第四.五話 プレーヤー
スタットの広間はイベント開始からザワザワと盛り上がっている。
「今回の見どころはやっぱ新スキル持ちだよなあ!」
「掲示板で噂の?」
「俺はやっぱ前回一位のレバノンギルドのカナトが気になる」
「カナトもう既に一日目でコイン五十万集めたって」
「どんだけ倒したんだろ。バケモンかよ」
そんな会話の中、広間に設置された大画面ではフラウの姿がちらりと映される。
「あ! あれって隠しダンジョンじゃね?」
「あの子まだそんなにレベル高く無さそうだけど大丈夫かな?」
「おっ! 魔術師か! 服装はレアリティの高い防具つけてるけど、まだ魔法は初級レベルだな」
フラウの健闘をちらりと映した画面は、直ぐに違う人物に入れ変わる。
「あれって"独裁者"のライラじゃない?」
「やっぱあの範囲攻撃は強ぇ!」
独裁者と言う言葉とは裏腹に、背丈の小さなライラと言う少女は、魔法陣を一人で地面にたくさん浮かび上がらせた。
哀れなモンスターはそれらを踏むと音を立てて爆発する。
どうやら、ライラの魔法陣は何か衝撃を受けると自動で発動される仕組みのようだ。
その魔法陣にモンスターはどんどん駆逐されて行き、残るのは火の海だった。
モニターは別の画面に切り替わる。すると、広間はまた違う話題が持ち出された。
「あ、さっきの隠しダンジョン攻略されたって」
「あの子が? モンスター弱かったのかな?」
首を捻る群衆。画面は再びフラウの姿を映し出していた。
それは狼モンスターのような風体から人型に戻る所だった。
騒然とする広間のプレーヤー達。
一瞬だったが、初めてみるスキルに熱心なプレーヤーは調査を始めた。
画面を見ていたプレーヤーは無邪気に喜ぶフラウを眺め、あっと声を上げた。
「手に入れたアイテムは…耳としっぽ?」
「獣人可愛い」
「あ、そう言えば前掲示板で質問者が言ってたんだけど、その特殊スキル、狼の姿になれるらしいよ?」
「じゃああの子が質問者?」
「初心者なのにラッキーなやつ」
広間は新スキルのお披露目に大盛り上がりだ。
しかし、その話題はすぐ別の方へとすり変わっていく。
なぜなら、画面に一日目を終えた集計とランキングが発表されたからだ。
一位はカナト、二位はライラ、三位はグリズリー。
前回のイベントでも上位を占めていた猛者の名前だった。