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十五人目の主

私は梨子、不老不死のごく普通のメイドです。


前の主人の死後、私はしばらく普通の民間人として生活しました。

理由としては、大半の業種が機械に代わられ人間が働く必要がなくなってきたこと、そして、そろそろ「永遠に続く主人にお仕えする生活」に飽きと疑問を感じてきていたこと、です。

私はこれまで、他者に仕える生活を続けてきました。

しかし、私はこんな生活…もとい人生に、飽きと疑問、そして退屈さを感じていたのです。


けれど、まだどこかに私を必要としてくれる方の下で働きたいという気持ちがあったのでしょう。

西暦3001年、私は、十五人目となる主人に出会いました。


ご主人様は、常に楽しい事や面白い事を求めておられ、それ以外の事には何一つ興味を示されない方でした。

なので、私はご主人様に喜んで頂くために、沢山の娯楽を用意しました。

しかし、ご主人様はそのどれにも興味を示されませんでした。


そして、ご主人様のお気に召す娯楽を探し続けて20年。

その日は、ご主人様が18歳となられたお誕生日でした。

この日もまた、ご主人様は私が差し上げた娯楽の道具を全て、おもちゃを散らかす子供のように投げ出してしまいました。

私はこの時、20年間の疲労を全て吐き出してしまいました。

「ご主人様は…」


「ん?どうした?」


「ご主人様は、一体何をすればご満足されるのですか!

私が何をしても、全部投げ出されてしまって…

私では、ご主人様をご満足させられないのですか!」

ご主人様は少し黙り、

「一つ、興味がある事がある」

と仰いました。

「…!?それは一体何でしょうか!」


「君、確か不老不死なんだよな?

なら、今までどんな人生を送ってきたのか話してくれないかな?」


「…そのような事で、よろしいのですか?」


「ああ。僕は気づいたんだ。一番面白くて楽しい事ってのは、他人の経験を聞く事なんだって」


「ご主人様…」


私は、これまでの主人に仕えて見てきたもののうち、覚えているものを全てご主人様にお話ししました。

「…と、ここまでが私の話になります」


「そうか。まあなかなか面白かったよ。

…不老不死、ねえ」

ここで私は、ちょっとだけご主人様をからかいたくなりました。

「どうかなさいました?まさか、私が不老不死だという事にご嫉妬なされたのですか?」


「いや、別に」


「あら。なぜですか?」


「終わりがない、ゴールがないなんて嫌だ。

こんなつまらない世界で、ずっと生きなきゃないなんて、僕にはとても耐えられないな」


「…」

私は返す言葉がありませんでした。





最後に、私はこう切り出しました。

「ご主人様、あまりご興味はおありでないかもしれませんが…

ウロボロスの伝説というものをご存知ですか?」

ご主人様は、興味を示されたようでした。

「なんだ、それは?」


「ウロボロスという珍しい蛇がいるんです。

それを、探しにいきませんか?」


「そりゃ、またどうしてだ?」


「特に理由はありません。強いて言うなら…珍しい物をお見せしたいから、ですね。

あと折角ですから、旅をしながら過去のご主人様のお話も深掘りさせて頂きます。

それに私…ご主人様との旅なら、素敵な思い出ができそうな気がするんです」


「…そっか。ま、いいよ?

どうせこのままいても何もすることないし」


「ありがとうございます。では、参りましょうか」





その後、旅に出た二人はどうなったのでしょう。

無事にウロボロスを見つけられたのでしょうか。

はたまた、志半ばで旅路に倒れたのでしょうか。

その答えを知る者はいません。


しかし、一つだけ確かな事があります。

それは、






不老不死のメイドが、現在の…

最期の主人と共に死んで行った、という事です。


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