結界師の男子学生
これを書くきっかけになった結界師の男子学生に捧げます
先日、電車に乗った時のこと。
座席は人が譲りあえば座れる位の混み具合の車内で一際目立つ成人前後と思われる男性がいた。
なぜ、目立つのか。
それは足を大きく広げ、体をのけ反らして座り、座席を三人分占領している。
そして、オシャレでイケてます感を出すアイテム、大きなヘッドホンを着用し、ゲームに熱中していた。
彼のファッションはいかにもイケイケ学生らしい服装に足元にはバックパックを置いている。
バックパックも足の間ではなく、大きく広げた足の外側の床にある。
周りに目を向ければあと二人は彼が足を閉じるだけで優に座れるのがよくわかる。
ドア近くには立って目立つ彼を眺める人もちらほら。
そんな彼の真正面のシートに偶然陣取り目的地まで観察をしてみた。
誰が近くに留まろうと一切無視で自分の世界に没入している。
たぶん、彼は非常時には逃げ遅れるタイプなんだろうな…。なんて考えて観察していると。
不意に彼は現実世界を拒絶し、周りにあえて誰も寄せ付けないかのようにしているかのように見えた。
そして、そんな彼をずっと見ていると彼の周りだけぽっかりと空いた空間が彼を中心に見えない球体に覆われているような気がした。
そっか、彼はバリア?もしくは結界を張ってるんだな。って突然思ったのである。
え?なんか、彼とっても「なろう」っぽくない?
そんな考えが過ると突然面白くなってきた。
気遣いと譲りあいの精神は消え去り、周りが見えなくなっている彼は周りの音も完全に遮断し、ゲームの世界に没頭し、俺のゲームを邪魔するヤツは絶許!精神で中二病を発祥しているんだな。
突然降って湧いたアイデアのおかげで、振る舞いが困ったちゃんな人達はある種の万能感に酔いしれヒーローごっこに没頭し、現実世界でもその万能感ゆえ厨二病臭が漏れでてしまう、黒歴史を現在増産中というわけだ。
そう、彼は今チートな主人公!
なんて、生温かく見守れるんだろう。
彼らの中二病をこちらでアテレコして楽しむというネタも出来た。
いつか彼が乗る電車で皆が座れる気遣いを身に着けてくれることを願って、私から見た彼のストーリーをここに妄想し刻むことにしたい。
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《自称結界師 (男子大学生) 編》
俺の名は護竜狩人、19歳。
普通に電車に乗ってゲームをしている学生を装い、実はこの世界を守る為日々戦っている。
現実世界の日本人を守る為、結界を張り他の世界線への干渉を防ぎながら戦っているのだ。
結界を張りながらの戦いは神経を使い集中力が重要になる為、現実世界の俺はすぐに移動したり周りの市民に対応するのが難しく申し訳なく思う。
俺に触れてしまうとあちらの世界からの干渉に一般人が巻き込まれてしまう可能性がある為、足を大きく広げ周りの人達が座れないようにしている。
いや、皆、俺の戦いに気が付いているのか、俺の結界が強力なんだろう。
俺のオーラを感じて一般市民は座れないらしい。俺の魔力が強すぎるせいだな。
これも世界を救う為のことだ理解して欲しい。
さて、君たちを日々守っているこの世界での俺の装備も簡単に紹介しておこう。
まずは、着用しているヘッドフォン。
これで一般市民からの音波等の干渉を防ぐ結界における重要な武器の一つでもある。
勿論、結界内の戦闘に関する情報やサウンドを感知する役割もある。
もう一つの重要アイテム!
それが、この世界線と日本の男子学生という仮の姿を切り替える為の魔道具。
結界を張り巡らし、この世界線をスイッチさせる魔道具は一般市民から見るとポータブルゲーム機にしか見えないように偽装している。
画面の両側には魔法を使ったり、戦闘に合わせて武器を召喚する為のコントローラーがある。
今日もこのゲーム機を通して俺の全力を注ぎ込む!
唸れ!俺の腕と指!
あぁ!クソッ!酷使しすぎた俺の魔眼が疼くぜ!
衝撃波で体が揺れる!
ビクッ!ビクビクと体が震える。敵はかなりの強敵だ。
集中だ、集中するんだハント!俺は出来る!
幾多の試練をのりこえし男となり、必ずこの戦いは勝利してみせる!
うぉぉぉぉぉぉぉ………!!!
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残念ながらタイムオーバーとなりアテレコはここで終了となる。
もうすぐ目的地の駅で乗り換えだ。
とっても楽しく鑑賞することが出来た。
うん、とっても中二病でよろしい。
オシャレしてても、まだまだ俺って最強!感が出てしまってるよね。
今頃回復アイテムでも使って敵と戦っていることでしょう。
次は、あそこでメイクしている女性?
それともこんな時間から車両でお酒を煽るオジサン?
次回をお楽しみに。
お読みくださりありがとうございます。
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暇つぶしにお付き合いいただきましてありがとうございました。