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短剣使い——ある緑髪の男  作者: 一陽来復


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第一章『謎の精神病』(3)

「二十万ミル以内の丈夫なやつが欲しいんですが・・・」


「二十万ミル以内なら沢山あるさ。例えば、これなんかどうだ?こいつはウチで一番売れてるんだがな、かなり丈夫って客からは評判なんだ。ちなみに五万ミルだ」


「なるほど・・・一旦他のやつも見てみます」


「どんどん見てってな。何か教えて欲しいことがあったら言ってくれよ」


(さっきのもアリっちゃアリだけど、正直デザインがあまり好みじゃないんだよな・・・)

 短剣コーナーを一通り眺め尽くした、その時だった。

 俺の目に、理想の一本が飛び込んできた。持ち手は、まるで俺自身の髪を写したかのような深い緑。そして刃は、研ぎ澄まされた銀色の光を放っている。


「おう、あんちゃん。それが気に入ったか?お目が高いな。値段は十六万ミルと少し高いんだがな、斬撃と刺突のどっちにも優れていて、耐久性も抜群なんだ。どうだ、買うかい?」


「これ……買います!」


「毎度あり!」


 元々、八万ミルくらいのやつを買おうと思っていたので少しばかり懐は痛いが、気に入ったものが買えて嬉しい。

(家に帰る前に、心配だしちょっとメナの家に寄ってくか……)


***


「メナ、いるか?」


 武器屋の後、軽く買い物をしてメナの家に立ち寄った。

 三十秒くらい経った後、ゆっくりとドアが開く。


「……ザブル、どうしたの?」


「ちょっと上がってもいいか?これ、食材買ってきてやったから何か作ってやる。食欲ないかもしれないけど、何か食べないとマズいだろう?」


「うん。ありがとう」


 そしてメナの家に上がった。彼女はリビングのソファに横になり、俺はキッチンに直行し、買ってきたものを袋から取り出す。


「メナ、米使わせてもらうぞー」


 俺がそう言うと、メナは小さい声で「うん」と言った。あまりにも辛そうな彼女を見て、俺は胸が苦しくなった。

(可哀想に……代われるものなら代わってあげたいよ……)

 まず米を炊き、その後に買ってきた諸々を調理する。正直料理はあまり得意ではないが、俺でもそれなりに作れる献立にした。メナの口に合うと良いんだが……


「できたぞ。残しても良いから少しでも食べな」


「ありがとうザブル。すごく嬉しいわ」


 メナは、俺の作った料理を美味しそうに食べてくれた。彼女の少しでも喜ぶ顔が見られて、俺は万々歳だった。

(そうだ。三日後にこの町を出る事……言わないとな)

 彼女には、今朝分かったことから、三日後に町を出ると決めた理由まで、すべてを打ち明けた。


「まさか……モンスターのボスの仕業だったなんて……」


「ああ。だから俺はエイテルと、そいつを倒しに行く事にした」


「すみませーん!誰かいますか?」


 玄関のドアの向こうから、ノック音と共に、少女の大きな声が聞こえた。メナに「俺が出るよ」と言い、玄関へ向かう。

(……待てよ。今の声って……)

 ドアを開けた瞬間、そこに立っていたのはノワだった。右手には、先ほどまで抱えていたあの袋が握られている。だが不思議なことに、さっき目にした時よりも、その袋の膨らみは明らかに小さくなっていた。


「あれ、ザブルさんじゃないですか!お家ここだったんですね!」


「ノワちゃん……!いや、ここは俺の友人の家だよ。その友人が体調が悪いから代わりに出たんだ。それで、俺の友人に何か用か?」


 俺がそう言うと、彼女は右手の袋から何かを取り出そうとする。ちらっと中を見ると、そこには何故か大量の錠剤が入っていた。


「ノ……ノワちゃん?その大量の錠剤は何だい?」


 中に入っていたものが意外すぎて少し引いてしまった。


「その友人の方、もしかして例の精神病になってたりしますか?」


「実はそうなんだ……って、もしかしてその薬って……?」


「はい。私の町にいるメディカルドクターが緊急で作った、例の精神病に効く薬です」


「ほ、本当かい!?」


 俺は一刻も早くその薬をメナに飲ませたくて仕方がなかった。俺はもう、彼女のあんな辛そうな姿はもう見たくない。


「ただ、これを飲んだからと言って、完治することはありません。この薬はあくまで鬱の症状を和らげるための一時的なものです」


「そ、そうだよね……」


 薬を飲んで完治は確かにありえない。なぜなら、この精神病の元凶はモンスターのボスだ。そいつを倒さない限り完治しないというのは何となく分かる。


「今、町の人たちにこの薬を無料で配っているんです。一人につき十日分。ザブルさんも、こちらをご友人にお渡しください。服用は一日一回、昼食後にお願いしますね」


「ありがとう、ノワちゃん。助かるよ。ところで、エイテルにはもう会えたのかい?」


「ええ。宿の近くにある広場のベンチで仮眠を取っていました」


「そっか。あ、まだ他にも渡せてない人いるよね。時間取ってごめん。頑張ってね、ノワちゃん」


「はい!ありがとうございます!」


 ノワちゃんに手を振り、そっとドアを閉める。そして急いでリビングへ向かった。


「メナ!エイテルの妹のノワちゃんが、例の精神病に効く薬をくれたぞ!」


「本当に?」


「マジだ。今水を持ってくるから待っててくれ」


 キッチンに行き、コップに水を注ぐ。そして十錠の錠剤から一錠取り出し、コップと一緒にメナに渡した。


「薬が効いてくるまで少し時間はかかると思うから、それまで少し我慢だね」


「そうね。色々とありがとう、ザブル。この借り、いつか返さなきゃね」


「そんなもの要らないよ。困った時はお互い様だろう?」


「ザブルって、案外優しいわね」


 俺は「う、うるさいな……」と、照れを隠しきれないまま吐き捨てるように言い、そそくさと彼女の食後の食器を手に取ってキッチンへと運んだ。

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