パフェ。
後半ちょっとシリアス。
パフェ〜♪
うまうま♪
「ルナって本当に美味しそうに食べるよね……」
「美味しそうに、じゃなくて美味しいんだよ」
うん、このプレミアムストロベリーパフェっての、すっごく美味しい。
元々甘党でパフェとかは好きだったけど、男だったから見栄張ってあんまり頼まなかったんだよね。この体になって良かった……!
今、心の底から痛感してる。
というか、女になったデメリットってほとんどないんだよね、実際。
戸籍関係 → 謎の犯人さんのおかげで問題なし。
トイレとか月の物とか諸々の女の子事情 → 吸血鬼だから必要なし。
交友関係 → ……もともと一馬くらいしか友達いないもん……。
……ほかに何かある?
むしろ、甘いものを堂々と食べれるし体型変わらないしで良いことづくめ。うはうは。
「そんな風に食べてもらえると、僕としても嬉しいね」
「あ、柏さん」
突然、ほんわかとした雰囲気の、大学生くらいの男性が話しかけてきた。長身で柔らかな髪を目元あたりまで伸ばしている。
「やあ、光さん。お友達かい」
「はい。ルナさんです。柏さんはここのパティシエで、そのパフェを作ったのはこの人なんだよ」
「そうなんだ。どうも、水無月ルナでーす。パフェ美味しいですね」
生クリームは甘いけどくどくないし、新鮮なイチゴは甘酸っぱくて程よいアクセントになっている。
本当に美味しくて、言葉じゃ伝えられないくらい。
ん〜、口下手な僕が恨めしい。
「そうか、ありがとう。でも、光さんはあんまり食べてくれないんだよね」
「う。体重が……」
「あはは、女の子だもんね。分かってるよ」
爽やかに笑う柏さん。
「美味しいもんね、つい食べ過ぎちゃうのは分かるよ」
本当に、いくらでも食べられちゃうからね。柏さんは女の敵だ。
「そうだ、光さん。ちょっと話があるんだけど」
「……私もです。ルナちゃん、席を外すね」
「りょーかい」
離れていった二人を見送り、一人パフェを頬張る。
はぁ〜、幸せ。
……食べ終わってしまった。
光たちはまだ帰ってこない。
「はっ、男と女が二人きり。これはもしや……っ!?」
ぼんやりとしているとその可能性に行き着き、一人衝撃を受ける。
「そうと決まれば……盗聴でしょ」
隣で猥談をしているカップルがいて、盗み聞かない者はいない!
……いない、よね?
ま、まあ、いなくてもいいや。
僕は聞くから。
聞くよ。聞いちゃうよ。
そ〜れ、スキル《聞き耳》発動っ♪
えーと、なになに〜?
『……それは、やっぱり……』
『推測するしかないけど、間違ってないと思う。やり口がそっくりだ』
『そうですか……』
『ずいぶんと、メンバーも減っちゃったね。僕が不甲斐ないばかりに……』
『そんなっ、柏さんのせいじゃ……』
『でも、僕がもっとちゃんとしてれば防げたこともある。……アゲハさんに報告しよう。もう、僕たちだけじゃどうしようもない』
『……分かりました』
『光さんも覚悟しておいて。これからは、厳しくなるよ』
『ええ、分かってます』
…………?
何の話だろう。少なくとも恋人同士って雰囲気じゃないね。
『……ああ、これも言っておいた方がいいかもね』
『何ですか?』
柏さんの声に真剣味が増す。
『きみの友人のことだよ。水無月ルナさんって言ったっけ。……彼女には気をつけた方がいい』
え?
『上手く隠しているようだけど……恐らく魔族だよ、彼女』
『……まさか』
え? えぇ?
何で光さんが、そんな話をしてるの?
いや、僕のことがバレてるのは別にいい。だってわざわざ隠したりしてないし。上手く隠してるってのがよく分からないくらい。というか、分かる人はその筋の相手っていう指標にもなるから絶賛利用中。
……まさか、光もこっちの存在ってこと?
でも、あの言い方だと、光たちからすれば魔族は敵なのかもしれない。
二人の会話は続く。
『まったく、魔術師を相手にするだけで精一杯だというのに……できればきみの友達とは敵対したくない。というか、今の状態じゃ無理だから、光さんは彼女をあまり刺激しないでほしい。それだけ伝えときたかったんだ』
『知らないうちに、ってことがないようにってことですね……分かりました』
魔術師……。
僕のまぶたの裏側に、写真部とPC部の部長さんたちの姿が浮かぶ。
まさか、ね……。
知り合い同士で争うなんて、嫌だよ。
ストックが尽きました……。
これからは不定期での更新になります。