第五十二話 海の国オーシャンと新たな目的
フラウたちがたどり着いたのは漁業が盛んな“オーシャン”と言う国だった。
ひとまず船を港に停泊させ、フラウたちはNPCに話しかける。
「ここはオーシャン、よく来たな海賊たち! 俺たちの国で悪さをすると牢獄域にぶち込まれるから、大人しくしとけよ」
快活なNPCはそう言って持っていた樽をまた市場に卸し始める。
「とりあえず休めるところでも探す?」
フラウの提案にリリィもリーリアも賛成した。
三人が歩くと賑やかな市場が見えてくる。
ひしめき合うように並んだ露店には珍しいアイテムや装備、食べ物が並んでいた。
フラウはそれらに目を奪われつつ、リリィに引っ張られる。
「いちいち見てたら日が暮れるだろ~」
「でもでも、見て! これって何に使うのかな? 占いとか? こっちの衣装かわいいよ! アジアンテイストってやつかな?」
「早くいくぞー」
リリィがフラウの腕を引きやっと市場を抜ける。
次に現れたのはNPCの家とテラス席が多いカフェ、その奥には宿も見える。
「とりあえずこのカフェに入りますか?」
「アイスとかあるかな?」
フラウがワクワクしつつメニューを開くとやはりアイスやパフェがたくさん描かれている。
海に近い町と言うことで海や海洋獣がモチーフのものが多かった。
しばらくアイスを楽しむと、リーリアが「転職についてですけど」と話を切り出した。
「メニュー画面からできるんです。次いでなんで、ここでやっちゃいましょうか」
リーリアがそういってメニュー画面を開くよう指示を出す。
二人は指示通りしたことを伝えると、リーリアはステータス画面を見るよう指示を出した。
ステータス画面にはいつもの数値が書かれている。
そこにある職業をタップするようリーリアは続けた。
「あったぞ!」
「あ、私も~!」
二人がそれぞれ転職可能な職業を確認する。
リリィは現在戦士だが、転職欄には「パラディン」「鬼人」「重騎士」等多く表示されていた。
「どれにしよっかなぁ」
リリィが考えている間、フラウも確認する。
「私は魔導士で、転職は……あれ、少ないなぁ」
フラウの転職欄に表示されていたのは「ビースト」のみだ。
当初の目的のガンナーがなかった。
「あ、でもこれ条件付きだけど全武器使える! これにしよっと」
「え? フラウさん、そんなチート職あるんですか?」
「うん! えっとね、ビーストっていうやつなんだけど……」
「ビースト……なんだか嫌な予感とかしませんか? あ、条件ってなんですか?」
「えっとね、その武器が使えるモンスターの力を手に入れること……って」
「これ以上びっくりスキル増やさなければならないんですか!?」
リーリアは驚きとともに呆れる。
傍で聞いていたリリィも「まだあるんだ」とぼやいている。
「やめておいたほうが無難じゃ……」
「でももう押しちゃったから取り消しとかできる?」
「できませんよ!?」
リーリアの叫び声は惜しくもフラウには響かない。
フラウは「困ったねぇ」と暢気に構えていた。
「こうなったら、集めるしかないね、モンスタースキル!」
フラウは新たにやるべきことが追加された。
「これからどんどんボスを倒すよ!」と息巻くフラウ。
リーリアはどうしようとリリィに視線を送るが、リリィはそれを躱して自分の職業を考えていた。




