真相
「そんな馬鹿な……。なぜリサーザがそれを持っている!?」
「お前が魔王のバースデーケーキを食す瞬間、リサーザが別の物とすり替えた。お前は何の力もないただの偽物を食べたのだよギルト」
「兄さんは……それを知っていたのですか?」
俺の問いに、兄さんは心の底から沸き上がる感情を抑えきれないかのように大きく笑う。
その姿はまるで別人ようだった。
なぜ? なんでこんなことをしたのか俺には全然理解ができなかった。
兄さんは俺が魔王になることに対して反対などしなかったはずなのに、どうして……。
「ギルトよ。俺はお前が魔王に選ばれたとき、お前を心の底から殺したいと思った……。 俺より少し魔力が優れているだけの理由で……お前は……お前は!!」
狂気に満ちた表情で兄さんはためらいもなく剣を降り下ろし、俺はすかさず剣で受け止めるが、
「燃え尽きろ!」
片手を放したかと思うと、俺が着ている鎧に手を当てて魔術を使い、俺の身体は炎に包まれる。
「ぐわああぁぁぁああああっ!!」
火だるまになった俺、熱いなんてもんじゃない。兄さんは炎の魔術の中でも上級にあたる魔術を使ったのだ。
頭が混乱していたせいで魔術を防ぐ防御術を使い忘れていた。これでは裸のまま火を着けられたのと変わらない。
たまらず地面をゴロゴロと転げ回る俺、こんなことをして炎が消える訳ではないが、熱くて熱くてもはや立っていられないのだ。
薄れゆく意識の中で、今にも眼球が飛び出しそうな目で兄さんを見る──。
「リサーザ。火を消せ……」
「なぜです!? こいつをここで消す予定では!?」
「いいから早くしろ!!」
リサーザは渋々頷くと、掌に水の球体を生み出す。
その球体に向かって炎が吸収された所を見て、俺の意識は途絶えたのだった。