~玉座の間にて~
この話では場面が変わり三人称視点です。
主人公の意識が途絶えた後のジリトとリサーザの会話です。
──玉座の間。
「ジリト様。ただいま戻りました……」
扉を開け、リサーザは玉座に座るジリトの前で身を低くし、自らの帰還の報を告げた。
「……ギルトはここからかなり離れた所に捨て置きました」
「そうか。ご苦労だった」
「しかし解せません……。なぜあの時ギルトを助けたのです? 奴をあのまま放っておけば確実に息の根を止められたはずです」
リサーザの問いにジリトは天井を見上げ、弟のギルトが炎に包まれて悶絶している姿を思い出す。
「二百年……」
そしてぽつりと呟く。
「……二百年という永い間、兄弟として、同じ魔族として共に生きてきたのだ。情が生まれたのかもしれぬ」
ジリトは最後の最後で情が生まれてしまった己の未熟さを嘲笑うかのように、フフッと微笑んだ。
「……情ですか。私には理解し難いことです」
「よい。だが、もし次に奴と会って情が生まれてしまったときは、その時はお前の手で奴を消してくれ……」
「御意に。して、奴を他の者が見つけたときはいかがされますか? 生け捕りにされますか?」
「いや、見つけ次第すぐに消せ」
「御意に。他の者にもそう告げます……。今からでも奴の居場所に部下を派遣させますか?」
「いや、ギルトには一日だけ猶予をやろう……」
「……情、ですか?」
「フフッ。これは単なる気まぐれだよ」
そう言うとジリトは立ち上がり、土台に置いてある魔王のバースデーケーキに手を伸ばし、それを掴んだ。
「我らの計画も、ジリト様が魔王のバースデーケーキを食し、魔王として君臨するのを残すのみであります」
「そうだな……。我が永年の夢……これにて全てが終わる」
「……はい。後は魔王様の……思うがままに」