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第14話 羚真

天音たちはこの日は身体を休めた。

藤ヶ谷村に着いたのは夜中で、時計では次の日になっていた。

昨日からいろいろ有り過ぎ、銀架以外は疲れていた。

鎌架は手足が包帯で巻かれていた。

ひどいところは縫ってもらった。

一番ひどいのは銀架だった。今は町医者によって腹部の傷は簡単な手術がされている。

社の隣は実は高性能の手術ができる手術室のある病院だった。

『…妖梨、《彼》は間に合うかな?』

3人が寝静まってから、まだ起きている妖梨に問いかけた。

「…間に合います…。きっと、気づいている…ハズですから…」

『…そっか…。…』


全員が目を覚ましたのは朝の9時だった。

妖梨が朝食や風呂を準備していてくれたので、朝の起きてから快適だった。

天音は風呂上がりに妖梨自分の部屋にくるように言われたので、居間にはヴェツェと鎌架、双士が残った。

銀架は寝室で点滴をしながら静かに眠っている。

本来、゛コア″は傷の治りが早い。が、まだ銀架は゛コア″として身体が慣れていないので、しばらく普通の人間の傷の治りの早さだ。

「…銀架、鎌架は大丈夫なのか?」

双士は心配そうに銀架が寝ている寝室の方を見た。

「大丈夫だよ。運良く臓器に包丁の刃が当たってなかったから、そこまで酷くなかったの。銀架が゛コア″に慣れるのは後4、5日かかるけど、それまで安静だから。」

「…そうか…。」

少し落ち着いたのかホッとした顔をした。

すると鎌架はクスクスと笑った。

「双ちゃんは本当に心配性だね。銀架は簡単に弱る子じゃないってわかってるでしょう?」

そう言うと双士は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑った。

「そうだったな…。あいつはどんな怪我をしてもケロッとしている奴だ。

俺らが慌てていたら馬鹿にされる。」

「そういうこと。」

それから雑談をしていると、廊下側の(ふすま)が開いた。

妖梨が礼儀正しく開けて入ってきたのだ。

「…天音さん…こちらに来てください…。」

妖梨は二人に見えない位置で隠れている天音を読んだ。

「む、無理だよ~///

絶対似合ってないもの…///」

「天音ちゃん早くおいでよ」

鎌架が声をかけるとようやく天音が二人の前に姿を見せた。

「う…///絶対変…///」

「わぁ♪天音ちゃん綺麗だよ!」

藤色の鮮やかな着物を着て、瑠璃色の衣を纏っていた。

いつもリボンをしていた場所には雫の型をした飾りが揺れる(かんざし)

(おび)はふわりとした淡い桜色。

舞姫らしい姿があった。全体的にふわっとしているので、いつもおっとりしている天音に似合った格好だった。

「可愛いな。天音には似合っている。」

微笑みながら言うと、顔を赤くしながら、ありがとう、と応える。

『話の途中失礼するね』

声とともに4人の前にヴェツェが現れた。

もちろん、空間から。

「ヴェツェ…普通に出てくることは出来ないのか?」

呆れながら双士は言う。

『わたしの普通はコレだよ。さて、そろそろ『藤花舞う祭壇』に行くよ。』

真剣な眼差しを天音に向けた。

天音はわかった、と小さく頷いた。覚悟はできているのだろう。『鎌架、双士、銀架の看病のためにここにいてね。』

「わかった。…頑張ってね、天音ちゃん。」

少し緊張気味な天音に優しく微笑んだ。

そのおかげか、天音の表情は少し柔らかくなった。

「頑張ってみる。銀の力になるために。」


天音たちはヴェツェの力で『藤花舞う祭壇』に着いた。

辺りは色とりどりの藤の花が咲き誇り、ひらひら舞っていた。

神秘的な雰囲気を放つ。その中央に、凛と立ちはだかる祭壇。

「……綺麗…。ううん、そんな言葉じゃ表せないくらいすごい…」

天音はうっとりとして周りを見回した。

『…ここは、特別な儀式以外入ってはいけない聖地なの。そして、儀式を行うことができるのも、ほんの限られた者だけ…。

天音、あなたの先祖は…屡紅は当時『藤花舞う祭壇』で唯一舞うことを許された 舞姫だったの…。そして、あなたは屡紅の血、力を一番受け継ぐ者。』

「…屡紅様は…人々を癒やし、包み込むような方だった…。あなたは…彼女によく似ている…って、羅那は言ってる。」

妖梨は祭壇を懐かしそうに見つめ、静かに告げた。

天音は不思議そうにそんな妖梨を見た。

「羅那さんとお話できるの?」

尋ねてみると、彼女だけでなく、ヴェツェも頷いた。

『妖梨は羅那と一心同体みたいな関係。妖梨の中で羅那は生きてる。』

「…そうなんだ。…!あっ人がいる。」

天音の指の先をみると、黒紫の髪をしたショートヘアの少年が中央の祭壇を見つめていた。

少年は視線に気づいたのか、そっと体をこちらに向けた。

「……守護者・ヴェツェ、…久しいな。」

低いテノールボイスが響くように聞こえる。

よく彼をみると、黒縁メガネの奥の瞳は真紅だった。

『よくきてくれたね……

羚真(れいま)―』




―彼が持つのは真紅の瞳。血塗られたこの世を映す血の眼。さぁ、どれだけこれからこの世は染まる?―

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