってませんでした? なんだか人間のことを知っているように思ったのですが……」



 ギクッ。



 隣に座るミウの鋭いツッコミに、俺の手が止まった。

 こいつ、のほほーんとした天然野郎だがたまに鋭くなるよな。

 

「う、うむ。それはだな……。いきなり人間だと言われたからビックリしたのだ。気を失っていたのもあるが、頭が混乱していたのかもしれぬ」


「そうですか! 汗までかいてかなり驚かれている様子でしたからね。それは当然のことだと思います」


「そ、そうだな」


 ふぅ。危ない危ない。

 

 ミウも納得してくれたしなんとか誤魔化せたようだ。ってか、いつまでも危ない状況が続くとさすがに参るな。

 

 腹もそれなりに膨れたことだ。あとは情報収集して、こいつらを消してとっととおさらばしよう。


 ちなみにだが、俺が人間共と間違えられるのは当然のことだ。


 魔族には人間と同じような容姿をする者もいれば、頭に角が生えて羽やシッポがあり、人間とかけ離れた容姿をしている者もいる。


 魔族といえば後者のイメージが強いし圧倒的に数が多いが、前者のような者も少なからずいる。ということだ。

 

 ちなみに俺は前者である。

 

 人間共と同じような容姿をしているのは気にくわんが、無理に尻尾や羽を生やしたいと思ったことはない。


 ……百を過ぎてからの話しだが。

 それまでには結構本気で考えてたな。今思うと。


「そういえばミウ、今日は儀式があるがもう準備はできているのか?」


 食事も終わり、水を一杯飲んだゴランは急に思い出したかのように、ミウに尋ねた。


「うん! 鎧もちゃんと研いて綺麗にしました!!」


 そう言って自信満々にミウは指差す。

 

 見ると部屋の隅に置かれた鎧がそこにあったんだが、いかにも弱そうな鎧で俺は唖然とした。

 

 ……あれが鎧だと!? まるでぺライムの皮で作ったような物ではないか!?

 

 あれだとこの俺が手を出せば指一本で壊すことができるぞ。しかもよく見れば糸が張ってるし、絶対そこまで研いてないなこいつ。


「でもラオさんが着ている鎧と比べたらなんか私の鎧の方が弱く感じます……」


 ミウは俺が着ている鎧を羨ましそうに指をくわえながら見る。


  当たり前だ。この鎧は百に一度しか姿を現さないセンゴドラゴンの鱗を使った超頑丈な鎧だ。

 

 お前のような鎧とは格が違うのだよ!


「いや、俺の鎧だがな。実はそこまで強くないのだ。ミウの方よっぽど良い物だと思うぞ?」


 ……うん。ここで本当のことを言って見せ物にされた大変だ。

 

 センゴドラゴンなんて人間にとってはもはや伝説的な存在だ。それの鱗を使った鎧を持っているだけで怪しまれるかもしれぬ。

 

 だからここは適当に嘘でも言っておくとしよう(最後に自慢してやる)。


「そうですよね! ラオさんは裸で生活しているから頑丈な鎧を持ったところで宝の持ち腐れですよね」


「うむ。まさにそとおりである」


 好き放題を言いやがってこの女が……。


「ミウよ。そういえばさっき儀式と言っておったが、何の儀式なんだ?」


 これ以上、鎧の話をされたらさすがに我慢の限界がきそうなので、話題を変えることにした。


 儀式と聞いて少し気になっていたからな。


「実は言うと……その……」


 何故か急にもじもじするミウ。


「はははっ! 実は言うとな、今日はミウの二十の誕生日なんだ!」


 もじもじしてなかなか口に出さないミウの代わりに、ゴランが笑いながらそう言った。

  

「は、はいぃ。そして私は今日から一人前の戦士として明日から旅に出るのです!」


 ……な、なんだって?

 言っていることが全く理解できていない俺を見てか、


「この村ではな。二十になったら一人前の戦士として認められ、儀式が終われば旅に出ることができるんだ。まぁ旅に出ない者もいるが、ほとんどが旅に出る者ばかりだ」


 ゴランが村のしきたりまで説してくれた。

 いや、そんなことよりちょっと待て。


 たった二十年で一人前に認められるとはどういうことだよ!! 少し甘すぎるぞ人間よ!

 

 それにどう見たってミウが一人前の戦士に見えるか!? もしあのボロい鎧で旅になんか出てみろ。魔族に遭遇したらそれこそぺライムのように真っ二つにされるのがオチだ。



「ゴランよ。心配ではないのか? 娘が危険な所に一人で行くのだぞ?」



 ミウが何されようが知ったことではないが、親はどう思っているのか一応、訊いてみた。

 

 これも人間という弱い生き物を知るためだ。


「そりゃあ心配だ。初めて旅に出ると言われた時は夜も眠れなかったもんだ……」


「……お父さん」


 ミウが寂しそうに呟いた。


「だが、二十にもなればミウも立派な大人だ。この先の人生、ミウがどう生きるかはミウが決めたらいい。親である俺は、ミウのこれからの人生を黙って見届けるしかできねえんだ。だから行ってこい、そして外の世界を思う存分に楽しんでこい」


 ゴランの優しい口調に、気がつけばミウはぼろぼろと涙を溢していた。


 おそらく、面と向かって父親の本心を聞いたのは初めてだったのだろう。

 

 堪えきれない涙と共にミウはガタッとその場で立ち上がり、


「お、お父さん……。ありがとう……。ミウは今まで育ててくれたお父さんが大好きでした。離れてもそれは一生、変わりません……」


 ペコリと頭を下げながらそう言った。


 ゴランはどう反応していいか分からないのか、頭をポリポリ掻きながら恥ずかしそうにヘヘヘと笑った。


 なるほど。

 これが人間の親子か。

 

 だがな、ミウよ。口には出さないが、外の世界はお前が想像しているよりも過酷で非情な世界だ。


 ただでさえ人間と魔族が争っている最中だ。それに巻き込まれて命を落とす危険性だってある。

 

 そしてなによりも、お前はもうすぐ俺の手で消されることになる……。


 こんな小さな女を一人前と認めるぐらいだ。この村も大したことなさそうだしな。

 

 ……あとは俺の身体が回復すれば、この村は終わりだ。

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