表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/30

おちこぼれ勇者、誕生!?

 ルーク=ウレイアは、さっきまで、おさななじみの

エレナ=ルクウイッドがいた祭壇を、

茫然としながら見つめていた。

「エレナ……」

 エレナは精霊祭の最中に、いきなりさらわれたのだ。

 ルークの目の前で。

「ルーク!! お姉ちゃんが!! お姉ちゃんが!!」

 彼女の弟、ビショップが泣きながら抱きついてきた。

優しく抱きよせ、ルークはその背を軽く叩いてやる。

「落ちつけよ、大丈夫だって」

「なんなの、あの人! お姉ちゃんはどこに

つれてかれたの!?」

「俺が知るわけないだろ!!」

 怒鳴ったルークは、祭壇の真ん中になにかが刺さっているの

に気付いた。それは剣だ。銀色に輝く剣がそこにはあった。



〝その剣を取りなさい〝

 きん、とルークの頭に痛みが走った。

 きれいな女性の声が、いきなり頭の中でしたのだ。

〝ルーク、その剣を取るのです。精霊の巫女のために〝

「だ、誰だよ、あんた!! なんで俺の名前を知ってるんだよ!! 

精霊の巫女ってなんだよ!!」

 ルークは痛みに耐えかねて叫んだ。村人が、奇妙なものでも見る

ような目で、ルークを見ていた。

 それが聞こえるのは、ルークだけらしかった。

ビショップさえも、怪訝な様子を隠そうともしない。

 ルークは仕方なく、剣に手を添え、引き抜こうとした。

パチパチと火花が飛び散る。手がひどく痛んだ。だが、エレナの

ためならばと必死で耐える。

 十分くらいそうしていただろうか。

 ようやく剣が抜け、ルークはひっくり返って祭壇から落ち、

背中を強く打った。再び声が聞こえた。

〝よくがんばりましたね、ルーク。ありがとう……〝

 ピシッと祭壇にヒビが入った。そのままヒビは広がっていき、

さらに半分に割れる。その中から、光り輝く十三体の球体と、

神々しい光を放つ、美しい少女が現れた。



「よくぞ、封印を解いてくださいました、ルーク。私は精霊の姫、

アンジェ。この祭壇に、長気にわたって封じられていたのです」

「精霊って、おとぎばなしじゃないのか?」

「いいえ、違います。精霊は本当にいます。ここに……」

十三体の球体がさらに光を放ち、それぞれ姿をかたどった。

一斉に、睨むようにルークを見る。

いきなり睨まれ、ルークはたじろいだ。

 「勇者・ルークよ、精霊の巫女・エレナを助けるためには、ここに

いる十二精霊に力を示さなければなりません」

 「勇者!? 俺が!?」

 『おちこぼれのルークが!?』

ビショップ以外の子供たちが、ギョッとしたように言った。

大人たちは何も言わないが、一様に驚いたような顔をしている。

 「駄目じゃ!! ウレイアの小僧なんぞに、エレナを救える

わけはない!! 選ぶなら他のものにしてくれ!!」

エレナの祖父ががなりたてた。ルークは悲しそうな顔になり、

ビショップはキッと祖父を睨む。

 「駄目です。エレナを助けるのは、ルークです。ルーク以外に

はなしえません。これは決められたことなのです」

が、アンジェはそれをすっぱり切り捨てた。

 「こんな落ちこぼれになにができる!!」

 「ルークは落ちこぼれではありません。さっき、あなたも

見たでしょう? 当たらなかったものの、さっきの男に

ルークが攻撃したのを」

ぐっと祖父が押し黙った。



 「ルーク、こちらに・・・・・・」

アンジェに言われ、ルークは慌てて近づいた。十二精霊たちが

ぞろぞろと集まる。

 「炎の精霊・スコルピオン」

 「はいはーい、あたしがスコルピオンちゃんでーす!!」

赤い球体に入ったかわいい少女が明るく言った。

 「水の精霊・ヴェルソー」

 「ヴェルソーと申しますわ」

すました様子で、青い球体のきれいな女の子が頭を下げる。

 「大地の精霊・カプリコルヌ」

 「おいらがカプリコルヌだぜ~」

呑気な様子で茶色の球体の少年があいさつした。

精霊にも、いろいろな奴がいるらしい。

だが、すべてに共通しているのは、ほとんどが、ルークを

歓迎していないらしい、ということだった。

楽しそうな様子なのは、単に自己主張が強いだけのようだ。

 「風の精霊・双子のジェモー」

 「ジェモー(姉)です。よろしく」

 「ジェモー(妹)だ。文句ある奴はかかってこい!!」

黄色の球体の、おとなしそうな少女と、男勝りな少女が

それぞれ名乗る。姉だけは、ルークに笑いかけてくれた。

 「根源の精霊・バランス」

 「バランスじゃ。まだまだ若い者には負けんぞ」

おじいさん精霊がかっかっか、と笑った。彼は白い球体だ。

 「月の精霊・ヴィエルジュ」

 「ヴィエルジュよ。あんたなんかに、覚えてもらわなくて

いいからね」

じとり、と冷たい目で銀色の球体の少女が毒づく。

はあ、とアンジェがため息をついた。

 「太陽の精霊・サジテール」

 「サジテールだよ!!」

目をきらきらさせて金色の球体の少女が叫ぶ。

にこにことルークの方を見ていた。

中には、ルークのことを気に入ったものもいるらしい。

 「大樹の精霊・ベリエ」

 「・・・・・・ベリエ。よろしく・・・・・・」

緑色の球体の少年がぺこりと頭を下げる。

ルークが気に入らないというよりは、どことなく

おびえているように思えた。

 「闇の精霊・リオン」

 「けけけっ!! リオンだぜ」

黒い球体の少年が気味悪く笑った。

 「海の精霊・ポワソン」

 「よろしく~。私~ポワソン~」

のんびりとした口調で水色の球体の少女が言う。

が、目だけは鋭くルークを睨みつけていた。

 「星の精霊・カンセール」

 「カンセールだ」

無愛想な感じで緋色の球体の少女が呟いた。

 「守護の精霊・トロー」

 「トローだよ。あんたが勇者なんて

認めないからね」

 「トロー! 口を慎みなさい!!」

透明な球体の少年は、べえっと舌を出しながら

わめきたて、アンジェにぴしゃりと叱られた。

 


 「これで全部ですわ、ルーク」

 「わかったよ、俺、旅に出る!! エレナを

絶対に助け出す!! 精霊にだって認めさせて

やるさ!!」

その言葉に、大半が怒りを示し、ジェモー(姉)

、サジテール、ベリエがぱちぱちと拍手した。

 「そのいきですわ、ルーク!! 私も協力

します、絶対にエレナを取り戻しましょうね」

ガッツポーズをするアンジェ。ルークは笑顔で頷いた。

が、祖父がまた口を出して来て、その顔が落ち込んだ。

 「ルークだけじゃ心配じゃ。誰か、他の者もいかせて

くれんか」

ルークと同じ年の少年たちが、そうだそうだ、と騒ぎ

出した。キッとアンジェが睨みつけて言う。

 「駄目です。同行人は認めません。・・・・・・ですが、

精霊の巫女の血縁者ならば認めましょう」

ぱあっとビショップの目が輝いた。

 「じゃあ、僕もルークの助けになるよ!! 僕、剣術は

自信ないけど、魔法と回復術なら得意だよ」

 「よろしくな、ビショップ!!」

手を取り合う二人。と、ビショップが祭壇のそばに落ちていた

髪飾りに気付いた。

 「あっ!! これ、百花白蓮フルール・ブランの髪飾りだ!!

 お姉ちゃんの宝物!!」

 「なんでこれがエレナの宝物なんだよ?」

ルークがきょとん、としたように聞く。ビショップの目が大きく見開かれた。

 「ルーク、覚えてないの!? これ、四歳くらいの時に、

ルークがくれたものだって、お姉ちゃん、言ってたよ」

ルークは髪飾りを拾い上げた。エレナの怒った顔を思い出す。

 『ルーク、これのこと忘れたの!?』

その顔は、失望と怒りがあふれていた。

 「でも、なんでエレナが俺のあげた奴を大事に持ってるんだろ。

こんなの安物だぜ。まあ、きれいではあるけど」

 「ルークってバカだね」

ビショップがあきれたように言った。

 「ば、バカってなんだよ!!」

 「ん~。じゃあ訂正する。かなり鈍いね」

 「・・・・・・そんなに殴られたいかよ、ビショップ」

ルークの声がやや低くなった。ギクッとなった彼は、

素早く逃げだした。待て、とルークが追いかける。

二人はこうして旅立った。精霊の姫だという少女と、

十三名の精霊たちとともに。



その頃、さらわれた、エレナはー。

どこだかわからない城に幽閉されていた。

縛られてはいないが、ドアには鍵がかかっていて開かない。

窓から出ようにも、かなり高いところにある部屋らしく、

それは無理だと思えた。無理に出ようとすれば、大けが

か死は免れないだろう。

エレナは舌打ちした。

 「なんなのよ、この部屋は!! ここ、どこなのよ!!」

エレナは髪飾りがあった位置に手を滑らせ、気を落ち着かせようと

した。が、そこには何もなかった。

ただ、やわらかい金髪があるのみだ。

 「髪飾りがない!! おとしたんだわ、あの時・・・・・・」

エレナのエメラルドグリーンの目が潤んだ。彼女はそのまま

膝を抱えると、小さな声ですすり泣いた。

 「たすけて、ルーク、ルーク・・・・・・」

やっと次話投稿です。ルークたちの冒険はまだ始まったばかりです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ