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月光のルナ  作者: 月乃 綾
第1章 人と魔族と精霊と(改稿前)
2/15

初日。

 はあ、学校か……。緊張するね。あと夜は目が冴えちゃって眠れなかったから超眠い。こんなんで大丈夫かな。


「ようルナ。行くか」

「一馬おはよ〜」

「眠そうだな」

「眠れなくてね……ふぁ……」


 確か吸血姫って、夜はステータス三倍だけど昼間は制限掛かるんだよね。ってことは、僕はずっと眠気に悩まされるのかな?

 うわ、嫌だ。


「……あの後、家で桂の話題を出してみたんだけどな」

「……うん」

「誰も覚えてなかった」

「……っ」


 予想はしてたけど……ちょっとくるなあ。


「だから、その……なんだ。そのつもりでいてくれ」

「……うん、分かった」


 はあ……。

 でも、一馬には嫌な役回りをさせちゃったね。


「一馬」

「なんだ?」

「ありがとね」

「……おう」


 あ、鼻の頭が赤い。

 照れてるのかな?


「なんだよニヤニヤして」

「べっつに〜?」


 ちょっと嬉しくなっちゃうのは、友達だからだよね。



 ◇◆◇◆◇



「水無月ルナです。見ての通りアルビノってやつ? よろしくね〜」


 クラスは一馬と同じだった。良かった〜。

 ま、桂もこのクラスだったから予想通りだけどね。


「瑠奈さんの席は……あそこね」

「はい〜」


 僕の席も桂だったときと変わらない。

 あ、一馬がこっちを見てる。手を振ってみよう。

 ……目を逸らされた。くすん。



 朝の会が終わると、クラス委員の……だれだっけ? が話しかけてきた。


「初めまして、水無月さん。クラス委員の松川光です。突然で悪いんだけど」


 逸れた光さんの視線を追うと、


「あー……」

「差し当たっては、あの馬鹿どもを黙らせるために質問会のようなものをさせてもらってもいいかしら」


 僕の方を見ながら、騒いでいる男子勢の姿があった。

 僕ってあの中に居たんだよね……変な気分だ。




「というわけで質問コーナーです。なんでも聞いてね〜」


「ハーフなの?」

「スイス人のクォーターだよ」


 これは本当のこと。


「好きな食べ物!」


 一馬の血〜。

 ……なんて言えないよね。


「甘いものならなんでも〜」

「好きなスポーツ!」

「バスケかな〜」

「おお! バスケ部入るの?」

「悩み中だよ〜」


 昼間は力が出ないんだよね。スポーツとかできるかな。


「好きなーー!」

「ーーーー!」

「ーーーー!」


 しばらくいろんな質問が飛び交い、ついにその質問が飛び出した。


「好きなタイプ!」


 一瞬で教室が静まった。

 先程までの喧騒は鳴りを潜め、水を打ったような静寂がその場を支配する。

 無表情に浮かぶ射抜くような眼差しが……!


 これは。

 下手な回答をしたら、大変なことになる。


「え、と。そうだね……」


 ゴクリ、と生唾を飲み込む音が聞こえるようだ。


「…………ぁぅう」


 あれ、なんか顔が熱い!?

 なんで!?

 あーもう、僕どうしちゃったんだよぅっ!


「はいはい、そこまで。水無月さん、大丈夫?」

「う、うん……」

「……その反応、もしかして特定の誰か・・・・・を思い浮かべた?」

「ーーッ!」

「お、当たりね」


 満足そうに笑う光さん。

 ……いや、ないよね。

 一馬は確かに好きだけど……それは友達として、だから!



 ◇◆◇◆◇



「疲れた……」

「お疲れさん。大変だったな」

「そう思うんなら助けてよー」


 結局、一馬は遠巻きに眺めているだけで話しかけてすら来なかった。


「無理。騒ぎ始めたあいつらは止められん。にしてもお前、すっかり女の子だな」

「っ……なんかゾワッとしたんだけど。そういうの止めて」


 僕は男だ。


「悪い悪い。あんまり自然だったからさ」

「順応力は高い方だと思ってる」

「俺相手でも崩さないんだな?」

「戻せなくなったら嫌じゃない」


 でもやっぱ、一馬と話してると落ち着くね。僕の事情を知ってるからかな?


「そういや、明日の体育バスケだな」

「へー……。男女は別だよね」

「当たり前だろ。で、どうすんの?」

「何が?」

「部活。入るのか?」

「うーん」


 面倒、ってのが本音なんだけどね。

 それともう一つ。


「ちょっと心配なんだよね……。もしこの体がルナだとしたら、ステータス値はとんでもないことになってるでしょ。日中だから制限されてるとは言ってもレベルカンストの最上位ジョブ、しかも特殊クエの特典付きなわけだし」

「人間離れしてることに間違いはないな」

「人間じゃないけど。吸血姫だけど。そんな体でバスケなんてして、怪我人出さないか心配」

「なるほどな」

「あと疲れるのやだ」

「そっちが本音だろ」

「バレた?」

「お前の考えることなんて大体分かる」

「おお。以心伝心だ」


 友達歴が長いのは伊達じゃないね。


「まあそれは明日考えよ。取り敢えず血をください」

「はいよ」


 ガブッ、チューー。

 ああ、美味しいなあ……。


「そう言えば昔、僕が指怪我した時に一馬が『舐めときゃ治るさ!』とか言って舐めてきたよね」

「……そうだったか?」

「うん、驚いたから覚えてるよ」

「で、それがどうかしたのか」

「いや、なんとなく思い出しただけ」

「そうか」


 おっと、これ以上飲むと一馬が貧血になっちゃうね。残念だけど、この辺にしておこう。


「ごちそうさま」

「おう」

「じゃーまた明日ね」

「またなー」


 そう言って、僕はアパートに戻った。

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