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月光のルナ  作者: 月乃 綾
第1章 人と魔族と精霊と(改稿前)
6/15

魔術師。

 さて。

 僕は今、写真部とPC部の部長さんたちと向かい合って座っている。


「じゃ、話を始めよっか」

「ああ、分かった」

「うん」


 よしよし。中々厳粛な雰囲気が演出できたんじゃないかな。


「今日来てもらった理由だけど」

「分かってるさ」

「そう、なら問題ないね。つまりーー」



「「次に着てもらう衣装の話だろうっ!?」」



「違うよっ!」


 なんでそうなるのさっ!?


「「ち、違うのか……?」」

「この世の終わりみたいな顔しないっ!」


 せっかくシリアスに入れたと思ったのにぃ!


「こほん。話っていうのは、君たちが使ってた……




 隠蔽魔術のことだよ。




 心当たり……あるよね?」


 僕の言葉に、部長さん二人は息を呑む。

 ……これはアタリだね。


「何故それを?」

「ルナちゃん、きみは……」


「ちゃん付けするなっ」


「「あ、はい」」


 ……やってしまった。

 僕自ら、シリアスを壊してしまうとは……っ!?

 一生の不覚っ!


「あのルナさん?」

「大丈夫か?」

「……気にしないで……。なんで、って話だっけ。それは僕も魔術師・・・だからだよ」


 この二人は魔族じゃない。彼らの臭い・・は人間だ。吸血姫たる僕の鼻を誤魔化せる相手なんていないんだよ。

 部長さんたちの目的が分かるまでは、僕は人間ってことで通した方がいいって判断だ。


「……そうなのか。確か、ルナさんは海外に住んでいたんだよな」

「うん、そうだよ」

「魔術の流派は?」


「……それは、関係のあることかな?」


 言えるわけないでしょうが。僕の魔術は吸血姫としてのものなんだから。


 と思ったんだけど、二人は満足したように頷いて口を開いた。


「悪いな、試すようなことして。魔術師は己の術を明かさない。ルナさんは確かに、俺たちと同じ魔術師のようだ」

「気に障ったならごめんなさい。でも、すぐには信用できないって分かるよね?」


 ま、そうだよね。僕もきみたちを警戒して、魔術師って嘘を吐いたわけだから。

 だから、試したことは不問にしてあげる。


「まあ今回は、お仲間がこの学校にいるってことを確かめたかっただけだから、特に詮索もしない。……盗撮って立て前で、実際には何を警戒しているのか……とか、ね」


「「ッ!!」」


 あーあー。

 そんなに反応したら、僕の言うことが正しいって認めてるようなものだよ?

 実際には鎌かけただけなのにねー。


「それじゃ、またねー」


 これ以上いたら面倒なことになりそうだから、そろそろ退散~。

 一馬の血が飲みたいな~♪



 ◇◆◇◆◇



「……なあ、どう思う?」

「そうだね……。とりあえず、敵意は感じなかったけど」


 けど、何となくわかる。




 水無月ルナ……あれは、手を出してはいけない相手だ。




 魔力はほとんど感じなかった。

 敵意も殺意も、感じなかった。

 バスケをやっているところを見れば身体能力は確かに高いけど、それは一般人の……いや、人間の範疇にとどまる。ダンク決めれる女子を一般人とは言わん。


 なのに。


 なんだよ、あの悪寒は。



 ◇◆◇◆◇



「一馬、疲れたよ~」

「今回はなんだ?」

「なんかね、無駄にシリアスな会話をしてしまったんだよ」


 簡単に、部長さんたちと話した内容を一馬に伝えた。


「へえ、魔術師ね。盗撮が見つかんないのはそのせいか」


 納得顔の一馬。


「能力の無駄遣いだよねー」

「……いや、実際には何かを監視してるんだろ? なら普通じゃないか?」

「ううん、それは違うよ一馬」


 僕はゆっくりと首を振って一馬の言葉を否定する。


「あれは逆だね。上……からの命令か自主的か知らないけど、『何かの監視』を言い訳に盗撮してるんだよ」


「お、おう。そうなのか?」

「そうだよっ! じゃなかったら、あんなに本気になったりしない! あれは、本気マジの目だったよ……オタクって怖い……」


 ひしっ! と一馬に抱きついて泣き真似してみた。


「何やってんだ」

「酷い! か弱い女の子が怯えて涙してるのに、一馬はそれを突き放すんだ!」

「いや、か弱いって……ってかお前、自分のこと女って……」


 しまったっ!?


「いや一馬、今のは違うんだよ!? 僕は女じゃないし、いや確かに体は女だけど心は男っていうか、あれそれってお鍋ってやつ!? ああでも心まで女になってなんかないし、でもお鍋なんて不本意な称号欲しくない……うわーん!」

「お、落ち着けルナっ」

「ってことで血をちょーだい」


 ……あれ一馬さん、なんで僕の頭を掴んでるのかな。

 ってちょっと待って、イタイイタイっ!?


「さすがに調子に乗り過ぎじゃね? ルナぁ……」

「ごめんなさいやりすぎました」


 ドサクサに紛れて胸を押し付けてたのがバレたかな。感謝の気持ちのつもりだったけど……、

 なんか一馬が怖いよ……。

 即座に土下座。


「罪には罰を、だよな?」

「ちょ、一馬待って……本気、じゃないよね?」


 …………。

 あ、この感じ、久しぶり。


「無言で近づいてくるのは怖いよ……っ!?」


 一馬の中指が……目の前でゆっくりと折り畳まれる……っ!

 これは、伝説の……デコピンって奴か!?


 ……はい、ショボいとか言っちゃダメ。食らってみれば分かるけど、一馬のデコピンは本当に痛いんだよっ。


「んーっ」


 思わず目を閉じ、プルプルと震えながら衝撃を待つ。

 ……のに、何時になっても痛みは襲ってこなかった。


 ゆっくりと目を開ける。

 そこで見たのは……


「あ、そこはダメーーっ!?」




 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………。




 びくんびくん。

 酷い目にあった……。









 本気で、笑い死ぬかと思ったよ。

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