バスケ。
一つ分かった事がある。
この体、チートだ。
吸血姫ルナにはいくつかの特殊能力がある。
危険……というか、日常生活を送るには不必要なものばかりでほとんど試していないけど。
たとえば、魔法が使えたり。
身体能力がチートだったり。
いくつかの武術を極めていたり。
魔眼持ちだったりするのだ。
持っているのは千里眼と予知眼。このうち、予知眼がヤバかった。
もちろん、スポーツをしているのにそんなズルはしない。これでもスポーツマンだからね、正々堂々とやりたいのだよ。えへん。
でも、魔眼はどうやら、魔力を込めてくてもある程度の影響を及ぼしてしまうらしい。
具体的に言えば、
動体視力パネェー
ってこと。
黒○のバスケのエンペラーアイってこんな感じなのかなーってくらいヤバい。
そんなわけで。
「る……ルナさんってバスケ凄いね……」
本気じゃないのにこの有様です。
「やっぱこうなったか」
「一馬。男子の方はいいの?」
「ああ。正直、相手になるやつがいない」
「なるほどね」
一馬はバスケが上手い。小、中とバスケ部に入ってエースだったし、今もバスケ部の次期エース候補だ。僕とも何度もストリートで対戦してたけど、何度やっても互角で結局勝ち越せていない。
ちなみに僕がバスケ部に入っていないのは、単純に疲れるのが嫌だから。
「じゃ、久しぶりにやる? ワンオンワン」
「お、いいな」
一馬が先生のところに駆けていき、許可をもらってきた。
「今から一馬と瑠奈さんが対戦するらしいから、ハーフ空けてくれ」
お、これは本格的ですな。
吸血姫になった僕の実力、見せてやろう。
……魔力は使わないよ。人間以上の力も見せるつもりはないから。
「じゃんけん」
「ぽん!」
「俺が先攻な」
「りょーかい」
一馬がボールを片手にセンターラインに立つ。対する僕は、3Pラインの一歩内側あたりだ。
一馬は3Pシュートも打てるからね、注意しなくちゃ。
「がんばれー!」
「一馬、女子に負けんなよー」
「瑠奈さんファイト!」
あれ、ほとんど全員が僕たちのゲームを見学するみたい。
周りの声を聞く限り、やっぱり一馬が勝つって意見が多いなあ。そりゃ、男バスエース候補なんだから当たり前だけどさ。
……負けないよ!
「始め!」
先生の掛け声で、一馬が動く。3Pラインなんて無視してドライブで突っ込んできた。
……やっぱり速い!
なんとか行先を塞いでいくけど、ちょっとずつ押されていく。なんとかして止めないとっ!
前に出た僕に、一馬は一歩後ずさる。
よし、このまま……
待て!
この目は、何か狙ってる時の一馬だ。
ゴウッ!
下がったはずの一馬が一気に体を沈め、死角から僕を抜き去ろうとする。狙っていたのはこれか……!
警戒していたからなんとか追いすがる。
けど、一馬はフルドライブからそのまま飛び上がり、
ズガン!
ダンクを叩き込んだ。
やられた……!
「ま、こんなもんか」
リングから手を離して飛び降りた一馬がニヤリと笑う。うわ、ムカつく……!
決めた。絶対泣かしてやる。
「女子相手にダンクとか酷くない?」
「大人気ないぞ一馬〜」
そうだそうだ!
非力な乙女になにするんだよ!
でも、一馬は肩をすくめ、
「いやいや。ルナ相手ならこのくらい、ハンデでもなんでもないって」
そう言い放った。
「ふーん、そういうこと言っちゃうんだ。……よし、覚悟しなよ一馬。絶対泣かす」
「やれるもんならな」
攻守交代だ。
僕はセンターラインに立ち、一気にトップスピードに!
フルドライブからのスピンで一馬を抜き去る。
「甘い!」
「だろうねっ。でも!」
バックステップで追いつかれた! 流石は一馬。けど、今の僕はまだ上がある!
背後でドリブル、そこからショルダーフェイクで再び突破。そのまま飛び上がりーー
ズガン!
ダンクのお返しだ。
見たか、一馬!
ダンクは別に、大型選手のみの技ではないのだよ!
……あれ、なんか周りが静まってる。
「どしたの?」
「「「なんで女子がダンク打てるんだよ!」」」
あー。
「えへ♪」
「言ったろ、ダンク程度じゃハンデにならんってな」
「あれ本当だったのかよ……!」
一馬と話している男子が戦慄の表情を浮かべている。ふっふっふ、凄いだろー。
「さあ一馬! 続き続き!」
「あいよー」
僕と一馬のワンオンワンは非常に盛り上がった。
そして、部活やったらエース確定だってことが分かった。
部活どうしよっかなー。