表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月光のルナ  作者: 月乃 綾
プロローグ(改稿前)
1/15

朝起きたら

『事実は小説よりも奇なり』


 有名な言葉だ。

 誰のだったかは……忘れたけど……。

 俺は今、その言葉が本当だったということを悟った。


 朝起きて寝ぼけ眼を擦りながら、顔を洗おうと洗面所へと足を運んだ俺は、鏡の中に見知らぬ少女を見た。

 流れるような銀の髪、燃えるように赤い瞳、雪のように白い肌。ネコ科のように釣りあがった目は小さな口と相まって小動物のような印象を与える。……ってか、身長も低いな。

 なんか可愛い子がいる。

 ぼんやりとそう思いながら目を擦ると鏡の中の少女も同じ動作をし、あれ? と首をかしげると同じ動作を返された。

 そこでようやく、俺は、この銀髪の少女になってしまったことに気付いたのだ。


 さて、そうと分かった俺は混乱した。

 それはもう、酷く混乱した。思わず自分の胸を揉んだり足の間に手をやってアレ・・があるかを調べたり、とりあえず着替えようとして下着が付けれず服と縺れ合ったり。下着は何故かクローゼットに入ってた。

 で、もう仕方がないからノーブラでシャツだけ羽織ってケータイで友人に「へるぷみー」と送ったところだ。「今行く」と返ってきたから、数分のうちに来てくれるだろう。


 ピンポーン


 あ、来た。相変わらず早いなあ。


「よう……う!?」

「あー……言いたいことは山ほどあるだろうが、入れ」

「お、おう」


 だよねー。俺女っ気なかったもんな……そんな俺の部屋にこんな美少女がいたら驚くよなー。

 俺なんだけど。


「とりあえず……誰?」

「どうも、桂です。体変えました」


 スチャ、と片手を上げてそう言ってみた。あ、顎外れそうになってら。


「……桂?」

「おう」

「お前、女になったのか」

「そうらしいな。助けて」

「……その服は?」

「下着のつけ方が分からん」


 今俺が着てるのは、ちょー短いズボン……なんだっけ、ホットパンツ? とワイシャツだ。見た目はほとんど裸ワイシャツ。ロマンだね。


「目に毒だ、止めろ」

「女物の服なんてねーよ。下着は何故かあったけどな」

「まさかお前……」

「いや、ねーよ。起きたら何故かあったんだって」


 そう、俺は知らない。そんな趣味はないし、盗んだりもしていない。

 だから汚物を見るような目はやめろ。


「まーそれはいーや。でさ、一馬。どうしたもんかね」

「病院行けば?」

「んで、起きたら性転換してました、って? 精神科コースだな」

「専門家とか」

「オカルト系の研究者か。人体実験とかされそう」

「じゃあ俺にはどうしょうもないな。女として生きろ」

「マジかー……」


 それは……あれ。

 特に不都合ってない気がする。

 強いているなら、このままずっと女だとすると、脱童貞の機会が失われたってことくらい。

 …….どうでもいいな。

 いや、見方によっては確かに重要なことだ。けれど、生活に影響を及ぼすほどのことかと言われればそうではない。単なる俺の未練だ。


「うん、そうしよう。てかそれ以外に選択肢ないしな」

「受け入れるの早いな」

「お前こそ、よく取り乱さなかったな」


 友人が女体化なんてそうそうお目にかかれる事態ではないと思うのだが。


「なんかな……お前が落ち着いてるのを見て、騒ぎ立てるのが馬鹿らしくなった」

「これでも相応に混乱したんだぞ?」

「だろうな。けど、俺の前では落ち着いてたろ」

「確かに」


 諦めてたとも言うのだが。


「さて、問題は、明日からどうするか、だな」

「学校か……」

「下着類は知らないうちに用意されてたんだろ? なんか書き置きとかないのか?」

「うーん。探してみるか」

「手伝うよ」

「サンキュー……ってクローゼット覗くな! そこは俺がやる!」


 油断も隙もねえ!



 ◇◆◇◆◇



 結論。あった。


「んーと、編入届け。水無月ミナツキ瑠奈ルナ。これ、どう考えても俺だよな」

「ああ。お前だな」


 編入届けの控えがクローゼットから見つかったのだ。

 ……何故にクローゼット?

 これを届けてくれた人には色々と聞きたいが、お陰様でなんとかなりそうだ。いや、その人きっと俺を女体化させた犯人だ。感謝なんぞできん。


「ルナって、俺が作ったゲームのキャラだよな」

「ああ。レベルカンストして最上位ジョブの吸血姫になったんだったな。それも神祖」

「…………」

「…………」

「…………一馬」

「はあ……血が欲しくなったら言え。どこぞの吸血鬼のように殺人騒ぎを起こされても困るから」

「ありがとう! ……実は腹が減っている」

「今かよ!」

「いや……普通に腹減ってるだけかもしれないから、まずは飯から試そう」

「おう」


 冷蔵庫から適当な冷凍食品を取り出し、レンジに放り込む。


「お前……一人暮らしなのに、まだ料理できないのか」

「この世界には、惣菜、冷凍食品、保存食という三種の神器があるんだよ」

「栄養バランス崩すぞ」

「食べれりゃよし! もしくは一馬が作ってよ」

「お、おう……」


 あれ、なんか目が泳いでる。

 いつもの冗談だろ?


「まあいいや。いただきまーす。もぐもぐ……ごちそうさま」

「どうだ?」

「んー、よく分からないな。ちょっと待ってみるか」


 十分後。


「お腹空いた……」

「確定的だな」

「一馬がすごく美味しそうに見える……」


 空腹で目が回りそうだ。

 ああ……ヤバい……。

 一馬がホシイ……。


「ったく。ホレ」

「いただきまーすっ」


 はだけた首にかぶりつき、溢れ出した血を啜る。

 ああ……美味い……。


「ぅあ……おい、吸いすぎだ」

「あ、ごめん……ごちそうさま」


 最後に一舐めして顔を離す。美味しかったなあ。


「そんな顔すんな。貧血にならない程度にならまたやるから」

「頼むよっ」

「おう。……そうだ、言葉遣い直せ? 変えろよ。外見と合ってないから」

「そうか、了解」


 言葉遣いか。どんな感じだろうな。

 私……はちょっとハードルが高いから、僕。うん、これならいける。


「一人称は僕でいいよな……よね?」

「ふむ、ボクっ娘か。悪くないな」

「お前……一馬はそういうの好きだもんな……ね。……ごめん、ちょっと練習に付き合って」

「あいよ」


 その後一時間ほど話し、解散した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ