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「この素晴らしき世界」- What a Wonderful World -

---< プロローグ >---


わたくし達、人間は生まれながらに自由で、

自分で考え、自分でするべき事を見出し

自分でそれ決め、行う事が出来るのですわ。


他人や社会がその権力、暴力に訴えたとしても

自由な人間の平和への願いを止める事は、

決して出来ないのですわ。


わたくし達は、世界の平和を願い、世界の均衡を図り

それゆえに、命と息子ちゃまを奪われかけた父親を

息子ちゃまの待つ自由な世界に送り出すのですわ。


さあ、みなさま、戦闘のお時間ですわよ。


死か、それとも自由か、

神よ彼に祝福を賜りますように。


---< ドレスデン 2日前 >---


ドレスデン、マーケットから

焼きたての菓子やグリューワイン(ホットワイン)、

焼き栗、シナモンなどのスパイスの

おいしそうな香りが漂い、エルベ川のせせらぎと

聖母教会や歌劇場、宮殿などから

音楽や文化が育くんだ美しい音の響きが聞こえる

東西の交通の要衝ですわ。


特にドレスデン(東ドイツ)からプラハ(チェコ)

プラハ(チェコ)からウィーン(オーストリア)

というルートは、安全に西側の国に亡命する

重要なルートなのですわ。


その日、あるミッションのバックアップチームの

リーダーとしてドレスデンのバスターミナルで

CIAのミッションを見守っていましたの。


わたくしが、異変に気が付いたのは、見慣れたトラバントでなく

ソ連製のラーダが3台現れ、Mr.スミス(警護対象のコードネーム)に

近づいたのが見てとれましたわ。


CIAチームは、Mr.スミス・Mrs.スミス・Master.スミスを

別方向に移動させ退避しようと行動を始めましたわ。


メインプランが潰えて、バックアッププランが

開始されることとなり、わたくしのチームは

計画通りMr.スミスを車に乗せ、その場を離脱して、

セーフハウスに入り、連絡を待ちましたの。


Mrs.スミス・Master.スミスは、別々の

バックアップチームが車に乗せ

その場から移動したのまでは見ましたわ。


Mr.スミスは、かなりいら立っていて

Mrs.スミス・Master.スミスの安否を

気遣い、二人がそろわなければ、

西側に行かないと言い出して困りましたわ。


今は、ともかく、連絡員からの情報を

待つしかないと彼をなだめて

落ち着かせ、時間を待つ知ましたわ。


プラン自体は、よくある何でもない

失敗の可能性のないミッションなので

Mr.スミスの亡命は、情報が漏れていたと

考えるべきでしたわ。


ただの亡命ではない、

わたくしの直感はそう告げ、

Mr.スミスは西側のスパイで、

シュタージに監視されてた、

と考えるのが正しいと判断しましたわ。


一筋縄ではいかない、予感がしましたわ。


予定の連絡時間になり、現地の連絡員が

当座の食料と必要品と情報を携えて

やってききましたわ。


情報は、連絡員には知らされず

必要品に隠されて届きましたわ。


Master.スミスは何とか脱出できたわ。

Mrs.スミスのチームは不明で、

捕らえられた可能性があると記されていましたわ。


そして、わたくしにはMr.スミスを

Cプランで西側に送るように指示がありましたわ。


Cプランとは、東ベルリンに行き、

現地に用意されている、秘密のトンネルを

通って西ベルリンに脱出する計画ですわ。


今は、スピードだけがわたくし達を

助けてくれるのですわ。


我々は、今のセーフハウスを出て

エルベ川のせせらぎが聞こえる位に近い

セーフハウスに移動したのですわ。


---< Mr.スミス >---


わたくしは、今後のプランを説明する為に

Mr.スミスと二人で話をしたのですわ


Mr.スミスは、家族そろって西側に行くと

頑なに話すので、Aプランが失敗した今

貴方は、シュタージに追われる身なので

家族がそろうまで個々に留まるのは、

命の危険があると説明したのですわ。


すると彼は語り始めたのですわ。


Mr.スミスは、ドレスデンの研究所の

研究員で、ソ連の原子爆弾製造に、

必要なウラン濃縮をする遠心分離機の

開発と改良にかかわっていて、

彼のもつ遠心分離機にかかわる情報は

ソ連の原爆開発と製造の進捗にかかわる

重要な情報なのですわ。


Mr.スミスは、原子爆弾が世界の均衡を

保つとは思わない原子爆弾は世界に必要ない。


アメリカは、原子爆弾を

日本に落とすべきではなかったと

彼は言ったのですわ


シュタージが彼の亡命を

阻止したい理由が理解出来ましたわ。


わたくしは聞いてみたのです、

なんでMr.スミスは、祖国を裏切り

その情報を西側に無渡すのかを

聞いてみたかったのですわ。


Mr.スミスは、語り始めました

彼は、独ソ戦争中に生まれたのですわ。

そして、平和とはかけがえのない物であると

思っているのですわ。


平和の為に、「原子爆弾」はいらない

アメリカはソ連の原子爆弾の情報を得れば

戦わなくて良いと知る事が出来るというのです


「キューバ危機」の時GRUの職員の

オレグ・ペンコフスキーがアメリカの

スパイになって、ソビエトの核兵器は

西側が思っている脅威ではない事を

知らせる事で最後の世界大戦に

発展しなかったのですわ。


わたくしは、Mr.スミスが心から

平和を求めていて家族を愛しているのを

確信したのですわ。


わたくしは、すぐにドレスデンを脱出して

西ベルリンに移動することにしたのですわ。



---< 東ベルリン 前夜 >---

わたくしたちは、東ベルリンのセーフハウスに

到着して、情報と指令を受け取りましたわ。


Mr.スミスと話をしましたわ。


ご子息はすでにベルリンの壁を越え

西ベルリンにいますわ。


そして、Mr.スミスあなたを密告したのは、

Mrs.スミスです。

彼女はシュタージの職員だったそうですわ。


Mr.スミスは、わたくし達のプランを受け入れて、

西ベルリンに行き、息子ちゃまに合う

決心を固めたのですわ。


---< 桃園恵子の思い① >---


わたくしも決めましたわ。


CIAもMI6も信じられないですわ。


彼らは、この世界を平和にしたいと願った男を

シュタージに奪われる可能性から

わたくしに殺せと指示したのです。


全力を尽くして、彼を「西側に連れてこい」

では無く「消せ」というのですわ。


わたくしは、あきらめの悪い女なのです。

出来ない事かもしれないですわ。


しかし、わたくしは、死力を尽くします。


わたくしは全力を尽くしMr.スミスを

息子ちゃまが待つ、西ベルリンに

送り届けるのですわ。


わたくしは、Mr.スミスを生きて

西側に届ける決意を固めたのですわ


---< 東ベルリン 当夜 >---


息を詰めた様な静けさの中で

遠くに聞こえる、Sバーンのブレーキ音


石炭を燃やした、不快で酸っぱい匂い


風に乗り西側から聞こえる、ラジオから流れる

ロックな音楽ですわね


---< 桃園恵子の思い② >---


わたくしが、NATO、MI6、CIAを通して

特別に手に入れて、東ベルリンにストックした

装備をすべて使いつくします。


わたくし達には、鋼鉄で出来ました

重い頼もしい相棒がいるのですわ。


ベレッタ93R:

イタリアでつ作られました

対テロリズム用マシンピストル。


見た目はピストル、みたいですけど、

3バースト機能を持ち、一度に3発をいっぺんに

相手に打ち込めるのですわ。


KTW弾:

アメリカにはですわね、車のボディを貫通させる

目的で作られた、9㍉パラベラム弾を

テフロンでコーティングした

ローエンフォースメントで使用する

弾もございますのよ。


きっと相手はですね、ソビエトの方々が開発した

ケブラー製の防弾ベストを着ている

かた達もいらっしゃるでしょうけど

貫通しますわよ。


暗視ゴーグル:

少数のわたくしたちが、夜間の戦闘を制するには

的確に敵を攻撃する為に暗視ゴーグルは欠かせない

装備ですわね


シュタージの追撃だけなら

少しは排除して脱出できるかもしれませんね。


けれども、かならず、人民警察機動隊 (VPB)と

人民警察機動隊 (VPB)が出てくるに違いありませんね


数も装備もかないませんわね。


でも、Mr.スミスがトンネルを抜けて、

西側に出るまでの時間は作ることが

きっとできますわ


---< 東ベルリン トンネルのある建物にに続く道 >---


人民警察機動隊 (VPB):

ドイツ人民警察の即応部隊で、デモ鎮圧や暴動対応など、

国内の治安維持が主な役割ですわ。


「動き在りません。」


ドイツ民主共和国国境警備隊 (Grenztruppen der DDR):

ベルリンの壁を含む国境全域で、東ドイツからの脱出を防ぐ

(発砲も含む)ことが任務ですわ。


「動き在りません。」


シュタージ (国家保安省):

政治的弾圧や監視を行う秘密警察で、

表立った治安部隊ではありませんが、

体制維持には不可欠な存在ですわ。


「追跡してくるものがいます。」


追跡してくるのは、シュタージの、

特殊作戦部隊、追跡・暗殺をする、

実行部隊に違いないですわ。


東ベルリンで、大規模な銃撃戦となれば

東西の戦争の火種になりかねないのございますわ。


西側の諸国と各情報部・作戦部も、

私達の事を切り捨てにするに

違いありませんですわね。


わたくしたちは、このミッションを最後に

東ドイツから手を引きますわ。


今は、只、スピードだけがわたくしたちと

Mr.スミスを西側に生還させてくれる、

鍵となる事ですわね


さあ、みなさま、戦闘のお時間ですわよ。


死か、それとも自由か、

神よ彼に祝福を賜りますように。


---< 東ベルリン トンネルのある建物付近 >---


戦闘は一瞬で決まりますわ


夜間の戦闘のかなめは、

敵の眼をつぶす事なのですわ。


フラッシュ・ボムが投げ込まれ、

あたり一面を閃光が覆いましたわ。


タタタッ タタタッ タタタッ タタタッ タタタッ


短いバーストの連続とマズルフラッシュ、

そして、重みのあるやわらかい物が、

石畳に落ちる音が聞こえましたわ。


しばしの静寂、動く音は無し、

素早く、静かに、建物のドアを破壊し、

なかに侵入して、地下に降りる、

隠し階段を下り、西側に続くトンネルに、

たどり着きましたわ


---< 東ベルリン トンネル前 >---


Mr.スミスこのトンネルを抜ければ、

息子ちゃまに会えますわ。


振り返らず行くのですわ。


わたくしたちは、ここで待ち伏せしますわ。


彼らは、また来ますわ。


その時は、彼らの武装は、

マカロフPM・ピストル等では無く、

MPi-KM小銃(ソ連のAKMの東ドイツ版)で、

私達のケブラー製ボディアーマーを、

易々と貫通するのですわ。


わたくし達は、ここでくい止めますわ。


Mr.スミスは、トンネルに入り、

西側に進んでいったのですわ。


少しの静寂、どこかで水の滴る音が聞こえましたわ


暗闇の中で、時間が緩やかに過ぎて行き、

このまま何もなければ良いのにと思った時、

重い大きな足音と、仕掛けておいた、

ブービートラップのクレイモアが爆発して

音による情報が少し聞こえづらくなった時、

MPi-KM小銃の大きな銃撃音が響いたのですわ



急追する、シュタージの暗殺チーム、

もうここでくい止めることは出来ませんわ


次は、手榴弾を投げ込んでくる、

わたくしたちは速やかにトンネルを抜け、

西側の出口まで後退したのですわ


手榴弾の爆発、重い足音、MPi-KM小銃の大きな銃撃音

彼らは、トンネルに入ったようですわ。


彼らも、こんな強襲作戦を想像していなかったでしょう、

私達も、彼らがトンネルに入ってくるとは、

思っていませんでしたわ


トンネルに白燐弾を投げ込み、銃撃を加え、

予定通り撤退したのですわ。



わたくし達は、疲れてボロボロでしたわ


けれどやり最後までやり切った


全員が生きて西側にたどり着いたのですわ


Mr.スミスもトンネルを抜け西側にたどり着いたはず


Mr.スミスと合流して素早くセーフティハウスに

移動しなければなりませんわ


これだけの事件を起こしたのだから

わたくし達は、西側からも狙われる事に

なるのですわ


わたくしは、Mr.スミスに

「西ベルリンにようこそ、

 さあ、一緒にセーフティハウスに行きますわよ。」

と声お掛けましたわ。


彼は泣いているのですわ。


そして言いました


「恵子、聞いてくれ

 ベルリン壁は消えたんだ!!

私達を隔てていたあの壁は

 自由を求めている人たちの手で

 今、破壊されてる」


わたくしも、呆然としてしまいましたわ


建物を出るとそこは異常に興奮した人々が

大声を上げ騒いでいるのですわ


人々は、それぞれの獲物を手にして

壁に打ち付け壁を壊しているですわ


ビール、ワイン、シャンパン、あらゆるお酒を

開け、グラス、ジョッキ、瓶のまま、

回し飲みをする人達がそこにいましたわ


花火を上げる人、国旗を振り喜びを伝える人達、

何処も彼処も至る所、喜びが爆発して

大騒ぎになっていますわ。


西と東が平和的に一つになったんだ

彼が願っていた事が現実になったんだ


彼は顔をくしゃくしゃにして

泣きながら言った。


「自由だ、自由だ!!」


わたしは、彼にいった

「統一おめでとう」


「自由だ! 統一だ」

「ありがとう、ありがとう」


そこに、命を懸けた仕事を

やり遂げた男の顔があった

幸せそうな彼の顔がとても素敵だ。


---< エピローグ >---


この世は何が起きるか判りませんわね。


より大きな事件の為、強襲銃撃事件は

話題にすらならず、西も東の当局も混乱し

わたくしのした事とは知られずに、

Mr.スミスを無事に西側に運び、

ミッションはコンプリートしてしまったのですわ。


東西が冷戦で対立する世界が融和する日が来るなんて

誰が思っていたでしょう、わたくしは桃園恵子、

1989年11月9日は、忘れられない日になりましたわ。

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