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第16話 復活

銀架、鎌架、双士はヴェツェたちが帰ってくるまでただ静かに空を見上げていた。

特に話すことがないというのもあるがただ3人ともそうしていたかったからだった。

不気味なほど青い空は相変わらずだ。

それを覆う雲がなければ、太陽すら、あるのかわからない。

そんな空を見上げていた。


『なーに3人揃って黄昏てんの?』

呑気な声がしんみりとした空気を壊す。

「…おかえり。今静けさに浸ってたのにぶち壊したな?」

後ろに(毎回のことだが)突然現れたヴェツェに振り向く銀架。

口調は苛立っているように聞こえるが、実際真顔だ。

苛立っているわけではなくなんとなくだった。

『ただいまー。別にいいでしょ?特にすることないから空見上げてただけなんだし。』

ヴェツェはヒョイッと飛び、窓枠に座る。

「…天音の方は終わったのか?」

双士が尋ねる。

ヴェツェはピースをして答える。

『終わったよー。舞姫に見事なれたし、戦力として、補助として天音はいける。

今妖梨と羚真が天音に戦い方や、力の使い方をレクチャーしてる。』

「羚真ってだれ?」

鎌架は首を傾げて目の前にいる彼女に尋ねた。

『羚真っていうのは、妖梨に忠誠を誓った男の子。

蒼月 羚真って名前。』


ヴェツェは足をぶらぶらさせて言う。銀架はヴェツェの口からでた彼の名を小さく呟いた。

何か引っかかるのだ。

「妖梨がこの村の長だからか?」

双士は推測で尋ねるが、ヴェツェは首を横に振る。

『もっと大きい理由だよ。わたしの口からはあまり話せないけど。あ、なんで?っていうのは尋ねないでよ?

事情がいろいろあるんだから。』

「…わかった。」

「…天音は、屡紅の意志を受け継いだの?」

眉をひそめて尋ねる銀架に、ヴェツェは真剣な目になる。

『…他人の決めたことにウダウダいうのはやめてね?

天音は天音の意志がある。屡紅の意志以前に、天音は天音自身の意志を選んだんだから。』

銀架も音亜のように他人を自分の戦いに巻き込むことが嫌い、そのことを理解した上での忠告だった。

ヴェツェは信頼することを知らない銀架は弱いと思っている。

もし、また音亜と同じように一人で銀架が戦うなら、また昔の二の舞になってしまう。

今回でもうこの戦いを止めたいのだ、ヴェツェは。

「…わかった。…で、天音が癒やしを与える者になるの?」

『そういうこと♪本来舞姫は人々に癒やしを与え、傷を治すことが仕事なんだ。』

にっこりとした笑顔で答える。

鎌架は不思議そうな顔をする。

「じゃあ、僕たちはどうなるの?

゛コア″を与えられた人間を守る者、癒やしを与える者、盾となる者、そして、支える者がいるんでしょ?」

あと3つ役目があるよ?と首を傾げる。

ヴェツェは、んーと口元に人差し指をあて、考える。

『それぞれの先祖、前世によるかなぁ~。まぁ、お楽しみってことで。』

ね♪とウィンクするヴェツェに、銀架は溜め息を漏らす。

鎌架はクスっと笑い、双士は呆れ顔だった。

『ところで銀架、狂滅に名前付けあげた?』

布団の脇にある太刀、狂滅を指差すヴェツェ。

全員の視線が狂滅へと注がれる。

「あー…、初めてヴェツェに会った時にそんなこと言われたね。」

『忘れてたんだね…』

ガクッと肩を落とすヴェツェ。

『狂滅はいわゆるあだ名みたいなものなんだよ。だから、本当の名前を付けてあげないといけないの、この子はまだ子供だから…。』

ヴェツェはそっと両手で狂滅を持った。

大切そうに見つめて

「子供…?」

銀架も狂滅を見た。

『この子は音亜を持っていた狂滅の魂を継ぐ狂滅。

わたしが眠る前、音亜が゛コア "を封印した時に灰となって消えたの。灰は、空に消えて。狂滅を生み出した鍛冶士は言ってた。

《空に消えた狂滅の灰はいつか儂の下に帰ってくるだろう。再び作り出すのは次守護者のお前が目覚めた時だろうな。》

と。』

懐かしむようにそう語った。

「で、その鍛冶士はまだ生きているのか?」

双士は疑問を投げかける。

守護者ならまだしも、鍛冶士が何百年も生きていられるのだろうか?と。

『…生きてるよ。あの人は本当に狂滅が必要にならない限り死なない。狂滅は彼の魂を鍛錬して作ったものだから。』

「…また魂が戻ってきて、ヴェツェが目覚めたから彼は作ったんだね?銀架の狂滅を。」

『当たり、鎌架。』

クスっと笑うヴェツェ。

銀架はヴェツェの手から狂滅を取る。

そして、鞘から刃を抜いてじっと見つめた。

「…もう少し、待っててくれる?お前に合う名前を付けるから。」

狂滅に語りかけるように呟く。

狂滅は返事をするようにキラリと刀身を光らせる。

返事を受け取り、鞘に戻すと、鎌架に顔を向ける。

「…鎌架、僕の服ちょうだい。天音のところに行く。」

「…はい、どうぞ。双ちゃん、後ろ向いててね。」

双士が後ろを向いたのを確認してから素早く着替える。

新しい服に身を包み、黒いコートを羽織る。

そして狂滅を背負ってヴェツェに言う。

「…ヴェツェ、天音のところに連れて行って。…羚真って奴にも会いたいしね」

薄く口先を上げる銀架に、ヴェツェは悟る。

―銀架は羚真に興味を持ったのだ―

と。

多分、銀架の勘が羚真がただ者じゃないと訴えかけているのかもしれない。

ヴェツェは楽しそうに、嬉しそうに笑う。

『当たり前♪』



―銀架なら、羚真を助けてくれるよね?会えばわかる。だってあなたたちは似た者同士だから―

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