第三話
短め。
こういう文章って書くの難しいです……。
起きたら夜だった。手元の時計の針は九時を指している。
昼過ぎ辺りから寝ているから、ずいぶんな時間を寝て過ごしたことになる。
まあそれはいい。
問題は、この時間になってもお腹が空かない事だ。
……本当に吸血鬼……?
い、いやいや。日中ろくに動いてないし、昼にいっぱい食べたから、そのせいかも。
断定するには早いよ。
セーフ。まだセーフだよ。
そんな事を思っていると、下腹部に違和感。これはあれだね、ついに時が来てしまったわけだね。
現実を直視しなければならない時が…….!
目の前の扉を睨み、僕は採れる選択肢を思い浮かべる。
一つ目。このまま耐え、やがて敗北する。
二つ目。現状を受け入れ、何かを捨てる代わりに何かに勝利する。
「……ぐぐぐ」
一つ目はあり得ない。これは生理現象だ。時間が経てば戦況は悪くなる一方だというのに、ただ時間を浪費するのは下の下策。
だが二つ目はどうなのか。
いくら時間の浪費が下策と言えど、粛々と受け入れるというのはプライドが許さない。それに捨てる何かが大きすぎる。ここで受け入れてしまったら後戻りができなくなってしまうのだ。
「……うぁあ」
ああ、ヤバい。これはもう限界かもしれない。鉄の忍耐力が悲鳴を上げている。
いや、だからと言って。
でも。しかし。
だが、現状維持は最悪の選択肢。もはや動くしかない。
「……ええぃ、ままよ!」
そして僕は、盛大に何かを捨てた。
トイレから出てきた僕の表情は非常に晴れやかだった。
◇◆◇
さて風呂だ。
さっき、男としての何かを捨て去った僕は涅槃の境地。明鏡止水の心持ちで全てを見ることができるのだ。
さあ、脱衣所。服を脱ごう。
全身を鏡に映しながら、ゆっくりとジャージを脱いでいく。
次はシャツ。
……の前にズボンだ、うん。
パンツは当然トランクス。男物だ、何も問題はない。
あとは下着。これを脱いだら全裸、そう、全裸だ。
思わず生唾を飲み込む。
いや、大丈夫。
僕はさっき、悟りの意味を知った。知ったのだ。
だから大丈夫。
ゆっくりと下着を脱ぐ。ほのかな膨らみと、何もないーー
む、無理っ!
恥ずかしすぎる!
羞恥プレイにも限度があるよ!?
結局僕は、最速で風呂を終わらせてジャージで体を隠すのだった。




