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月光のルナ  作者: 月乃 綾
改稿版ここから
13/15

第一話

お久しぶりです。

活動報告にも書きましたが、設定集をきちんと作りました。

その結果、大幅にプロットが変わったので改稿して第一話から投稿します。

今までの話の設定は変わりません。基本的に色々と付けたした形になります。

これからも読んでもらえると嬉しいです。


変更点

桂(ルナの男の時の名前)→けい

一馬→和馬

 僕、水無月みなづき けいは真っ白な空間にいた。

 周囲は地平線が見えるほど広大で、何もない。下は、見た目は霧のようにふわふわとしているのに、足に伝わってくるのは硬い地面だ。

 ああ、これは夢だ。

 そこまで認識して僕はそう思った。

 こんな非常識な場所が現実にあるわけがない。夢の中で夢と分かるのが不思議だけど、明晰夢というものも存在するらしいし、それなのだろう。


 ふと視線を感じて顔を上げる。

 そこには、一人の少女が立っていた。


 背が低く、年齢は小学校高学年ほどだと思われる。顔は、かなり整っている。気の強そうな猫のような大きなつり目、小さな鼻、小さな口。白い肌は血色の良さが分かる程度に程よく赤みがかり、唇は綺麗なピンク色。輝くようなプラチナの髪を背中の真ん中あたりまでストレートで伸ばしている。

 綺麗、というよりも元気な可愛さを感じさせる顔立ちだ。


 少女は僕に視線を合わせ、ゆっくりと口を開いた。


「----」


 何を言っているのかは分からない。声が届かないのだ。

 けれど、伝えたいことは何となく理解できた。


「----」


 自然と僕の口が動き、少女と同じように聞こえない声を発する。

 少女はそれを満足そうに頷くと、こちらに歩み寄ってきた。

 少女の手が僕の頬を撫でる。

 顔がゆっくりと近寄ってきてーー




 僕たちは、どこからか流れた来た圧倒的な力の本流に、押し流されていった。




   ◇◆◇




「うわあっ」


 跳び起きる。

 何なんだよ、あの夢は!?

 会話はさっぱり理解できなかったけど、なんかいい感じに終わったと思ったら全部ぶっ壊しやがって。

 やっぱり夢は夢ってことかな?


 どこか釈然としない気持ちを溜息で押し流し、ベッドから起き上がる。

 ……ん? どこかに違和感が。

 まあいいや。違和感は放って歩き出す。


「痛いっ」


 転んでしまった。

 あれ、なんで?

 僕はこんな運動音痴ではなかったはずだ。確かに体を動かすのは得意ではないけど、何もないところで転ぶほどじゃない。

 ……って、ああ。寝間着がずり落ちてるんだ。

 あれ、腰まで上げてもまだ裾が余る。なんでだ? というか全体的になんかだぶついてるんですけど。

 転んでようやく目が覚めたようで、違和感が次から次へと湧き出してきた。


 まず、後頭部が重い。髪が伸びたんだろうね、具体的には背中のあたりまで。

 で、視界の端に映る髪の毛の色が銀色。銀髪かあ、まあ僕ってスイスのクオーターだし。


 そして極めつけ。


「……うん、これはもしかして、いやもしかしなくても……」


 体をべたべたと触る。

 胸のあたりに柔らかい何かがあった。逆に股には何も付いていなかった。


「……TSというやつかねえ……」


 はあ、と軽く息を吐き。


「ははは、ははははは……。訳分かんねえっ!」


 絶叫が響き渡った。




   ◇◆◇




 場所を移して洗面所。

 ええ、そりゃもう必死で駆け込みました。だって最後の希望だもの。

 息を荒くしながら鏡の中を覗き込む。


 ……。

 …………。

 ……………………。


 ええ、分かってましたとも。

 ここまで来て理解してないなんて言いませんよ。




 鏡の中にいたのは女の子だった。




 それでも残酷な現実を否定したくて、最期の悪あがきをすることにした。


 右手を上げる。

 鏡の中の美少女も右手を上げる。


 頬をつねる。痛い。

 鏡の中の美少女も頬をつねる。痛そう。


 はあ。溜息を吐く。

 鏡の中の美少女も(以下略。


 まあ分かってたんだけどね。実際に触って確かめたわけだし。

 そもそも、鏡の中にいるのが自分以外なわけがない。自分以外が鏡に映ってたりしたらそっちの方がホラーだよ。僕には耐えられそうにないね。


 まあとにかく、今の僕は鏡に映る、銀髪の美少女の姿をしているわけだ。

 夢で出てきたあの少女と同じ姿だね。

 となると、最後の力の奔流、あれのせいでこの状況に?

 ……っていやいや、なんで夢に整合性を求めてるんだ。


 てか、これどうすればいいんだろうか……?

 思わぬ事態に、僕は頭を抱えるしかなかった。





 数分後、なんとか思考を立て直した僕は、汗びっしょりの体を見てシャワーを浴びることにした。さっぱりすれば解決策も浮かぶよね、うん。

 いやいや、何を勘違いしてるんだ僕は。

 シャワーを浴びるということは服を脱ぐということだ。服を脱ぐということは裸になるということだ。僕の体は女の子だ。

 問題に直面じゃないかっ!


 あーもう、本当にどうしよう。一人暮らしだから親にも相談できないし……って、親がいても何言えば良いかなんてわかんないけど。

 ……あ、和馬がいるじゃないか!

 和馬ならきっといい考えを思いついてくれるはずっ!


 早速電話……は声で混乱させちゃうよね。メールだメール。


『和馬、ヘルプミー! 今すぐ僕の家に来て!』


 数分後、返信があった。


『お、おう? よく分からんが今から行く』

『お願い!』


 ふう、一仕事。

 ……いやいやいや!

 僕寝間着のままだよ!? このまま和馬をお出迎えするとか無理!

 着替えなきゃ!

 あ、裾に足ひっかけた! 痛い!





 ピンポーン。

 家のチャイムが鳴り響く。


「はーい」

「来たぞ、圭。どうし……た……あ?」


 玄関で僕を見て固まっているのは、丁度向かいの家に住んでいる僕の幼馴染兼親友の杉下すぎした 和馬かずまだ。長身で運動部らしく引き締まった体、日に焼けた肌。髪は短く切り、ちょっと目つきは鋭いけれど整った顔立ちをしている。

 いわゆるイケメン、人生勝ち組の存在だ。


 ちなみにスポーツは万能だが頭は悪い。いや、悪くはないが良くはない。ちなみにそのレベルで収まっているのはテスト前になると僕が勉強を見てあげているからだ。


 僕? 順位一桁以外とったことないよ。


「あー、色々と言いたいことはあると思うけど、とりあえず上がってよ」

「お、おう」


 挙動不審な和馬を連れてリビングへと移動。

 ……そうだよね、会えば分かるんだから、電話である程度話して心の準備をしてもらった方が良かったかも。


「朝早くからごめんね」

「ああ、それは良いけど……だれ?」


 うん、そうなるよね。そりゃそうだ。

 顔とかに多少面影は残っているけど、今の僕は女の子だ。分かるわけがない。


「圭です。朝起きたら女になってました。助けて」


 とりあえず、僕の身に起こったことを三行で説明してみた。


「いや、訳分かんないから。……って圭?」

「うん、圭だよ」

「そうか、圭か。……はあああああっ!?」


 良い反応だねえ。さっきまでの僕もこうだったよ。

 のほほんとしながらお茶を飲んでいると、和馬は諦めたように溜息を吐いた。


「……圭なのか……。まあいい、とりあえずそういうことにしておこう」

「おかえり和馬。速かったね」

「お前が落ち着いてるのを見たらアホらしくなってきたわ」

「酷いな、これでも相応に混乱したんだよ? 今は開き直ったけど」

「その現場を見てないから知らねえよ」


 投げやりにそう言い放ち、疲れたようにコップを口に付ける和馬。


「つーかその姿って、あれだよな。ほら、お前のゲームキャラの……」

「ああ、ルナ? そう言えばそうだね」


 和馬の指摘に、自分の体を見下ろして頷く。

 小柄な体、小さな胸、くせのない銀髪に琥珀の瞳。人気オンラインゲーム【ラグナロク・オンライン】での僕のキャラであるルナとそっくりだ。


「まあそれはいいや。で、実際問題これからどうしよう?」


 入学試験とか終わってるしねえ。当然ながら、男として。

 男装して通う? いやいや、身体測定とかで即バレる。


「最悪引きこもりになることになるよ。お金はあるしねえ」

「うーん、どうしたもんか。……病院行くか?」

「なんて説明するのさ」

「朝起きたら女になってました。助けて。……うん、頭おかしい人に見られるな」


 それって僕が和馬に言った言葉そのままだよね?

 そうか、僕は頭おかしい人だったのか。

 このやろー。

 僕の視線に気が付いたのか、和馬は慌てて口を開く。


「まあそれは冗談として、俺に言われても分からないってのが本音だな。解決策なんかは専門家に聞かないことにはなあ」

「でも、正直に話したら怪しい研究所送りだよね……。よし、男に戻る方法を探すのは後回しだね」

「いいのか?」

「仕方ないよ。それより、これからどうしよう?」


 そう、こっちも問題だ。

 当面は女の子として生活するにしても、僕に女の子知識なんてないのだ。

 いや、知識どころか服も下着も持ってない。制服も届くのは男子用だろう。

 ……どうしろと?

 不安いっぱいな僕だったが、和馬はそれを笑い飛ばした。


「はっはっは、何を言っているんだ? 現代日本にはインターネットという心強い味方がいるじゃないか」

「和馬、天才!」


 早速検索。

 ……うん、これだけ詳しく分かれば大丈夫だね。なんとかなりそうだ!


「あとは、そうだな……。あ、お前、学生証持ってないか? 制服はまだだけど、学生証ならもうもらってるだろ」

「あ! そうだね」


 そうだよ、その手があった。

 僕は自分の部屋まで戻ると、机の引き出しを開けて学校関係の書類がまとめてあるファイルを取り出した。

 

「持ってきたよ!」

「どうなってる?」

「えっと……」


 そして取り出した学生証には、


「Female……」

「マジか……」


 僕は女性だと記載されていた。

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