第3話 転校生
剣が登校して数分後に先生が入ってきた。
「はい、挨拶しましょう。」
朝教室に入ってきてのいつもの言葉。熱血だがみんなに尊敬されている谷本 浩二先生だ。学級委員長の鎌架が号令をかける。
「きりーつ、気をつけ、礼!」
『おはようございます!』
「おはよう。今日はな、転校生がこの学校に来るから。」
さらっと重要なことを言う谷本先生。その言葉に剣がもちろん反応する。
「転校生って…なんで?つかマジですか?」
「本当にだ。とりあえず紹介するからな。入ってこい。」
ガラガラっとドアが開く。入ってきたのは長髪で金より薄い色の髪をした少年だった。彼を見た瞬間、鎌架、天音、剣が反応した。
「えっ!?」
「あれ?」
「おっ!?」
銀架は鎌架たちが反応したことに不思議に彼を見た。
「…城月 双士。…よろしく。」
「城月は親の用事でここに引っ越してきたんだ。昔ここに住んでいたらしいから、誰か知っているだろう。ま、仲良くしてやれよ。」
先生は彼の座る席を探した。その隣は…
「ん、青黒い髪でポニーテールをしてる奴いるだろ?その右隣な。」
銀架だ。双士は先生の指さした生徒を見た。すると彼は一瞬目を見開いた。が、すぐに無表情に戻った。そのまま無言で銀架の席の隣の席に座った。
銀架は別に転校生に興味がないのか彼を見なかった。が、ひとつ気になるところがある。
「(…なんで3人とも驚いたんだ?…知らない。)」
鎌架が知っているならば、自分も知っているはずだ。だか…
「(でも、僕の記憶は…)」
「…君は…銀架…?」
ふと隣から声がした。思考回路を遮断し、横目で彼を見た。
「…確かに、僕は銀架だ。…で、あんた…なんで僕の名を?」
静かな声で聞く。双士はその言葉に少し驚いていた。
「―!銀…架?なんで、僕のことを覚えてないんだ?」
「…?…悪いけど、知らない。…話すなら、後にしてよ。先生になんか言われる。」
すっと目を逸らし、彼に聞こえるくらいの小さな声で呟く。
彼は少し迷っていたけれど、コクリと頷いた。
先生の話が終わって、3人が彼と銀架に寄ってきた。
「まさか、双が転校生として戻ってくれたなんてね。」
わたしは嬉しい、と天音が言った。
「だよな。居なくなったのって6年前の春だよな?てか、双士雰囲気変わったな。」
「…そうか…?天音と剣は変わらないな。…銀架と鎌架は変わった気がする。」
銀架は彼の言葉にほとんどついていけなかった。というより、剣と天音の言葉もだ。彼らの話からすると双士は幼なじみ四人衆と幼なじみらしい(実はこの四人は幼なじみだ)。だが…自分は全然わからなかった。覚えてない。
「…銀架は、ちょっとね。今は言えないけど、多分ちょっと男の子みたいになったでしょ?マイペースすぎるし、大変なの。ところで、双ちゃんはなんで帰ってきたの?両親の仕事とかなんとか言ってたけど。」
鎌架が説明した後、気になることを尋ねた。
「ああ、未北村の歴史調査のためらしい。昔話したことがあるだろ?父さんは歴史調査の仕事をしていると。」
「うん。引っ越しちゃった理由が違う村の歴史調査のためだったよね。別れた後、鎌って寂しそうな顔ずっとしてたよ。銀もね。」
その言葉に銀架は反応した。
「(僕が…?…なんか…腑に落ちない気がする。)」
「あ、あわわ、だ、だって幼なじみが居なくなるから…寂しいでしょ?」
上の空な銀架と慌てる鎌架。双士は上の空な銀架をじっと見ていた。
「…銀架、なんで僕のことを…覚えてないんだ?」
「「!?」」
「…」
双士の言葉に剣と天音は驚き、鎌架は冷静な顔になった。
「…知らない。あんたのこと。なんで僕の名前を知っているのか…、3人があんたを知っているのか…。」
「な、なんで?銀は、鎌と双といつも一緒に遊んでたのに…?」
天音が慌てて銀架に聞いた。剣も天音に同意なのか強く頷いていた。
銀架は静かに、だが力強く言い放った。
―僕ニコイツト6年前ノ記憶ハ無イ―






