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第五十八話 私が考えた最強のチーム その1

 翌日からフラウたち三人はギルドメンバーを集め始めた。

フラウとリリィは現地で声をかけ、リーリアは掲示板を通じて仲間を集めることにした。


 ひとまず、リリィとフラウはオーシャンから離れ、ローグの街まで戻っていた。

ローグなら戦い慣れたプレーヤーや戦うことを目的としてゲームをしている人が多いだろうと考えたからだ。


「まず、私は討伐者、フラウはビースト、つまり、攻撃特化なわけだ」

「うん」

「だから仲間は守りの硬い守備型特化のプレーヤーの方がバランスが取れると思うんだ」

「だね」

「何でもいい、なんか守りが強そうなやつを一人、見つけてこようぜ」

「了解!!」


元気よくこぶしを突き上げて飛び出す二人。

リリィは先に闘技場の方へ向かった。フラウはそれを見て人の多そうな広間へ向かった。


「守備、守備って言ってもなぁ」


フラウがたどり着いたのは比較的プレーヤーが多く集まる広間だった。

ここで交流を図るプレーヤーは多い。

そのため、仲間になってくれそうな人も見つけやすいかもしれないと思ったのだ。


「久しぶりに一人で歩くなぁ」


フラウはそう言ってきょろきょろとあたりを見渡す。

ゲームの職業についてよくわかっていないフラウだが、防具を多くつけている人が守備型だと適当に認識していた。


ふと視線を動かしていると知っている人影が見える。


「あ! マリンさんにオルトさん!! おーい!」


フラウが元気よく手を振ると二人で談笑していたオルトとマリンが振り返る。


「あ、フラウちゃんじゃん」

「おぉ! 久しぶりだな!!」


二人は親し気に手を振り、フラウに駆け寄る。


「お久しぶりです!」

「どうしたの、こんなところで一人? いつものお友達は?」


マリンの質問にフラウは一から説明する。

そして二人は驚いて目をぱちくりさせた。


「なるほどな、掲示板のこれ嘘じゃなかったのか」


オルトがそう言って例の掲示板を指さす。

そこにはリーリアが管理しているであろうスレッドがあり、「例の狼ちゃんギルド募集中だよ」と書かれていた。


「てっきりガセネタかと……まぁイベントもあるし何かしら動くかなぁとは思ってたけどな」

「そうそう、私なんててっきりフラウちゃんはお鈴さんのところのメンバーかと思ってたんだヨ」


二人がそう言って「ね」と頷き合う。


「お二人はどこのギルドに入っているんですか?」


フラウがそう尋ねると二人は同じギルドだと教えてくれた。


「特に名前が知れ渡っているようなところじゃないヨ~」

「なら、今度のイベントでは敵ですね~」

「お手柔らかに頼むよ~フラウちゃん、あれからまた不思議なスキルでも手に入れたんじゃないかなぁって思って」

「どうでしょうか? あ、転職はしましたよ!」

「ほうほう、たしか魔導士だったよね」

「はい! 今はビーストです!!」

「ビースト……?」


きょとんとするマリンにフラウは簡単に説明した。


「なんというか、奇天烈な……と言うか、あの上位にいつもいるリーリアさんとも知り合いだったんだネ。しかも同じギルド……これは恐ろしいことになりそうだヨ」

「どうしてですか?」

「リーリアさんも強いからね~なんというか、無慈悲なんだよね~」

「リーリアちゃんが?」

「私たちはリーリアさんとは戦いの場でしかあったことないから、あんまり人に興味ないのか、いっつも倒してさっさと次に行くよ~仕事人って呼ばれてるし」


そう言って苦く笑うマリン。そのとなりでオルトも苦い顔をしていた。


「なんというか、一撃必殺なんだよな。俺なんて認識した時にはやられてたよ」

「へぇ、初めて知りました」

「まぁ仲間集め頑張れ~あっちの方でフラウちゃんと同じようにギルドメンバー集めている人多いから、みんな集まってるよ」

「ありがとうございます! 行って見ます!」


フラウはそう言って駆け出した。

向かう先は広間から地続きになっている噴水の周辺だ。

そこではオルトの言ったように「ギルドメンバー募集」の看板を持ったプレーヤーが多くいた。


「ああすればいいのか! あ、でも材料ないな……声かけるしかなさそうだな」


フラウはそう呟きながらウロウロと噴水を歩く。

フラウの周辺ではギルドメンバーを集めているプレーヤーが「あっ」と声を上げることが多かった。

たまに「悪魔」や「怪物」など囁かれることもある。フラウはどうにも視線を感じて居心地が悪くなった。

そんなフラウにも話しかけるプレーヤーは沢山いる。


「あ、あの、ギルドお探しですか!」

「うちに、ぜひ!!」

「お力添えを!!」

「獣っ子万歳!!」


そんな声がたくさんかけられたが、フラウは「メンバーを探しているので」と距離を取るように努めた。

しかし、フラウがメンバーを探していると言う噂は瞬く間に広がり、今度は「メンバーになりたい」と声を上げる人が多く集まった。


「困ったな」


そう言ってフラウは声をかけてくる人たちを見てオロオロと狼狽える。

ふと遠巻きに二人の少女がこちらを見ていた。

双子なのか、顔立ちが似ており、片方の子は髪が長く、もう片方の子は髪が短かった。


「行こ! ほら、はやく! 私たちはあの人に憧れてここに来たんだから!!」

「でも、人が多いよ。少なくなってからじゃだめかな?」

「そんなのダメ! もし定員が埋まっちゃったらどうするの?」

「大丈夫だよ、きっと沢山の人が入れるギルドのはずだから」

「でもでも!!」


そんな言い争いを続けてもう数分になる。

フラウがそんな二人にさりげなく歩み寄った。


「あ、あの、ちょっとお話しない?」


フラウが戸惑って話しかけると双子はビクリと肩を鳴らす。


「だ、大丈夫、食べたりしないから!!」


フラウはそう言って顔の前で手をパタパタと動かす。

それと同時にフラウの尻尾もパタパタと動き、双子はそれに釘付けになっている。


「とりあえずゆっくり話せる場所に移動しよう!」


フラウはそう言って双子の手を引いた。

フラウの周りを囲っていたプレーヤーは残念そうにその背中を見送る。

その視線を痛いほど感じつつ、フラウは早くこの場から立ち去りたくなった。

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