魔法少女キャンディースノウ✩
天田 快斗(16)性別♂
先日空に変な船を見かけ、その後降ってきた毛玉にたかられた。
無理矢理地球を守る戦闘員へと任命され、変身能力という呪いをかけられてしまって現在に至る。
でかいメロンを胸にぶら下げ、短いスカートで生足を晒す。
誤解しないでくれ、一応変身後は女のカラダになっている。
♂のまま超ミニのスカートなんか履いていたら、通報されてしまうからな。
といっても、こんな格好ではご近所に悪い評判が立ってしまうだろう。
まあ、自分だとバレないであろうけれども。
「お前なんでくっついてくるんだ。でかい毛玉つけたアホだと思われるからその辺の入れ物に隠れてくれないか?」
「にゃに!?隠れるのは構わにゃいが、これなんて書いてあるにゃ。地球の言葉は今勉強中にゃ。」
「そうか、勉強熱心だな。それは【くずかご】と書いてある。それに入っていれば、自動的に目的地につくという便利な入れ物だ。俺は学校に行くから、お前はそれに入り先に行っていてくれ。」
「わかったにゃ。お前は入らにゃいのか?」
「人間は体力をつけるために、自分で歩くものなんだ。」
「にゃるほど。じゃあ、先にいって待っているにゃ!」
おとなしくくずかごの中に入る毛玉。
「にゃんか、臭うにゃ。」
「・・・・・・・」
聞かなかったふりをして、その場を立ち去る。そのまま成仏してくれ。
「かいとー!!お前騙したにゃぁ!!」
授業中窓の外から突然飛び込んできた毛玉。
人の頭に張り付きぎゃあぎゃあと喚いている。
ほかの人間には聞こえていないのか、特にこれといった反応は見られない。
まあ、仮にも天使を名乗っているのだ。特定の人間にしか見聞きできないような性質でも持っているんだろう。
鬱陶しく思っていると教師と目が合う。
「えーと、天田くん?頭に大きな毛玉がついているわよ?もしかして気づいていないのかしら?」
って!みえるんかいっ!!
俺はつい頭に張り付いていた毛玉を鷲掴み、床に叩きつけてしまった。
まあ、ふよふよで大した衝撃は与えられなかったけども。
「いたいにゃぁ・・・」
「すみません先生。気分が悪くてぼんやりしていました。授業続けてください。」
足元でふよふよする大きなけだまが、周囲の生徒に足蹴にされても傍観を貫いた。
最終的に俺の足にくっついたまま離れないので、クラスメイトに笑われてしまったのだが。
「ひどいにゃぁ、うちが人間にひどいことされてるのに無視したにゃ。悪魔の所業だにゃ。大体あの入れ物に入っていたら、とんでもないところに連れて行かれたにゃ。押しつぶされて、粉々にされそうになったにゃ。にゃんか、臭いし。」
「そうか。」
「お前、うちを消そうとしたにゃ?!にゃんて恐ろしいことする奴だにゃ・・・まさか、悪魔にゃんじゃ・・」
「お前、本当に悪魔が誰なのか見分けつけらんねーんだな。もうほんと何しに来たんだ・・・」
深々ため息をつきつつたどり着いた我が家。
ドアを開けると困惑顔の母が何やら子供のおもちゃを持って佇んでいた。
少女たちに人気の魔法処女の武器のようなものだ。
「何してるの?」
「あ、おかえりなさい・・・あのね、快斗くん。ママプレゼントをもらえるのはうれしいんだけど、さすがに魔法少女にはなれないと思うの。スタイルも自信ないし。」
「いや、望んでないから。そもそも少女って時点でアウトだから。」
「もう!ママ真剣なんだからね!!」
「・・・うん。それよりそれ何?」
ぷんぷんという擬音語が見えそうなノリで怒っている母。
40過ぎてます。母が持っているそれを指差し、不審な眼差しを送ると逆に驚かれた。
「ええ?快斗くんがママにプレゼントしてくれたんじゃないの?ママ宛に届いたからてっきりプレゼントかと思って。」
「俺は・・・」
ふと嫌な予感がし、毛玉を見る。
「うちが取り寄せたにゃb」
今すぐこの毛玉を掃除機で吸い込みたい。
このアイテムを一体どうするつもりだ。まさか俺に持たせる気じゃないだろうな。
「ちなみにどこから届いたの?」
「ん、A○azon」
「おもちゃかよ!!」
「もうwまさか本当に変身できると思ったの?恥ずかしいからって、ママの名前で買うなんてかわいいわねwまだまだ子供ねぇww」
「ちがっ・・・はぁ・・いいや。とりあえず、それ貸して。」
母の手からおもちゃを奪い部屋へ戻る。
「おまえ、言葉は勉強中って言ってなかったか?よくPCなんて使えたな。」
「適当に押してたら、武器が出てたから押してみたにゃ。便利だにゃ。さっそく使うにゃよ!」
「使うか!!」
キラキラとデコレートされたそれをゴミ箱に投げ入れ、ベッドに横になる。
雑誌を開いて眺めていると、何やら外が騒がしい。
きゃっ・・やだぁ・・・何この人っ!!
変態よっ・・
どうも最近変質者がでると回覧板で回っていたな。
学校帰りの女子が遭遇してしまったらしい。
窓からそっと覗いてみると、携帯で電話をかけている様子なので警察にでも知らせているのだろう。
それならいいかと離れようとすると、突然背中に衝撃が走る。
「うっ・・わぁ!!??」
「悪魔が出たにゃっ!魔法少女キャンディースノウに変身にゃ!!」
「はぁ!?なんだよその名前っ!だっせぇ!!」
どうやったか知らないが、窓から外へと突き落とされて、それまた何故か毛玉が変身の言葉を叫ぶ。
またもや全身を違和感が襲い、前胸部に二つの重り。ケツが見えそうなくらいのヒラヒラスカートが生える。チートな能力を与えられたわけでもないので、当然着地など出来るわけもなかった。
だが、下にはドンくさい変質者が逃げるタイミングを失った様子でウロウロしていたため、そいつを下敷きに衝撃を和らげることができた。
「・・・・うへぇ・・お、おっ○いが・・こんなに大きなおっ○いが目の前にぃ!!」
「きもっ!!」
変質者の顔が自分の胸に埋もれていて、なんか生暖かい感触。
見ると、鼻血を垂らしていた。
赤く染まる胸。
「っわぁ!!てめぇ!!勝手に揉んでんじゃねぇよ!!」
「ふう・・はぁ・・はぁ・・やわらかい、いいにおいっ・・」
加減なく揉まれる胸。足に当たる硬いもの。
荒ぶる息。
このままでは犯られる!!
「快斗これを使うにゃ!!」
「名前を呼ぶんじゃねぇ!!」
投げつけられた魔法少女の必殺武器(鈍器)で目の前の変質者と毛玉を思い切り殴る。
「「へぶぅ!!」」
へし折れた武器。
ぶっ倒れる変質者と毛玉。
騒ぎを聞きつけてか、家の玄関が開く。
「まぁ、まぁ、快斗くんたら。本当は魔法少女に憧れていたのね?最近のおもちゃはすごいのねぇ。」
息を荒げる俺を見て、母が俺の名前を呼ぶ。
えっ!?まさか俺の顔って・・あんま変わってないの!?
なんだか人が集まってきていて、恐る恐る周囲を見渡す。
「あら、快斗くんたらいつの間にあんなに育っちゃって。」
「そうねぇ。お母さんに似て、かわいらしいわね。それにしても、あんなに大きかったかしら?」
「けど、あの格好はちょっとねぇ。」
「かぜひいちゃいそうね。」
そこじゃねぇよ!!
警察官に連行される変質者を、死んだ目で見つめる。
死んだ、俺の世間体。
そんな俺に駆けつけた警察官が、生ぬるい視線で、そっとへし折れた武器を手渡してくれた。
「いらねぇよ!!」
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