精霊の巫女の苦しみ
精霊の巫女、エレナ=ルクウィッドは、
今現在変な器具に寝そべっていた。
手足はしっかりと拘束されている。
窮屈以外の何者でもなかった。
だが、検査が終われば、帰ることも
できるらしい。ルークにも会える!!
エレナは必死で我慢をしていた。
その間、男は装置をいじって何かしている。
「もうすぐだ……もうすぐ、会える……」
ぶつぶつとうわごとのように何か言っていた。
きみが悪いが、エレナは黙っているしかない。
口を開いたら、黙れと怒鳴られたからだ。
元々おしゃべりな方のエレナには辛いことだったが、
ルークやビショップの顔を思い浮かべ、なんとか
耐えるのだったーー。
彼女が無口に耐えている、その時。
一人の少女が部屋の前に立っていた。
その顔は、決意を秘めている。
少女は人間ではないらしかった。
足はあるのだが、空中をふわふわと漂っている。
その目は嫌になるくらい悲しい。
今にも泣き出しそうなのを、少女はこらえていた。
「止めなくては、あの人を……彼女を、助けなくては……」
ふらふらと少女は前に進む。だがーー。
「きゃあああああああっ!!」
扉に張り巡らされた結界が、少女を拒んだ。
誰も入っていかないように、張ってあるものなので、
そこまで威力はなかったが、少女は空中で座っているかのような
態勢を取っていた。悔しそうに扉を見やっている。
「何をやっているの?」
そこに通りががったのは、エレナが心配でその場をウロウロ
していたステラ=ワイズだった。
「助けて……」
「え?」
「どうか彼女を助けて!! あの人を、止めて!!」
「あの人って、あの方のこと?」
扉を指でさしながら聞くと、少女は頷いた。
姿がだんだん薄れていく。ステラはギョッとなった。
「今日は……ここまで……みたい、ね……。
たのみましたよ……」
そのまま少女の姿は消えていった。
次の瞬間、部屋から狂ったような笑い声が響いてきた。
あの方こと、黒衣の男が部屋から出てくる。
エレナがその後ろから足をふらつかせながら出てきた。
「適合した!! もうすぐだ!!」
「あの……エレナ……ちゃんは、どうなるのですか?」
男が振り向いた。氷の様な眼で睨まれ、ステラはたじろぐ。
「お前が知る必要はない」
ステラはムッとなったが、彼のことを大切に思っているので
黙っていた。倒れ掛かったエレナを受け止める。
エレナは目がうつろで、どこも見えていないようだった。
ステラは自分が検査をされた時のことを思い出し、
嫌な気持ちになる。機械に縛り付けられて黙っているのも
きつかったが、甘い飲料水みたいなものを飲まされたあと
がつらかった。最初はふわふわと空中に浮いているかのような、
とても気持ちいい感じなのだが、少し時間が経つと気持ちが悪くなるのだ。
たとえるのならば、熱を出した時の状態に近いだろうか。
ステラはそのままエレナを抱き上げると、部屋に戻した。
彼女はどうなってしまうのだろう。
そう思うとつらかった。でも、自分にできることなどない。
ステラは黙って部屋を出ていくしかないのだった。
ついに始まった検査に、エレナはひどく苦しみます。
適合してしまった彼女。初めてのことなので、
元精霊の巫女たちはどうなるのかがわかりません。
次回はルークたちの場面に戻ります。
ビショップは出ませんが、見てください。