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精霊の巫女は友を得る

 エレナ=ルクウィッドは、自室のベッドで目覚めた。

 枕元には、リエンカが立っていて、無言で見つめている。

思わず悲鳴を上げ、彼女は飛び起きた。

「きゃあああああっ!!」

「私、リエンカ……」

 たとえ知っているものでも、目の前でじいっと無言でのぞき

こんでいられたら、びっくりするものである。

 エレナは涙目で彼女を睨んだ。

「知ってるわよっ。知ってるけど、無言で見つめられたら

びっくりするにきまってるでしょっ」

 リエンカは首をかしげていた。エレナの言っている意味が理解

できないのだろう。彼女は毒気を抜かれ、ベッドから降りた。

 まだ頭が痛い。あの男、何を飲ませたのか、と腹が立った。

「エレナ、大丈夫?」

 心配そうにリエンカが聞く。表情は変わらないが、声に

不安が混じった感じがした。エレナは無理に笑顔を作る。

「大丈夫よ」

「嘘、よくない……」

 エレナは思い切り舌打ちをしたくなった。作り笑顔をのことも

完全に見破られているらしい。

「まだ寝てた方、いい……」

 そのままベッドに戻されそうになり、エレナは話を変えた。

「ねえ、そういえば、リエンカが私を運んでくれたの?

 誰かが運んでくれたってことは覚えてるんだけど」

 まるで頭に霞がかかっているかのように、思い出せない。

リエンカではないような気もしたが、聞いてみたかった。

「違う……ステラ……」

「えっ?」

 それは予想外だったので、エレナは思わず目を丸くした。

彼女は、エレナを拒絶したのだ。仲良くなりたいと、

親友になりたいと思ったのに。

 でも、彼女はエレナのことを嫌いなのだと思っていたが、

そうではないのだろうか。

 それだけのことなのに、エレナは心が温まるのを感じた。

『エレナ、大丈夫!?』

 ジゼット=ブラックとミルカ=ライニオがやってきた。

大声で叫ばれ、エレナは頭を抱えたくなる。

「大丈夫だから、ちょっと声を落として……」

 エレナが眉をしかめて言うと、二人は慌てて声を小さくした。

気遣わしげな瞳が、さらにエレナを苛立たせる。

 だが、彼女はそれ以上文句は言わなかった。

「またステラはいないのか?」

「いないみたいね」

「みんな、ステラのこと好き?」

 エレナは思わず聞いていた。こっくりと全員が頷く。

「好きだよ、ボクはステラが好き」

「あたしも!!」

 そのまま四人は食事を楽しんだ。今日の朝ごはんは、

しっとりと焼き上げた大きなアップルパイである。

 かなり大きく、ゆうに四人分以上あった。

ミルカが切り分け、全員がそれを食べようとした、その時だった。

 遠慮がちなノックの音が響いて来たのだ。

ジゼットが開けると、そこにいたのは、ステラ=ワイズだった。

 久しぶりに仲間のもとへやってきたというのに、嬉しそうな

色は皆無で、罪人のような暗い顔だった。

「私も一緒に食べていい?」

「もちろんだよっ!! 待ってて今切るからね!!」

 きれいな三角形に切られたアップルパイが、ステラの皿にも

載せられる。ひとまず、全員が口に運んだ。

 あまずっぱいりんごが、やわらかい生地によくあっている。

あっと言う間に四人は平らげ、おかわりしていたけれど、

ステラだけはゆっくり食べていた。

 彼女は食事中も他の人がしゃべりかけようと黙っていたが、

食べ終えるころになってようやく口を開いた。

「私、もうやめるわ……」

 唐突な言葉だった。ミルカもジゼットも目を丸くしている。

「もう、壁を作って素の自分を隠すのはやめる。先に壁を

作っていたのは、あんたたちじゃなくて、あたしだったのよね」

「ステラどうした?」

「黙って話を聞いてジゼット! 話さなきゃいけないのよ!!」

 きつい声で言われ、ジゼットは眉をしかめながら黙った。

ミルカも不満そうな顔で頬をふくらませている。

「私、いい子ぶってたわ。人のことばかり考えて、自分を殺してた。

そんなんじゃ、本当の親友なんて出来る訳なかったわ」

 ミルカたちが胸をつかれたような顔になった。

彼女たちも、ステラが無理をしていたのは気づいていたのだろう。

「エレナ、私、あんたが大嫌いよ。あんたが、素でいい子で、

人を引き付ける力があって、誰にでもやさしくて、本当に

妬ましかった!! でも、私は同じくらいあんたが好きなのよ!

 自分でも自分がわからないわ!!」

 エレナの目から涙があふれた。最初は悲しい意味での涙だった

けれど、ステラの告白をすべて聞いた後では、それは

うれし涙に変わった。

「ステラ!! ステラ!! ステラ!!」

「抱きつかないでよ、うっとうしい!」

 ステラはムッとしたようにしがみつくエレナを睨んだが、

決して突き放すことはしなかった。

「私たち、親友になろう、ねっ?」

「あんたバカじゃないの? あたしはあんたを傷つけたのよ?

 それでも友達になりたいっていうの?」

「うんっ!!」

 ステラの目にも涙が浮かんだ。

「あんたバカよ! 大バカよっ!! 何考えてんのよ!!

 ……あんたたちも、私のこと聞いたらあたしが嫌いになるわよ」

 ステラはエレナが止めるのも聞かず、すべてを告白した。

エレナに仲良くしておいて拒絶したことも、エレナの提案を却下

したことも、すべて語った。ミルカたちは、それを聞いても

彼女をうとましく思ったりはしなかった。

「ケンカならだれでもするよ。ステラは悪くない」

「私、ステラ好きだもん!! 嫌いになったりしないよ」

「リエンカ、ステラ、大好き……」

 ステラはエレナに抱きつかれたまま、うなだれたように

泣きじゃくっていたーー。

次回はルークたちの冒険の続きです。

最後あたりでビショップも久しぶりに

でます。次回も見てください。

追伸ですが、もうすぐあの男の正体が

明かされます。

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