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森の中の生活

「ちくしょう!!」

 男は悪態をつきながら剣をふるっていた。

ルークたちを殺すことができない。

 彼らは、それぞれの武器に守られていた。

正しく言えば、精霊たちに。

 男は舌打ちすると、その場から姿を消した。

勇者と巫女の血縁は消せなかったが、アンジェの

力は封じることができたので、彼は一つは目的

を達成できたのだった。



 ルーク=ウレイアが目覚めたとき、精霊の姫

アンジェは、うずくまったまま、ぴくりとも

動かなかった。まるで死んでいるかのように。

「アンジェ!! アンジェ!! 大丈夫か!?」

 ルークが揺り動かすと、彼女はううっ、と苦しげに

呻いた。胸に手をあて、かきむしるような動作を

している。目覚める気配はなかった。

 とりあえず、ルークは彼女を、大きな木の下に

寝かせた。アンジェが倒れた後、彼女がどこからか

出したものたちは、あとかたもなく消えていたのだ。

 ビショップ=ルクウィッドも倒れていたが、こちらは

安らかな寝息が聞こえたので、放っておく。

 ビショップの姉、エレナがさらわれた際に落とした、

百花白蓮フルール・ブランの髪飾りを取り出して

ながめ、ルークは歩き出した。



 彼がいつものように素振りをしていると、ビショップが

走り寄ってきた。一旦手を止め、振り向く。

「ルーク!!」

「ああ、ビショップ。起きたのか?」

「アンジェ、どうしたの? 苦しそうで、全然起きないよ」

 ビショップの淡い緑の目に涙がたまっていた。

しゃくりあげ、彼はルークに抱きつく。

 ルークは仕方なく、剣を地面に置いて彼を抱きしめた。

「アンジェが死んだら、いなくなっちゃったらどうしよう……

。僕、やだよ、そんなの……」

「大丈夫だよ。アンジェがそんな簡単に死ぬ訳ない。あいつは、

精霊の姫さんだぜ? そんなやわじゃないよ」

「う……でも……」

「アンジェを信じろ!! アンジェは、アンジェの力はあんなやつ

になんて負けない!! そうだろ?」

 こくり、とビショップは頷いた。ごしごしと目をこすり、彼の目を

覗き込む。その目は決意に満ちていた。

「僕、ルークと一緒に訓練するよ!!  自分では強いつもりだった

……だけど、あの男には全然歯が絶たなかった」

「うん、一緒にがんばろうぜ!! でも、その前に……」

 ぐうううううっ、と二人のお腹からけたたましい音が聞こえた。

 彼らはどちらからともなく、照れて笑いながら言った。

「腹ごしらえ、だね」

「そういうことだ」

 きらきらと彼の目が輝きだしていた。楽しそうだ。

「さあっ、食料探索に出かけるぜ!! アンジェが起きたら、

おいしいもの食わせてやりたいからさ」

「る、ルーク、何でそんなに楽しそうなのさ~!!」

 ビショップのひるんだような声をしり目に、ルークは張り切って

森の中に飛び込んで行った。



 エレナ=ルクウィッドは、今日一日、親友のステラ=ワイズと

口をきいていなかった。彼女は、エレナのことを親友だなんて

思っていなかったのだ。エレナが、勝手に親友だと思っていた

だけなのだ。ステラはエレナのことを疎んでいた。

「どうした、エレナ?」

 庭番のジゼット=ブラックが不審そうな顔をしていた。

エレナは首を振ってなんでもない、と言い返す。

「ステラとなんかあったか?」

「え!?」

「口きいてないだろ?」

「ジゼット、不謹慎だよ」

 料理番の少女、ミルカ=ライニオが、怖い顔でジゼットを

睨みつけていた。ジゼットが舌を出し、言い合いになる。

 エレナは少しホッとした。彼女のことは、二人には

話せない。これは二人の問題だ。それに、告げ口を

するみたいで言いたくない。そんなことをすれば、

彼女は二度とエレナの顔も見たくなくなるだろう。

 エレナは彼女を想い、どうやって仲直りをしようか、

と考えるのだった。



 一方、ルークとビショップは、まだ食料探索

の真っ最中だった。分かれて探している。

 ルークの方は、かなりの食材を手にしていた。

きのこ数本、食べられる木の実数個を大事そうに

胸に抱きかかえている。彼は食べ物に関しては

とても詳しいのだった。

「あとは、肉か魚でもほしいかな。これじゃあ

足りないかもな」

 ぐううううっ、と再び腹の虫が鳴く。

ルークは一旦きのこなどを置くと、

流れていた川に飛び込んで魚を次々と掴んでいった。

「あ~、楽しい!! つめてえ!!」

 十匹近く捕まえると、彼は上機嫌で食料を抱えて

戻って行った。



 ビショップはさんざんな結果に終わっていた。

リスの姿をしたモンスターに、見つけた木の実を

取られたり、魚に馬鹿にされて、全然取れなかったり、

あげくのはてに、モンスターに川に投げ込まれて

ずぶぬれになったりと本当にさんざんだった。

 ルークのところに戻り、彼が海の幸山の幸を

大量に取っているのを見て、さらに打ちのめされる。

「ルーク、ごめん、全然駄目だった……」

「いいよ、誰にでも得手不得手はあるんだからさ。

ビショップは自分にできることを頑張ればいいんだよ」

「ありがとう、ルーク……」

 ビショップは、ルークが取ってきて料理した

食事をしながら、お姉ちゃんがルークを好きになった

理由、分かる気がするな、と思うのだった。

ルークの取り柄が大活躍の一作です。

エレナはまだ仲直りのスタート地点

ですね。徐々にまた仲良くしていきます。

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