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プロローグ

「はぁ... っはぁ... っ」




薄暗い森の中、一人の青年がものすごい勢いで駆け抜けていく。

どんなに走り続けても森から出られる気配は全く無い。




そんな彼を嘲笑うかのように木々はざわざわと揺れる。


「... っ!」


森がひらけたかと思いきや、そこは断崖絶壁だった。




彼は為す術もなく、落ちていく。

いや、正確にはあえて抵抗することなく流れに身を任せたのだ。




「... うっ」


運良く葉が生い茂る木の上に落下した彼は小さく呻き声を上げながら細い枝を折りながら地面に叩きつけられた。


「ぐっ... 」


一瞬辛そうな表情を浮かべたが、すぐに何事も無かったかのように無表情に戻り、立ち上がって、再び走り始めた。




不気味な雰囲気が漂うこの森。




まるで、この森自身に意志があるかのようだ。

彼の行く先を森は生み出していく。




突然、青年は立ち止まった。




この状況に絶望したのだろうか。

いや、彼の瞳には鋭い眼光が宿っている。


そして、彼はふっと軽く息を吐いた。

同時に、瞳も閉じる。






「俺を誰だと思っているの?」




小さく呟いた。






「俺に、逆らうつもり?」






今度ははっきりと、その言葉には重圧があった。


途端に森は開け、満月の光が彼を照らし出した。

彼の、端正な顔が浮かび上がる。

煌めく銀色の髪。

二重の瞼に長い睫毛。

すっと通った鼻。

形の良い唇。




───刹那、


一陣の風が吹き抜けた。

そして、その時にはもう、彼の姿はどこにも無かった。




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