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古き友人たちへの最初の仕事と、その息抜きに。


 このSSには

  峰本連夜

  哀歌茂茂

  焔火キセト(名前のみ)

  愛塚亜里沙(名前のみ)

  闘技戦火(名前のみ)

  羅沙驟雨【平歌滋】(名前のみ)

  羅沙明日(名前のみ)

 が登場します。


羅沙皇帝、羅沙驟雨の婚礼の儀が行われるとあり、羅沙は国中お祭り騒ぎになっていた。羅沙の帝都ラガジはその中でも一層賑やかである。


 が、ナイトギルドは通常運転。客足が普段よりも遠のいて通常よりも暇と言えた。


 「ほい、おつかれさん。茂」


 「ありがとうございます」


 ぐったりとした様子でナイトギルドの食堂にある畳スペースに横たわる茂に、珍しいことに連夜が世話係を勝って出ていた。

 茂も普段なら遠慮するところなのだが、今だけならいいか、という気持ちで受け取る。というのも、茂が疲れているのにも立派な理由があるからだ。


 「にしても凄いよな。このお祭り騒ぎの露店も、第二層の大規模立食パーティーも、第一層の城でやってる婚礼の儀会場も、哀歌茂が仕切ったんだろ? 茂が統括したって聞いたけど……、こんなところに居ていいのか?」


 「僕の組長としての初仕事は二人の結婚式だって決めてましたから……。何かあれば連絡が来ますし、今日は三日目ですから初日よりは落ち着いてるんですよ。婚礼の儀式自体は明後日ですから、今日は中休みです」


 茂の友人である闘技戦火と羅沙驟雨の婚礼の儀。もちろんその準備は政府が取り行う案が通るはずだった。だが、もう一人の羅沙皇帝、羅沙明日と婚礼の儀の当事者二人が哀歌茂茂を指名したのだ。茂も喜んでそれに応えた。

 が、仕事量の問題である。第一層、第二層、第三層と別にチームを分けて取り組ませても総括者である茂は全てを把握しなければならないし、どこの問題も茂が解決しなければならない。開催まで運んでくるのも精一杯のことだった。


 「でもよかったのか、茂。戦火と皇帝のぼっちゃん後押しして」


 「……何のことでしょう、連夜さん。良いに決まってるじゃないですか、ぼくがこのギルドにお世話になる前から決まっていたことですし、戦火や驟雨たちだってそれを望んでいるんですよ」


 分かっている連夜が言っているのはそういうことじゃない。茂の戦火に対する恋愛感情について聞いているのだろう。それでも、茂は二人を祝福しようと決めていた。それこそ、二人が許婚の関係になった時から。


 「やっぱり、何のことだか分かりませんね」


 「あっそ。そうだ、茂。豪勢な仕事をしてる最中に悪いんだけど、もう一回結婚式の仕事しねぇ?」


 「結婚式の仕事ですか? 今回は露店を出したりパーティに大量の食料が必要だったから哀歌茂が関わりましたが、そこまで大規模な結婚式の予定なんて無いでしょう?」


 賢者の一族の結婚式ぐらいでなければ街中大騒ぎとは行かないだろう。


 「いやなに、そこまでじゃないんだけどそこらへんの会社に相談行く気にもならねーって奴らの式なんだよ。身内だけでいいんだ、客も。でも身内でも何でも呼ぶ以上はそれなりの品を揃えたい、って花嫁がうるさくてね?」


 「そ、そうですか……」


 一体誰のことなのだろうと茂は首を傾げる。もしかしてキセトと亜里沙が式をあげるのだろうか。あの二人は最近になってやっと落ち着いたと聞く。息子も居る手前、未婚の両親では何かと不便なこともあるだろう。籍を入れて式もあげて本格的に羅沙に腰を下ろすのかもしれない。

 茂もそれには賛成だ。そしてあの二人ならあまり大々的な式にしたくないというのも、それでもしっかしりた品を揃えたいというのも分かる。哀歌茂の名は掲げていなくてもウェディングプランナーの仕事をしている部門も哀歌茂の指揮下にあったはずだ。


 「分かりました。戦火と滋の式が終わった後になりますが、その仕事、全力でさせていただきます」


 「ん。頼むわ。オレが頼んだって秘密な?」


 「秘密ですと話を切り出せませんが……。相談もしなければなりませんし」


 流石に当人たちとの相談を全くしないというわけにもいかないだろう。だからといって茂から「いいプランナーと知り合いなんです」と切り出すのもおかしな話だ。

 連夜はしばらく首をかしげていたが、あーあー、と何かに気づいてうめき声を上げた。何かをどう言うべきか悩んでいるようで、しばらく同じうめきを繰り返す。

 咳払いをした連夜は照れくさそうにしていた。連夜にしては珍しく顔を真っ赤にしている。


 「……あー、茂。たぶん勘違いしてる。相談は全部オレでいい。頼んだのは、オレの式だ」


 「えっ!? え、えぇ!??」


 「頼むぜ。せっかくオレにとって最高の嫁なんだから、最高の式にしてくれ」


 それを言い切るとそそくさと、じゃーな、と一言置いて連夜は食堂を出て行った。後ろから見ても分かるほど耳が赤い。


 「連夜さん……、誰と結婚するんだろう」


 しばらくギルドを離れていた茂の感想は、コレが限界だった。


 茂は戦火が好き。でも驟雨も好き。戦火への好きは恋愛感情だしそれは自覚してたけど、友人としても好きだから。恋愛は失恋でおしまい。あとは友人として二人を応援してあげたい茂。

 んで、そんな茂を見てた連夜だって失恋したことある人なので、それでいいのかな~と見守ってます。自分の失恋は想いも通じてたけど立場が邪魔だっただけだ。連夜と相手は想い合ったままだから踏ん切りがついたんだよ。茂はそうじゃないからなぁ~って勝手に連夜が心配してた。茂自身はそれで吹っ切れてる。

 

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