第二章『出発』(2)
そして、チームにメナが加わった。彼女の表情からは、確かな覚悟がにじみ出ていた。
「そうだ。一応自己紹介しておこうか。僕の名はエイテル・ルーメン。年齢は、ザブル君と同じ十八だよ」
「エイテルさん、よろしくお願いします。私はメナ・リュミエールと申します。えっと、この間十六歳になりました」
「よろしくね、メナちゃん」
エイテルとメナは、早くも打ち解けていた。その二人の姿はまるで、古くからの友人同士で話しているかのようだった。
「なあエイテル。今日はどこまで行くつもりだ?一日じゃ流石にルナリアシティには着かないだろう?」
「今日は、”ラードゥガタウン”で一泊しようと思ってるよ」
ラードゥガタウン。その名を耳にした瞬間、俺とメナの背筋に悪寒が走った。思わず視線を交わす。なぜならそこは、俺とメナが生まれ育った故郷だからだ。
「二人ともどうしたんだい?何か様子が変だけど」
「……そこは、俺とメナの生まれ育った故郷なんだ」
「そうなのかい?それなら二人の両親に挨拶でも……」
俺は、俯きながらエイテルに言った。
「俺とメナの両親は、三年前に亡くなったよ。とある殺人鬼に殺されたんだ」
「……そうだったんだね。ごめんね、嫌な記憶を思い出させてしまって」
そして十秒ほどの沈黙が続いた。俺は、この気まずい空気をどうにかしようと考えた。
(うーん……何か良い話題は……)
「エイテルは、今付き合ってる人とかいないのか?アンタはルックスも性格も良いし、簡単にできそうだけど」
色々考えた結果、この空気を変えられるのは恋愛の話題しかないと思った。それに、これは前から気になっていたから丁度良い。
「今はいないよ。去年まではいたんだけどね」
エイテルは悲しそうな顔をして俯いてしまった。
(ま、まずい。また気まずい空気に……何か話を続けないと)
「エイテルさん。前にいた彼女さんとはどうして別れてしまったんですか?」
俺が次の質問を考えている間に、メナが話をつないでくれた。ナイスだ、メナ!!!
「彼女は僕に、もっと自分を見て欲しかったらしい。僕はこう見えて意外とシャイでね。彼女からデートに誘われたらもちろん行ったけど、僕から誘うなんて事は恥ずかしくて出来なかったんだ」
「なるほど……でも確かに好きな人がいたら、その人にデートに誘って欲しい気持ちは分かります」
「本当に不甲斐ないよ、僕は」
彼がそう言い終えた、その瞬間だった。
空を切り裂くような轟音とともに、巨大なモンスターが俺たちの目の前へと降り立った。
着地と同時に大地が悲鳴を上げ、凄まじい地響きに、俺たちは思わず体勢を崩した。
そのモンスターは俺たちを睨みつけ、威嚇するように吠えた。
「グァァァァァァァァ!!!!!」
「な、なんだこいつは!?」
俺はあまりの驚きに言葉を失ってしまった。今まで見てきたモンスターで、ここまでのサイズのやつは見たことがない。見た目は、この世界でかつて存在していたモンスターの『ワイバーン』によく似ている。
「ベルムンド……!!!どうしてこんな所に!?」
「何!?メナ、こいつを知ってるのか!?」
「ええ!でも説明は後!今はこいつを倒さないと!!!」
俺はとメナは武器を構えようとすると、エイテルは俺とメナの前に立ち、「ここは僕に任せて」と言って、背中から二本の剣を同時に取り出した。
「お、おい!こんな大きいやつ相手に一人でやる気かよ!?」
「そうですよ!ベルムンド相手に一人は流石に無茶です!」
だが、彼は一切恐れることなくベルムンドの方へ向かっていく。その後ろ姿は、男の俺でも惚れてしまいそうになるくらいかっこよかった。
「勝負だよ。ベルムンド」
そう言い残すと、エイテルは高速で走り出した。そして高く跳び上がり、思い切り右手の刀を振り下ろす。
すると次の瞬間、ベルムンドの右の翼は綺麗に斬れていた。ベルムンドは相当な痛みを感じたのか、その場でじたばたしている。
「ゥググガガガァァァ……!!!」
「お次はこっち!!!」
エイテルは、同じように左の翼を斬り落とした。ベルムンドは目を充血させ、エイテルの顔をじっと見つめる。そして、口を大きく開け、全速力でエイテルの方へ走る。
ベルムンドはエイテルを目掛けて、口から思い切り火を吐く。だがエイテルは、すかさず横に避ける。その後また勢いよく跳び上がり、二本の剣をベルムンドの頭頂部に突き刺した。
「ガガゥゥァァァァ……」
ベルムンドは横にぐったりと倒れ、動かなくなった。エイテルはベルムンドの首元に立ったまま、日本の剣を背中に閉まった。
俺とメナは、いとも容易くベルムンドを倒した事に唖然としていた。
「す、すごいな……アンタ」
「あのベルムンドをこんな無傷かつこんな短時間で……」
エイテルは、やり切ったという顔でこちらへ戻ってきた。彼は無傷かつ、返り血すらついていなかった。
「ざっとこんなもんだね」
彼がそう言ってニコッと笑う。その何気ない表情が、かえって恐ろしく、俺とメナは無意識のうちに何歩か後退していた。




