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第2話 当たり前

二人が学校に着くとショートヘアーで紫髪の少女がまず先に挨拶をしてきた。

「おはよう、銀、鎌。いつも急いでるね。」

柔らかく微笑みながらいう。この少女の名は鈴時(すずとき) 天音(あまね)。幼なじみだ。この子は大人しく、クラスの和みキャラだ。彼女が鎌架を鎌、銀架を銀と呼ぶのは昔からの癖みたいなものだ。

「…はよ」

「おはよ、天音ちゃん。あれ?一人?」

いつもならもう一人と一緒に登校してくるはずなのだ。

(つるぎ)?つるぎは遅刻…かも。」

天音は小首を傾げてわからないとやった。その時、ダダダッと激しい足音がしたと思うとガラッと勢いよくドアが開いた。

「せ―――――ふ!」

「お前の存在そのものがアウトだろ。」

ゼーゼーと呼吸している彼に、銀架は見下しながらいう。彼の名前は市宮(いちみや) (つるぎ)。赤茶の髪でざんばら。というか寝癖だらけで、ある意味クラスのムードメーカー的存在だ。性格はツッコミ役で胡散臭い(銀架いわく)。銀架は一番いじりやすい人間だと本気で思っている。

「朝一番の俺に対しての言葉がそれかよ!?なんか傷つくわ~。つうか、銀架、お前登校する時、挨拶した俺をスケートボードでひいたろ!!毎度毎度俺の顔を潰す気か!?」

「YES。」

「あっさり真顔で応えんな!遅刻しそうなのに愛を込めて挨拶したんだぞ!?」

「…どこが?つうかうっさい。」

耳栓をして手をヒラヒラする。

「剣君、今日なんで遅刻しそうになったの?いつもは無駄にテンション高くて天音ちゃんとみんなより早く登校してくるのに…。」

本題に戻しながらちゃっかり毒舌を吐く鎌架。

「鎌架ちゃぁん、無駄にって…本気で傷ついた…。で、ああ…天音と一緒に登校しなかった理由~?サボった。」

最初わざとらしい悲しそうな顔をしていたがケロッとそう言った。

「サボった……お前馬鹿?あ、もともとだったか。」

「やっぱひでぇよ!」

「本当のことでしょ?遅刻してないのに何サボったんだよ?まあ、お前そのものに興味ないし。」

席につき、足を組んで本を読んでいた。天音はクスクス笑いながら二人を(なだ)める。

「剣、遅刻しそうになったのはあまり聞かないから。銀はちょっと剣に冷たいね。いつもだけど。」

「…天音は甘やかしすぎ。僕はあんまわからない。」

天音を横目に見ながらどこか遠い目をしていた。鎌架は何かに気づいたのか、ふと微笑んだ。

「わからないでいいよ。…さて、先生がくるから剣君早く準備した方がいいよ。」

その言葉を聞いて急いで剣は席について準備をし始めた。

これがいつもの当たり前の会話。銀架と剣が言い合い、鎌架と天音が宥める。でも、当たり前が今日で終わるなんて誰も知らなかった…

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