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三色ホワイトトリオ――大人編――

Black Night have Silver Hope(以下BNSH)のキャラが登場します。

哀歌茂茂 (あいかもしげる)

闘技戦火 (とうぎせんか)

羅沙驟雨 (らすなしゅうう)


 本編を読まないと三人の関係が分かりにくいかもしれません。

 読んでいても分かりにくいかもしれません。

 時間軸的には本編後のお話となりますが、ネタバレ等はございません。


 羅沙驟雨と闘技戦火の結婚祭が終わって数ヶ月、羅沙大栄帝国の首都は日常の穏やかさを取り戻しつつあった。なにせどこに行っても「お祭り」だったのだ。街全体が二人の結婚式と同時に祭りをしていたと言うべきだろう。

 貴族と一般人(平民という言い方は避けられている)では祝い方は違ったもののそれぞれが二人を祝福していた。一部からは戦火の母親の出身のことで反対の声も出たらしいが、驟雨(と茂)が上手く治めたのだ。


 「陛下、来月の陛下の生誕祝賀パーティなのですが……」


 真っ赤な戦火が空色の驟雨に微笑む。その手には、貴族(赤色)から皇族(空色)に嫁入りした者たちの伝統となっている紫色の衣装があった。


 「茂が衣装を送ってくださいましたの。さすが哀歌茂といいますか、茂も哀歌茂商業組合組長といいますか、とても上品で可愛らしいもので、パーティの雰囲気にもぴったりですわ」


 「……ほう」


 驟雨の顔に「ちょっと待て」と文字が浮かんだのが戦火には見えなかったらしい。驟雨の心の中を覗くと、


 (何あいつ人の嫁に服送ってきてるんだよ、しかも俺の誕生日お祝いする席の服なのに俺への誕生日プレゼントより先に送るとかどういうことなんだよ、とりあえずその服は一生戦火は着なくていいから)


 とのことだ。もちろん、戦火にとっても驟雨にとっても哀歌茂茂はよき友人なのでそれを口に出したりはしない。表情に出るのは、互いに気を許している証拠として許して欲しいところだ。


 「茂からはなんて?」


 いや、友人でなくとも口には出すまい。

 哀歌茂茂は羅沙驟雨にとって、友人でもあるが戦火に対する恋敵でもあった。本人は口にしたことなどなかったが、ほかならぬ驟雨には分かった。だが、茂は驟雨と戦火の恋を応援までしてくれていたのだ。戦火のことを好きとは決して言わなかった口で、「驟雨に恋する戦火は綺麗だよ」と意味深なことを言っていた。

 そして最終的に、驟雨と戦火の結婚祭を取り仕切ったのは哀歌茂組合組長となった茂だった。驟雨と戦火が結ばれたことに納得していないのならその過酷な仕事を引き受けてはくれなかっただろう。もしかすると、生まれながらにして皇族だった驟雨には理解出来ない商人の性だったのかもしれないが。


 「特には何もありませんでしたわ。陛下に対するお祝いの言葉でしたら、茂なら自分で直接言いますわよ」


 ――だって、わたくしたちはお友達でしょう?


 当然のように続いた言葉が、結婚した驟雨にはくすぐったい言葉で、結ばれなかった茂には槍で貫かれるような言葉になるのだろう。恋って残酷だな、と数分前に嫉妬していた自分を棚の上に上げて驟雨は思った。


 「茂もパーティ参加だっけ? 貴族だけか哀歌茂も入れるのか、いつも分からなくなる」


 「陛下」


 最後にハートでも付きそうな声で戦火は白紙の手紙を驟雨に渡す。


 「来て欲しいのなら陛下が招待なさるべきですわ」


 つまり招待状を書け、とこの鬼嫁(予定)は言っているのだ。

 ……そんなところも愛しいと思うのだから手遅れだろう、羅沙驟雨。 

 茂への手紙に「誰かが読んでもいいように体裁を守って書く」などということはなく、友人らしい手紙を書くことにした。驟雨が書き上げた手紙は戦火に回収されて、戦火は目を通すとクスッと笑った。


 「とてもよいお手紙ですわ、陛下」


 「そうだろ?」


 戦火は驟雨を陛下と呼ぶようになった。茂もそうだ。最初は距離を置かれたのか、と驟雨も悲しんでいたのだが、これは二人なりに驟雨と共に過ごすための変化だと気づいた。いくら妻といえど、いくら旧友であろうと、いくら現在では皇帝の権力が弱まろうと、羅沙驟雨は羅沙皇帝である。今まで通りという訳には行かない。互いには今まで通りでいいのだが、今はちょっとしたことでもすぐにつつきたがる連中が居る。共に居るための努力をしなければならない状況になっているのだ。


 「さて、検閲なんかが入ると友達同士の冗談でした、ですまない。茂に取りに来てもらうか、届けてもらうか」


 「わたくし、とてもよい何でも屋さんを知っていますわ」


 戦火が告げた「何でも屋さん」は、かつて戦火が所属していたナイトギルドのことだ。そして、あそこの隊長なら羅沙城に登城する権利がある。なおかつ茂もかつて所属していたので茂の所にナイトギルドの者が尋ねても不思議ではない。


 「よろしく」


 戦火に封筒も投げ渡しておいた。

 驟雨にとって妻ともなった戦火も含めての「三人組」なのだ。大人になっても揃っていなければ何か足りない気分になる。


 「茂~、ことあるごとに招待してやるからなぁ~」


 驟雨と戦火がいちゃついてるのを見せ付けられて溜息して、そんな茂の姿を見て驟雨が笑う。戦火が不思議そうに首を傾げる。

 

 (あぁ、幸せになったな……)


 平和な世界を望んでそれが手に入った。まだ建前を必要とはするものの、身分差による差別も緩やかになってきている。驟雨たちが生きている間にソレは訪れるかもしれない。驟雨と戦火と茂。皇族と貴族と一般人。三人で一目も憚らずに街中の喫茶でお茶しながら笑い合う光景。


 (もっと、幸せになりたいな)


 求めればキリがないとはいうが、求めることを許された環境にいるのだからキリのない幸せにつかろうではないか。

 驟雨としては、その幸せの中に最愛の妻と最高の友と、共にありたい。

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