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精霊の巫女の妹の失敗

 ルーク=ウレイアは、食事の用意をしていた。

 基本カストルと当番で料理をすることにしている。

もう一人の仲間、ビショップ=ルクウィッドは、

料理が下手なので当番には入っていない。

「ルークルーク!!」

 と、カストルが目をきらきらさせて

走り込んできた。鍋にぶつかりそうに

なったので、慌ててルークが彼女を抱きとめる。

「な、何やってんだよっ!!」

「ご、ごめん……。でも、チーズにそっくりな

実を発見したんだよ。食べてみて」

 それは茶色い殻につつまれた、小さな実

だった。匂いだけなら、すごくおいしそうだ。

 ルークは笑顔になると、殻をむいて

実を口に放り込んだ。その時である。

「その実を食べちゃ駄目!!」

 青ざめた顔でビショップが走り込んできた。

口に入れた瞬間にそう言われ、ルークも青ざめる。

「それは毒だよっ!! お腹壊すよっ!!」

 それを聞くなり、ルークは実を吐きだした。

 口の中に残る異物感に、数秒せき込む。

「か、カストル!! 毒なんじゃねえかよっ!!」

「ええ、私食べたけど、なんともないよ? いつも

のように食べてるのに」

 いきなり怒鳴られ、カストルは頬をふくらませた。

 進めた物が毒と言われたことにも、腹を立てている。

「それは、君の進めたやつと、君が食べたやつが

別物だからだよ」

「そんなことないっ!! おなじのを持って来たよ」

 ビショップは首を振ると、ルークが捨てた実と、

どこからか取り出した実を並べた。

 あっ!! とカストルが声を上げる。

 その二種類の実は、殻の色は同じでも、

中身の色が違っていた。ルークの方は、毒々しい赤、

ビショップが持ってきた方は、きれいな金色だった。

「こっちが毒、こっちが食べれる方だよ」

 カストルは今にも泣きそうな顔になっていた。

 体が小刻みに震えている。

「カストル、落ちつけよ。もう怒ってないって!!」

「もういいっ!!」

 カストルは目から涙を流すと、前に一直線に

走り出した。前も何も見ずに走る。

 ルークたちはギョッとなった。

 下は崖だ!! 一番すばやいルークが

かけつけ、落ちる前に彼女の腕を掴んだ。

「おい、大丈夫か?」

「だい、じょうぶ……」

 落ちかけて青ざめた彼女は、震える声で言った。

 ホッとしたルークはすぐに引き上げようとするが、

運悪くそこにモンスターが現れた。

 ひときわ奇妙な風体である。

上半身も足も人間だが、腰はさそりのもので、

毒のある尻尾もあった。

「ギルタブルルだ!!」

 ビショップは慌てて弓を構えたが、長い尻尾

が飛んできたので、よけるために下がらなくては

ならなくなった。お湯を張った鍋が倒れ、

火が消える音が聞こえる。煙が上がって

見えなくなった内に、魔物はルークに

襲いかかっていた。

 片手を掴んでいる状況で、勝てる訳はない。

ルークとカストルは、崖下に突き落とされた。

「ルーク!! カストル!!」

 ビショップの悲痛な声を聞きながら、

彼らは下へ下へと落ちて行ったーー。



 結論から言うと、彼らは一切怪我を

しなかった。精霊の姫からもらった

武器が輝き、彼らを守ったのだ。

 だが、上にのぼる手段は今のところ

ないので、二人は困り果てていた。

 なにしろ、食料も水もないのである。

 朝ごはんを作る途中でこんなことに

なったため、お腹がペコペコだった。

「腹、減ったなあ……」

「ごめん……あたしが変な実拾ってきたから

……ううん、あたしが前を良く見て

走ってたらこんなことにはならなかったよね」

 卑屈に言うカストルに、ルークは苛立ちを覚えた。

確かに、落ちたのはカストルのせいもある。

 けれど、実際に悪いのは魔物である。

 この状況じゃなくても、近くに崖があったのだから、

落とされていた可能性はあったはずだ。

 もう一度「ごめんね」と言われ、ルークは

眉をしかめて言い返した。

「何度も謝るなよ、余計に腹が立つ」

 自分でも驚くほど、とげとげしい声が出た。

 カストルは黙り、沈黙がその場を支配する。

 ルークはさらに苛立ったが、何も言わずに

歩き続けた。その時、ようやく何かが見える。

それは、洞窟だった。外よりも快適に

思えたので、彼らはすぐに場所を移った。

 雨風がしのげるので、洞窟の方が格段にいい。

 その辺で拾ってきたたきぎに術で

火をつけ、二人はそれを囲む。

「どこかに食料ないか、探すね」

「俺も行くよ。俺の方が、植物には詳しいから」

 火をその場に残し、勇者と精霊の巫女の妹は、

奥へと歩いて行くのだったーー。

次はエレナのお話です。

あの男に連れて行かれたエレナの

続きを書きます。あの男の正体は、

まだ明かせませんが、次回も

見てください。

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