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月光のルナ  作者: 月乃 綾
改稿版ここから
15/15

第三話

短め。

こういう文章って書くの難しいです……。

 起きたら夜だった。手元の時計の針は九時を指している。

 昼過ぎ辺りから寝ているから、ずいぶんな時間を寝て過ごしたことになる。

 まあそれはいい。

 問題は、この時間になってもお腹が空かない事だ。


 ……本当に吸血鬼……?

 い、いやいや。日中ろくに動いてないし、昼にいっぱい食べたから、そのせいかも。

 断定するには早いよ。

 セーフ。まだセーフだよ。


 そんな事を思っていると、下腹部に違和感。これはあれだね、ついに時が来てしまったわけだね。

 現実を直視しなければならない時が…….!


 目の前の扉を睨み、僕は採れる選択肢を思い浮かべる。


 一つ目。このまま耐え、やがて敗北する。

 二つ目。現状を受け入れ、何かを捨てる代わりに何かに勝利する。


「……ぐぐぐ」


 一つ目はあり得ない。これは生理現象だ。時間が経てば戦況は悪くなる一方だというのに、ただ時間を浪費するのは下の下策。


 だが二つ目はどうなのか。

 いくら時間の浪費が下策と言えど、粛々と受け入れるというのはプライドが許さない。それに捨てる何かが大きすぎる。ここで受け入れてしまったら後戻りができなくなってしまうのだ。


「……うぁあ」


 ああ、ヤバい。これはもう限界かもしれない。鉄の忍耐力が悲鳴を上げている。

 いや、だからと言って。

 でも。しかし。


 だが、現状維持は最悪の選択肢。もはや動くしかない。


「……ええぃ、ままよ!」


 そして僕は、盛大に何かを捨てた。

 トイレから出てきた僕の表情は非常に晴れやかだった。





   ◇◆◇





 さて風呂だ。

 さっき、男としての何かを捨て去った僕は涅槃の境地。明鏡止水の心持ちで全てを見ることができるのだ。


 さあ、脱衣所。服を脱ごう。

 全身を鏡に映しながら、ゆっくりとジャージを脱いでいく。


 次はシャツ。

 ……の前にズボンだ、うん。

 パンツは当然トランクス。男物だ、何も問題はない。


 あとは下着。これを脱いだら全裸、そう、全裸だ。

 思わず生唾を飲み込む。


 いや、大丈夫。

 僕はさっき、悟りの意味を知った。知ったのだ。


 だから大丈夫。

 ゆっくりと下着を脱ぐ。ほのかな膨らみと、何もないーー


 む、無理っ!

 恥ずかしすぎる!

 羞恥プレイにも限度があるよ!?


 結局僕は、最速で風呂を終わらせてジャージで体を隠すのだった。

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