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私はあなたからの愛を1つ残らず受けとめる事ができていますか?

このSSにはBNSH本編のバトルフェスティバル編、SS「あなたが私を忘れる日がきても私はあなたを愛し続ける」を既読前提で進みます


 峰本連夜

 焔火キセト

 松本瑠砺花


  が登場します


 なお、本編の終末とは全く違う、パラレル世界のお話としてとらえてください。

 


 式は身内だけで行うそうだ。

 連夜と瑠砺花も呼ばれていた。行かなくてはならないと思った。少なくとも連夜はそう思った。

 きっと、キセトは亜里沙の死を受け入れられはしないだろう、と。駆けつけなくてはあいつはつぶれてしまう、と。


 だがキセトは気丈だった。若々しい外見には似合わない、長年生きた年の功を発揮していた。

 お参りに来た周りのものに礼儀正しく礼を返している姿が連夜が久しぶりに見た友の姿だった。隣にはキセトの息子である龍道も並んで、その妻や子供も並んでいる。

 周りが歳を取れば取るほど、外見が老けないキセトは内に篭るようになっていた。歳相当に老けた連夜や、いよいよ父より老けた外見になった龍道に遠慮しての行為だったらしい。引きこもったキセトと共にい続けたのは、キセトの妻であり最愛の人の亜里沙だけだった。


 身内だけの式だと言っているのに、どこで聞きつけたのかたくさんの人が駆けつけていた。ご弔電も山のように積まれている。殆どのものは喪主のリボンをつけているキセトを見て怪訝な顔をした。「外見がお若いと聞いていたが、もう八十を過ぎているのではなかったのか。あれはおかしい」などという声も連夜は聞いた。


 「よぅ」


 「あぁ、連夜。久しぶり」


 「おう」


 しっかりしろなり無理をするななり、声をかけようと思ったが、今のキセトには必要ないようだった。亜里沙を失ったというのに満足気にも見えたからだ。


 「オレにできること、あるか?」


 「互いに生きてる幸せを、味わってくれ。大丈夫。俺の手はまだ暖かいから」


 「お、おう?」


 「亜里沙の愛は、ここにあるから」


 そういって、宝物でもあるかのようにキセトは自分の手を握る。やはり満足しているようだ。


 長年の友の願いともあって、連夜は「互いに生きている幸せ」というものを味わおう。連夜のパートナーはまだ連夜の隣にいる。


 「瑠砺花ちゃん」


 「はぁい、なんですか?そんな若い子みたいな呼び方して」


 「隣座ってほしい」


 「はいはい。どうかしましたか、おじいさん」


 「……なんでもない」


 キセトは、死後ですら残る愛を感じたそうだ。

 きっと、瑠砺花が連夜に注ぐ愛もそうであるだろう。深い愛がなければこんな好き勝手な男に何十年も添うことなどできないはずだ。だが、連夜はそれほどまでに深い愛は感じたことが無かった。我侭なのかもしれない。

 だが、連夜はこう思った。オレが瑠砺花の愛を漏らしている。受け入れられていない。


 ならこうやって傍にいよう。どんな細かいことでも気づいてやれるように。どんな小さな愛情でも気づけるように。そして、気づけば返してやれるように。

 互いに歳を取った連夜と瑠砺花にはそんな時間も僅かしかないだろう。それでも、それだからこそ、この僅かな時間だけでも全てを受け入れてやりたい。


 「あと少し。あと少し、頼む」


 「あと少しですか。そうですねぇ、あと少し、お願いします」


 互いの体に触れるほどの激情は若いころで十分だと思う。

 視線を交わすだけの迸る思いも若いころに枯れてしまったのかもしれない。


 今はただ、隣にいると感じるだけでいい愛情がある。


 どちらが先に逝くのかはわからないけれど、互いを感じるこの時間を愛と呼ぼう。一切漏らさない。これから僅かな時間の全てを愛と呼び、その全てを受け入れたい。


 「それでいいのかね」


 「そうですねぇ。いいと思いますよ」


 「愛してるさ。きっと、最期まで」


 「最期からも、お願いします」


 ははっと連夜が笑った。キセトの手に残った愛でもあるまいし、最期から愛するなどどうするのか。


 でも、それも考えておこう、と連夜は瑠砺花の言葉を受け入れることにした。

 共に生きるパートナーとして瑠砺花を選んだ責任であり、それが自分の最も取りたい選択であると連夜は確信していたので、受け入れることは苦痛ではない。

 いい気持ちのまま、隣にいる瑠砺花を感じていた。最期とよばれるものがくるまで。


 

 

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