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短剣使い——ある緑髪の男  作者: 一陽来復


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第二章『出発』(3)

 ベルムンドを討伐後、再び俺たちはルナリアシティへ向かって歩き始めた。


「メナ、それでベルモンドって一体なんなんだ?」


「えっとね。ワイバーンは分かる?」


「ああ。約五千万年前に絶滅したモンスターだろう?」


「そう。そのワイバーンが進化した姿がベルモンドよ。ワイバーンは絶滅したけど、ベルモンドは現在も存在しているの」


「へえ〜。初めて聞いたよ」


 メナの博識さには、いつも脱帽させられる。以前、彼女の母から聞いた話では、メナは子どもの頃から外で遊ぶことよりも、本や図鑑を読むのが好きだったらしい。だから知識が豊富なのだろう。


「二人とも、もう少し歩けば“カメリア村”っていう村があるんだ。そこで昼食にしようね」


 エイテルが地図を見ながらそう言った。


「やっと昼食か……!もう空腹で倒れそうだったから嬉しいよ」


「ザブル君、朝食は食べてないのかい?」


「食パン一枚だけ食べてきたよ。長時間歩くのに満腹状態じゃマズいと思って、そんなに食べなかったんだ」


***


「ここがカメリア村だよ」

 

 十五分後、俺たちは無事にカメリア村に到着した。

 村の周りは沢山の木で囲われており、まるで外界から切り離されたかのような静けさに包まれていた。


「空気が美味いなぁ。メナもそう思うだろう?」


 俺がそう言いながら左を振り向くと、メナはなぜか目元に右手を当ててじっと立っていた。俺は不思議そうに彼女の顔を見つめる。

(まさか……薬の効果が切れたんじゃないか!?)


 俺は、彼女の右手を目元から退けると、やはり彼女は虚ろな目をしていた。彼女は、今にも倒れそうだった。きっと俺たちに迷惑をかけると思って堪えているのだろう。


「エイテル!薬の効果が切れたみたいだ!」


「本当かい!?今すぐ薬を飲ませよう!」


 俺は、メナの持っている鞄から錠剤を一つ取り出す。エイテルは彼女の水筒を開けた。

 そして俺は彼女に「口を開けてくれ」と言い、錠剤を口に入れ、その直後、エイテルが水筒の水を少しずつ彼女に飲ませた。


「薬は飲ませたし、俺たちは昼食にしよう。メナ、すまないが夕食まで待ってくれよ。昼食後にその薬を飲んだら効果がなくなるんだ」

 

 そう。例の精神病の薬は、本当は昼食後に飲まなくてはならない。ノワちゃん曰く、昼食を取らずに飲むのは良いが、昼食後に飲んでしまうと薬の効果が消えてしまうらしい。

 俺はメナをおぶり、エイテルと近くにある食事ができる場所を探し始めた。

 

「……ごめん、二人とも。迷惑かけちゃって」


 メナが小さな声でそう言った。俺は、彼女が協力したいと思ってくれただけでありがたいと思っている。そんな彼女に罪悪感を感じて欲しくないと思い、「困った時はお互い様だろう?」と言って慰めてあげた。エイテルも「そうだよ」と言って彼女をフォローしてくれた。


「ん?あれ、食堂じゃないか?」


 俺は通りの先を指差し、漂ってくる温かい料理の匂いに鼻をひくりと鳴らした。建物の外にある看板に、営業中を意味する言葉が書かれていた。


「そうっぽいね。行ってみよう」


 メナをおぶった俺とエイテルは、その店に入店した。辺りを見渡すと、やはりこの店は食堂で間違いなかった。


「いらっしゃいませ。こちらのテーブル席にどうぞ」


 店員のお姉さんが俺たちを席に案内してくれた。まず、メナを奥の席に座らせ、その後に俺とエイテルは着席した。


「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください」


 そう言って、店員さんは厨房の方へ去っていった。

 そして俺は、机に置かれているメニュー表を見る。空腹なのはもちろんだが、今は『これが食べたい』というのはないため、どれにするか迷う。

 数分後、俺とエイテルが注文をしようと店員を呼ぼうとした時、入口から背中に大剣を背負った大男が入ってきた。

 あまりの貫禄に、俺とエイテルは無意識のうちに彼をじっと見ていた。すると大男はその視線に気付いたのか、俺たちの方に向かって大股で歩いてきた。


「……お前ら、どこの人間だ。この村の人間じゃないだろ」


 大男は、鋭い目つきでこちらを睨み、低い声で俺たちにそう聞く。恐怖で、「えっと……」と言った後、続きの言葉が出てこなかった。


「僕らはただの旅人ですよ。決して怪しい者ではありません」


 俺が固まっていると、エイテルが説明してくれた。エイテルは一切物怖じせず、大男の目を見てハキハキと話している。

(やっぱ、エイテルは凄いな……)


「アナタは、ここの村の方ですか?」


 エイテルは大男に質問する。すると、大男は右手で背中をかきながら答える。


「ああそうだ。生まれも育ちもカメリア村だ」


「そうなんですね。あ、良かったら、僕の横の席座りませんか?」


 エイテルがそう言うと、俺は彼に小声で「ちょっと何言ってるんだ!こんな怖い男と食事って……」と言った。すると今度はエイテルが「大丈夫。何かあったら僕が対処するから」と言って、大男を横の席に座らせた。


「気が利くなぁ、あんちゃん。名前は?」


「エイテル・ルーメンです」


「俺の名はアレロン・ガヴェラだ。んで、そっちの二人は」


「えっと……俺がザブル・ヴァーノンで、この子がメナ・リュミエールです」


 俺がそう言うと、大男はなぜか、メナの顔を凝視している。俺は何が起きても良いように、短剣が入っているポケットに手を入れていた。

 すると、男がメナの顔を見たまま俺とエイテルに聞く。

 

「……この子、”デッドエモーション”だろ?」


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