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月光のルナ  作者: 月乃 綾
第1章 人と魔族と精霊と(改稿前)
10/15

付与。

 一馬が作ってくれた生姜焼きを食べてお腹いっぱいになった僕は、これまた一馬が淹れてくれた緑茶を飲みながら寛いでいた。なんというか、うん、一家に一人一馬だね。


「はあ~。落ち着く」


 温かいお茶って、なんだか良いよね。

 でも、一馬ってなんだかんだで家事万能だよね。料理は美味しいし、コーヒーやお茶を淹れるのも上手。部屋もきれいだけど潔癖症ってほどではなくて、運動神経も抜群で顔も悪くない……

 ってあれ?

 なんか違う。


「…………」

「……うん? どうかしたのか」

「いや、なんでも」


 うん、一時の気の迷いだろう。


「ねえ一馬、血をもらえる?」

「……またかよ」


 朝もらったばかりだもんね。けど、光との買い物は疲れたんだよぅ……。


「……ダメ?」

「ッ……、いいけど、吸い過ぎるなよ」

「わーいっ♪」


 首筋に歯を立て、滲み出た血を舐めとる。普段は吸い付いちゃうんだけど、今回はたくさん飲むと一馬が貧血になっちゃうからほんの少しだけだ。


「……ごちそうさま」


 普段よりちょっと鉄の味のする血を堪能し、顔を上げる。もっと飲みたいけど我慢。


 血を飲むついでにこっそりと治癒魔法のスキルを発動させた。治療キュアみたいな即効性のあるものじゃなくて、体細胞を活性化させて自然治癒力を上昇させるタイプのものだ。増血作用を期待してみた。意識してエフェクトを消したから、一馬にはばれてないはずだ。


 ……あ、いいこと思いついた。


「ねえ一馬、サプリ見せて」

「ん? ああ、ほれ」


 投げ渡された白い容器を手に取り、付与術を発動。これは、対象の効能に+1の補正を与える効果を持つ……ようはブーストだ。さぷりなんて補助ではなく、増血剤のような効果を期待している。


「はい」

「何したんだ?」

「付与スキル使ってみたんだ。効果上がってると思うよ」


 これで一馬の血がもっと吸える……にしし。

 でも、そんな僕の思惑はあっさりとバレたようで。


「ありがとう。けど、必要以上に血はやらんぞ」


 と言われてしまった。


「それは残念。一馬の血は美味しいから、もっと飲みたいんだけど」

「勘弁してくれよ。傷の痛みと違って、貧血ってのは結構我慢が効かないんだ。痛み止めなんかも効果ないし」

「そのための付与だよ♪」

「遅効性だろ」


 取りつく島もない……。

 まあ餓死するほどではないし、食事の楽しみというのも普通に味わえるから仕方がないかな。誰かを苦しめてまで、欲しいものじゃないから。


「けど、転移に気配探知、そして付与か。分かってはいたけど、ルナのスキルは再現されてるんだな」


 一馬が呟く。


「そうだね。でも、魔術に関してはちょっと勝手が違うみたい」

「そうなのか?」


 吸血姫である僕は夜が本来の活動時間だから、日が沈むと目が冴えてしまって眠れないのだ。今は、この体の驚異的な身体能力と疲労回復能力に任せて明け方以降の短い睡眠時間でなんとかやっているけど、基本的に皆が寝てしまう深夜は暇。だから、その時間を使って魔術の検証をしていた。

 もちろん、制御をミスして暴走した時に危険なことになるような攻撃魔術は一切検証してはいない。使ってみたのは、各属性の初級魔術と、生活魔術と呼ばれる殺傷性のない魔術だけだ。


「ただ、『スキルを発動する』って意識だけじゃなくて、『どんな状態を引き起こすのか』ってイメージが必要みたいだね。その分制御も簡単でいいよ」


 気配探知や転移は、『スキルを使う』と意識するだけで発動できた。けれど、魔術系統のスキルはただコマンドを押すだけでなく、発動した状態を明確にイメージしておく必要がある。例えば火属性魔術でいえば、起こす火が『どれくらいの規模』で『どのくらいの温度』で、『どんな形』で『何を燃料に』燃えるのかを指定しなければならない。

 そして、その代わりに詠唱が完全に破棄されている。厨二っぽい言動をしなくてもいいっていうのは有り難いね。


「ただ、魔力を使うから、大規模なものを使うと血が欲しくなるかも」

「へえ、そうなのか。最近たくさん持ってくようになったと思ったら、そんなことしてたんだな」

「……ひ、必要なことだよ?」


 にっこりと笑う一馬が怖い。

 昔からこういう笑い方をする一馬を、僕は密かにこう呼んでいたのだ。


「ああ、そうだな。確かに必要なことだ」

「だ、だよね」

「ああ。それは認めよう」


 それは。


「けどな……俺の血を使う以上、一言断りを入れるのが筋ってもんだろう?」

「う、うん。ごめんなさい」

「ああ、分かればいいんだ。分かれば。けどな、何度もこういうことをやられると、謝るだけじゃ不十分だなって思うんだよ」


 ……お仕置きモード。

 親が家を空けている僕を、代わりに叱るのは、いつも一馬だったのだ。


「ってなわけで、ルナ、お仕置き。そこに直れ」


 一馬から、絶望的な宣告が言い渡された。

 どうなってしまうんだろう……。





















「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ! も、もう止めてーーーーッ!!」


 一馬からの罰は、くすぐり地獄だった。

ルナと一馬の距離感が安定しない……。

単に私の実力不足です、すみません。もっとちゃんと書けるように頑張ります……!

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