盗撮犯。
二十人ほどの盗撮犯をふん縛って説教したにも関わらず、その中に写真部員はいなかった。そして説教された彼らは何故か喜んでいた。
……男子って怖い……。
◇◆◇◆◇
所変わって一馬の部屋。
一馬は僕の話をちゃんと聞いてくれる。
「そんなわけでさ、余計なのばっか湧いて肝心の写真部員の尻尾がつかめないんだよ〜」
「そう簡単に捕まるかよ……と言いたい所だが、俺に一つ策がある」
「ホントっ!?」
流石は一馬だねっ。
「一つ確認したいんだが、お前はルナの能力をそのまま使えるんだよな?」
「身体能力はそうだね。それに魔力っぽい力の流れも感じるから、他の能力もそうだと思うよ」
「お、なら話は早い」
ふふ、一馬はどんな作戦を考えてくれたのかな。楽しみだね。
「あいつらは常にシャッターチャンスを狙ってるからな、屋上で涼んでるお前、みたいなシーンを演出してやれば何処かしらでカメラを覗くだろう。そこで気配察知を使うんだ」
「なるほど、肉を切らせて骨を断つってわけだね! 流石は一馬だねっ!」
ふふふ……これならうまく行くだろう!
決戦は! 明日だっ!
「あ……血をください」
「はいよ」
チューーーー。
美味しい。
◇◆◇◆◇
と言うわけで、やって来ました屋上!
沈みゆく太陽が雅って感じで綺麗だね〜。
一馬の指示に従うのなら、フェンスに腰掛けて、優雅に流し目で外を見る感じ。髪を払うように手を動かすと尚良し……だっけ。
すっ……
こんな感じ?
っと、ここでスキル《気配察知》発動!
僕の体から、超音波検査のように魔力波が発せられる。
(おやおや……これかな)
屋上への扉の陰に一人、別棟の三階に一人、隣接するアパートの最上階に一人、遠く離れた山奥に三人。
……どこのエージェントだよ……。
多分だけど、山奥の小屋に三人が司令塔だよね。ってことで、そこを訪ねるとしようか。
とは言っても、山は遠いからね。吸血姫のスキルで飛んでくよ。
え、見られてるのにスキル使ってもいいのかって?
いいんだよ。だって、彼らはみんな……
一般人じゃないからね。
ちょっと信じられないけどね……彼らはこの世界に『僕みたいな存在』がいるって承知してる人種だ。だから大丈夫。
てゆーか、盗撮に魔術使うとか、能力の無駄遣いもここに極まれり、だよね。見つからないわけだよ……。
さて、彼らを訪ねるのに使うスキルは当然、転移。歩くのめんどいしね。
てなわけで、GO!
◇◆◇◆◇
「なっ、消えた!?」
「何があった!?」
「目標喪失! 指示求む!」
通信機から流れる三人の声。
くそ、一体何が起こったというんだ!?
なんとか、なんとかしなければ。
このままでは……
我らがルナちゃんの写真が手に入らないではないかっ!
突然編入してきた超絶美少女!
流れるような銀髪、燃えるような紅の瞳。なんとも美しい……小さな体と胸も、そこがいいっ!!
「失礼なこと言うなーーーー!」
なんとーーッ!?
◇◆◇◆◇
あ……思わず突っ込んじゃった。
でも!
人のことを小さいとか貧乳とか、失礼にも程があるって話だよね!?
だから僕は悪くないっ!
なんて言っても状況は変わらないんだけどね……。
ポカンと大口開けてこっちを見てるこの三人、どうしようか?
「る、ルナちゃんだーっ! なんでここにっ!?」
その一言を皮切りに、三人は超の付くハイテンションで騒ぎ始める。
「写真撮らせて!」
「ポーズよろしく!」
「これ着て!」
「次はこれ!」
「サキュバスコス!」
「魔法少女!」
「巫女さん!」
「踏んでください!」
いやいやいやいや、最後のおかしいよねぇっ!?
◇◆◇◆◇
「って感じで、結局押し切られました。ぐすん」
「お前な……」
呆れた表情でため息を吐く一馬。
あの後、なんだかんだで言いくるめられて、
1、売り出す写真は事前に見せて許可を取る
2、売上の一割を贈呈
3、写真は僕にも送る
って契約を結んでしまったんだよ。
ただ意外だったのは、PC部もこの件には一枚噛んでいるらしく、転売阻止のプログラムが組み込まれてるらしい。つまり、学外には出ない。
なら安心だよねっ♪
「言っとくが、俺にも回ってくるんだぞ?」
「一馬ならいーよ。あ、血ちょーだい」
「お前なあ……」
一件落着……なのかな。
悪化してるのは気のせい?