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壊しつながり

掲載日:2026/05/07

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 なぜ、ものをとっておこうとするのか。

 以前、友達にそう尋ねられたことがある。彼はどうもこのごろ、断捨離を心掛けるようになったらしく、身辺をすっきりさせ始めたようだ。

 それ自体は、まあ好きにすればいいと思う。ものがなくなれば、そのぶん意識を奪われる機会が少なくなり、心にゆとりがもてるようになる。これまで気が回らなかったものに回るようになる……効果的だろうな。

 けれども、自分がやっているからって、相手に「お前もしないの~」と押し付けてくるのは勘弁願いたい。こちらはそちらと完全同位体というわけじゃないから、善意100パーセントだとしても、うっとおしく思ってしまうことがある。

 僕がものを取っておくのは、思い出の強さもあるが、同時に夢や願望を忘れないためでもあるな。

 写真などのアルバム以外に、旅行先のしおりとかパンフレットのたぐいは、結構大事に保管している。いずれ、このルーティンじみた生活から解放されたときに、どこかへ出かけたいと思い続けるためにね。

 しかし、それはあくまで主観的なものだ。もっと広い、世界全体で見たならばどのような役目があることか。

 以前にいとこから聞いた話なんだけど、耳へ入れてみないかい?


 いとこはよく物をなくしたり、壊したりしてしまうタチらしい。

 親戚同士で顔を合わせるときは、そのようなそそうはしないんだが、いざ自分の家の中だと様々な故障に見舞われる。

 自分の気づいていない間に、足で踏んづけて壊してしまうなどは代表的。今朝、ペン立てへ差したはずのシャープペンシルを失くし、一息つこうとコーヒーを入れたカップは、その取っ手がぽっきり取れる。

 触れた瞬間に、機械がボンと爆発するとかのレベルまではいかないんだけどね。とにかく、ものの最期に立ち会ったり、立ち会えなかったりが、半端じゃない頻度で起こるのだとか。

 先に断捨離の話をしたが、そいつはほとんどマニュアル操作。自分であーするか、こーするかと考えながら行うものじゃないか?

 でも、いとこの場合はオート断捨離。あちらからどんどんと片付けられていく。これが要らないものならまだしも、要るものでさえもお構いなしだから臨時支出に青息吐息となることも。

 いとこ自身も、これには辟易しかけていたそうで。よそではそのような気配はみじんも出さないが、家ではほとほと疲れ切っていたとか。

 ものの扱い自体は丁寧に行うよう心掛けている。なのに、なぜか自分はトドメを刺す側、あるいは死に目にも立ち会えない貧乏くじを引かされていく。


 ――なんで、こうもひどい目に遭わされなきゃいけないんだ? 自分ばっかり?


 心の中で何度ぼやいても、誰も答えてはくれない。

 使い物にならなくなるものたちを片付けながら、ため息をつくこと数えられないほどだったとか。


 そのいとこが、不思議な体験をしたのが中学生にあがったばかりのときだったらしい。

 日曜日の午前中。日ごろの睡眠不足を解消しようと、目覚まし時計のアラームはかけないまま、眠れるところまで眠ろうと思ったらしい。夜更かししたい気持ちをぐっとこらえて、午後10時には床へ入った。

 しかし、いざ目覚めてみると、いまだ外は暗い。時計を見れば午前2時ときたものだ。

 これはさすがに二度寝のときだろ……と、あらためて掛け布団を肩まで掛けようとしたところで。

 ビリッ、と布を破ったと思しき音がして、一瞬いとこは固まってしまう。この手の破壊音に敏感になりすぎたところもあった。

 すぐさま明かりをつけてみる。掛け布団のうち、一番上はファスナーがついているカバー、その中へ本命の布団を入れる格好になっていた。そのカバーのファスナーとは反対にあたり側面が数十センチ、見事に裂けていたんだ。

 カバーにいくらかゆとりがあったとはいえ、ほぼ割腹状態。ややもすると、臓腑がわりの布団がちらちらと顔をのぞかせる。

 また面倒ごとか……と一人ごちながらも、いまはそれどころじゃない。寝たい。

 やむなく傷はそのままにして、横になったいとこだけれども。


 眠れない。

 単純に暑苦しいなどではなかった。目を閉じて少しすると、自分の身体の上でもぞもぞと何かがうごめく気配がする。

 身体をふるわせると、ぴたりと動きが止まる。明かりをつけて、あらためてみても先の破れ目以上の変化はない。

 首をかしげながら横になり、また察知して起き直すこと3回ほど。

 思ったよりも時間は経っており、3度めにはすでに時計は4時近くを指している。

 今度こそは正体をつかむと、いとこは極力胴体を動かさず、腕のみをそっと振り上げた。

 長年、蚊を仕留めるために鍛えた技だ。ステルスキルをかますための我流戦術。今回の相手にも通じたらしく、またもぞもぞと動いた瞬間を手でとらえることができたはず……なのだけども。


 布団越しに叩くや、感じたのは自らの二の足への激痛。

 たまらず、起き上がる。今度は布団の様子を見るのみならず、めくって足の様子もうかがってみた。

 ひとめで、足が変な方向を向いていると分かる。いま自分は内また気味に足をひねっているのだけど、両足首の先だけは逆に「八」の字を示すように開いている。痛みの源もその足首あたりからで、ちょうど自分がぶっ叩いたところだ。


 ――まさか、自分が殴って骨を折ったとかか? そんなバカな!


 いくら壊し屋だからって、自分まで壊す奴がいるか……などと思っていると。

 ひときわ、強い痛みが走る。思わず目をつむって、耐える姿勢を取ってしまうほどの。

 見えない視界の中、いとこは痛む足にぎゅっと上から押さえつけられるような圧を感じたと話していた。痛みとは別物と感知できるくらい、はっきりとしたもので。

 やがて痛みが引いていったとき、そうっと目を開けてみると、あの折れていた両足は元通りになっていたのだそうだ。足の先は向きに合致しているし、動かしたりねじったりしても痛みはまったくない。

 けれども、ひっぺがした状態から戻した布団は、カバー内側の本体部分の半分がきれいに失われていたらしい。カットされたケーキのような姿となった布団の片割れを探したけれど、いとこの部屋からも、どこからも見つからずじまいだったらしい。

 これまでなくしたものの末路と同じように。


 壊す。なくす。

 それ単体の話じゃなく、異なるもの同士で結びついている部分があるのかもしれない。

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