その1:いつもと同じ朝
シェラフィール=ファインドイット――シェラの朝は早い。いや、正確には最近になって早くなってしまったのだ。
傭兵としての仕事をしている頃は、仕事の都合上早起きすることはあった。だがそれはあくまでたまにであり、毎日ではない。
シェラが起きるのは太陽が地平線にようやく頭を覗かせる時間帯だ。
あくびまじりにベッドから起き上がると、乱雑に入り乱れる緑色の髪をそのままに着替えをする。ここも傭兵時代とは違い、鎧と剣を身につけるわけではなく白いブラウスに紺のジーパンという普段着である。
何度も命を守ってくれた、銀の胸当てと手にフィットする使い慣れたツーハンデットソードは、ハンターたちと一緒にサイクロプスを相手にしてから、いっさい着用していない。そのまま部屋の隅へとおしやられて、ほこりをかぶりつつ主をにらみつけていた。
「悪いね……」
謝りながらシェラはほこりを払い、近場にあったタオルをほこりよけにとかけてやる。代わりに室内に干してあったエプロンをつかむと、部屋から外に出た。目的地はもちろん、就業地であるオートエーガンである。
シェラの朝はいつも早い――だが、ニオの朝はもっと早い。
シェラがオートエーガンに入ると、いつもニオが笑顔で迎えてくれる。その頃になるとニオの額には粒状の汗が吹き出しているのだから、相当早い時間から準備をしているのだろう。
本来ならシェラもその時間帯から、働かなければならないのだろう。だがニオは今の時間帯でいいと言ってくれている。元々毎日のように一人で準備をしていたのだから、これでも相当助かっているとも。
オートエーガンの裏口までシェラが足を運ぶと、両頬を両手で叩きつける。眠気覚ましと仕事に対して気合を入れるための、シェラの習慣だった。
「おはよう、ニオ!」
元気な声で挨拶しながら、シェラがオートエーガンの中へとはいる。だが、返ってきた返事はいつもと違っていた。