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第五十四話 モンスターVSモンスター?

 海の中に引き込まれたフラウ。

モンスターが眼前に迫り、大きな口を開いた。


「……っ!!」


フラウは間一髪でよけたが、モンスターの方が当然泳ぎは早い。

すぐにまたフラウの眼前に現れ、その鋭い背びれや尾ひれでフラウをいたぶる。


「(スキュラ!!)」


フラウが慌てて杖を握りしめた。

杖が光、フラウの体が光に包まれる。

モンスターは異変を察した様子で一旦距離を置いた。


フラウの姿が変化した。体調約二十五メートル。その大きさは今戦っている魚類モンスターにも負けない。

足元には六つの狼の頭があり、その顔は悪魔のように鋭くなる。

肌の色も異常なまでに灰色になったあと、その鋭い眼光を魚類モンスターに向けた。

モンスターはひるむ様子もなくフラウに追突しようと泳ぎを加速させた。

しかし、フラウの周りに現れた毒の霧がモンスターを捉えた時、モンスターはマヒしたように痙攣し、一瞬動きを止めた。


「(グール!!)」


フラウが手に持っていた狼の頭の杖を前方へ向ける。

すると足元にいた狼が一斉にモンスターに嚙みついた。

モンスターは抵抗もむなしく、その身を喰らいつくされる。

その光景を見たフラウは自分のしたことながら惨さを感じずにはいられなかった。



 フラウが海中に沈んでから海が禍々しい紫に染まる。


「なにが、起きるんだ!!」

「あのモンスターも何か毒のようなものを使うのでしょうか」


陸地で眺めていたリリィとリーリアは警戒態勢を緩めない。


「来たぞ!!」


海中に現れた黒い影が大きく、大きくなっていく。

今にも飛び出してきそうな様子に二人の緊張は高まった。

そして――――「やったよーーーー!!」そんなのんきな声が港に響き渡った――――フラウが現れたとともに、持ち上げられた海の水が一気に陸に津波となって襲い掛かる。


「うわっ!!」

「ふ、ふらうさん!?」


二人を飲み込まんとする毒に染まった津波に、フラウは慌てて両手で二人をつまみ上げる。

津波は港を水に沈めたが、運よくモンスターが出ると噂されていたためNPCは一人もいなかった。


フラウにつままれた二人はそっと再び陸に降ろされた。

そして、フラウもその姿を人に戻し、港に打ち上げられた毒に侵された魚を見て「うわぁ」と声を出す。


「“うわぁ”じゃない! あたしらもこうなるかもしれなかったんだぞ!」

「ごめん、ごめん」


あははと笑うフラウに二人は安堵のため息を吐き出す。


「モンスターは?」

「食べちゃった!!」


フラウが元気いっぱいにそう言うとどこからか大きな宝箱が三人の目の前に振ってきた。

リリィとリーリアはそれを見て呆れた様子で目を伏せた。

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