僕の所長
話の進むスピードがクソほど遅くなるなコレ…
でも自分がしてるイメージを届けたいからどうしても描写は多くしたいんですよね…塩梅が難しすぎる…
一応この小説自体は3章以上は作っていきたいと思います。
構想はある程度出来ています。
今は0.5章と言ったところでしょうか。
前書きみたいなものです。
ここでできるだけ世界観を頭に叩き込んで欲しい…!
いやそうするための文章を書かなければいけないのだが…!
おかえりとは聴こえたが、研究所の構造上聴こえるようにしているだけであって、新婚のお嫁さんみたいに玄関で待ってくれているわけではない。
きっと研究の片手間に言ってくれているのだろう。
僕もただいまとは言ったものの、入った瞬間に鼻腔をメッタ刺しにするこの臭いを嗅ぐためには絶対に帰って来たくない家である。
薬品の臭いではない。
全ての物質が化学物質であると言ってしまえばそれまでだが、これは褐色のガラス瓶から出るような純粋な化学物質の香りではない。
The 汚物である。
実際に入ったことはないが、ゴミ屋敷の見た目から想像できるような香りだ。
今では慣れてしまったが、これをあの乗客達に嗅がせる訳にはいかないだろう。
ピク娘なんか可哀想で仕方がない。
実はこれは侵入者撃退用の香りらしく、30分ほど鼻に通すと慣れで気にしなくなるように配合された汚物の香りなのだ。
でも臭いものは臭い。
個人差はあるだろうが、僕は慣れが浅くて毎回顔を顰めてしまう。
入口を通って真っ直ぐ歩いていくと、さらに自動ドアがある。
その周囲にはそこから先へ臭いを通さないために、計算され尽くした空気の流れがあり、やっと鼻腔が洗われる感覚がした。
ドアが開くと、そこには広々としたエントランスがある。
まるでホテルのようだが、色は白を基調とした、実験室に近い見た目をしている。
中央には人型ロボットが受付をしているインフォメーションセンターのような区画があり、そこに僕は歩いていく。
「所長室に繋げてください」
「了解しました」
すると数秒で所長が応答する。
「僕です。濃霧に遭った人たちを一時的に保護したいのですが許可を頂けますか?」
「ぼくぼく詐欺は……いやごめんってそんなワンコが唸るような音出さなくたって…。許可は出すよ、というか私は権力持ちたくないから命に関わること以外は好きにやっちゃっていいっていつも言ってるんだけどね。何人くらいいるの?」
「15人です」
「じゃあシェルター803を使うといいね。そこには保存食と水がいくらかあるから好きに使っていいよ」
「ありがとうございます。あと、霧について知りたいことがあるので何か資料があれば読みたいと思うのですが、心当たりはありますか?」
「これもいつも言ってるけど他人行儀なしゃべり方はいい加減直そうね!霧については了解!だけど君が知りたいような情報はそんなにない気がするな…とりあえず落ち着いたらここ来てね」
「了解です」
「だーかーらー、別に敬語
僕はこの場所を急いで後にした。
外に出ると、乗客たちが例の属性詰め込みの木の下で休んでいた。
「皆さんこっちです。ついてきてもらえますか?」
僕は乗客たちがみんなついてきたのを確認してから歩き出した。
「……この人なんかうんちくさい」
「っ!そんなこと言ってはいけませんよ。なんにも臭いなんてしないのに」
「すんすん…でもやっぱり臭いよ?」
「これ僕の臭いではないので!勘違いしないでくださいね!」
「……うんちお兄さん」
「………ねぇ、今なんて」
「なんでもなーい!」
そして太陽みたいな無邪気な笑顔を向けてくる。
こんなに心を抉られたのは何時ぶりだろう。
この臭いは体や衣服に染み付かないように設計されてるし、さっきの空調で臭いはとっくに飛んでいるはずだ。
子供の感覚、恐るべし。
今日の夜はものすごく丁寧に体を洗ったのだった。
シェルター803は研究所から少し離れた場所にあって、何か重大な事故が起きた場合に備えて地下に作られたものである。
今は重大な危機という訳ではないが、流石にあの研究所に入れることは僕でも心が痛くなるので大仰ではあるがここを有難く使わせていただく。
座れる場所も多く、着いて体を楽にしてくださいと言ったそばから皆が皆座り始めた。
すると、イイ感じにダンディーな男性が姿勢そのままに僕に話しかけてきた。
「すみませんねぇ、保護してもらって。しかも食べ物を頂けるとはね。電波も繋がってるみたいだし、感謝してるよ」
「どういたしましてですが、許可を出したのは僕の上司なのでもし会うことがあればそっちに言っておいてもらえると。この後濃霧救護班に連絡をするので、また少しお待ちいただくことになりますから、食べ物は沢山あるので遠慮なくどうぞ。トイレはあっちにあります」
「何から何までねぇ…。そうだったな、濃霧に遭ったら一度検査されなきゃならないからなぁ。じゃあお言葉に甘えっぱなしだが、待たせていただきますねお兄さん」
別に兄弟ではないが、そういう友情的な愛情表現があるのは知っているので、微笑んで応える。
すると、近くに居た比較的若めの女性がこう問うてきた。
「それで、霧ってなんなんですか?いや知ってはいるんですが、今回のことで分からなくなってしまって。研究者と言っていたと思うんですが、何か知っていることとかあったら教えて欲しいんですけど」
「すみません、霧を専門にしているわけではないのでわか
「フフフ…霧って言うのはね、原理的には義務教育で習っている人もいると思うんだけど、いわゆる超ちっちゃい水滴さ」
「所長…。あっ、この人が所長です」
「もうちょい修飾語欲しかったけどまあいいや。私が超キューティーでビューティフルな所長です」
「所長…」
「あなたが所長さんでしたか。
「修飾語付けなさいよね」「所長…」
この度はどうもありがとうございます色々とねぇ」
「いえいえ〜どうってことないっすよシェルター貸すくらい」
僕の所長はイイ感じの性格をした人である。
しかも見た目が僕の半分くらいの背丈なので威張ってる子供みたいでウケが良いらしい。
そして流石コミュ力も高い。
羨ましくはないですが何か。
「それで確かに霧っていうのは水滴なんだけど、皆さんが体験してもらった通り、人を攫っていく性質があるんだよね。その仕組みは今も不明なんだけど、どう考えても危ないから色々政府が動いてはいるんだよ。ほら、濃霧救護班とか」
「湯気とは何がちがうんすか?」
「おっ、いい質問だ青年。でも違いと言われると教科書に載ってるような原理的な違いと人を攫うかどうかしか違いがないんだよね。湯気が人を攫わない理由を知りたいなら、私は力になれないかな。情けないけど」
「そうですか…まあただの知的好奇心なので知らなくてもって所はあるんですけどね」
「でも知ってるのと知らないのとじゃ、命に関わる現象に応対した時に生存率ってのは天と地ほどの差があるからね。知りたいと思う姿勢は素晴らしいよ。ってなわけで、私の方から濃霧救護班に連絡はするからのびのびと待っていておくれ。退屈しのぎにちょっとしたゲームとかもその棚にあるからどぞ!」
そしてここで会話は終わり、所長は所長室に帰って行った。
僕達は濃霧救護班を待つことになったが、ゲームで暇つぶしするほど時間はかからなかった。