第四十六話 夢の境目
強い光が晴れた時、目の前に広がったのは広大な大地。
青々と茂草木と突きぬけた青空。
「気持ちー!!」
リリィはその穏やかな陽射しと柔らかい芝に寝転がる。
「ちょ、リリィさん!!」
「リーリアも寝転べば?」
「いいです! 行きますよ」
リーリアがそう言って顔を上げると、目の前に街が広がる。
「あれ、急に……」
リーリアが不審に思ったが、リリィは迷わず街に入る。
街にはNPCも歩いており、何ら不思議な所や違和感は無い。
リーリアは訝しげに思いつつ、辺りを観察し始める。
違和感は全くない。
しかし、何処か何かが違う。
それを確かめるため、街を練り歩いた。
陽がくれた頃、街には明かりが灯り始める。
リーリアは路地で休憩していた。
花壇の煉瓦に腰を下ろした時「あっ」と声を上げた。
「プレイヤーが私達以外いない……!」
リーリアは慌ててリリィの肩を掴む。
リリィは「え?」と振り返った。
「ここ、おかしいですよ!!」
リーリアの言葉と共に空間に罅が入る。
ガラスが割れるように砕け散った中にリリィも含まれていた。
リリィの顔に亀裂が入った時、リーリアは驚きで息を飲む。
"はっ"と目を開けた時、真っ黒な空間に放り出されていた。
妙な浮遊感にリーリアは足元を見る。
「お、落ちてる!!?」
リーリアが手足をばたつかせ抵抗するとまた"ブツン"と音が響いた。
そして、瞳を大きく見開けた時、リーリアの顔を象の様な顔をしたモンスターが覗き込んでいた。
洞窟中に響き渡るリーリアの悲鳴。
モンスターは長い鼻をユラユラさせて薄いピンクの煙を口から吐き出す。
手には煙管を持っており、何処と無くインドの神様ガネーシャを彷彿とさせた。
「な、な、な……!!?」
リーリアは慌ててモンスターから距離をとる。
周りを見渡すと壁際の方向にリリィがスヤスヤと穏やかな顔で眠っていた。
「リリィさん!! リリィさん起きてください!」
リーリアが叫ぶが、気づく様子がない。
「このモンスターを倒さなくちゃ!!」
立ち上がり、武器を構えたリーリアだが、象のモンスターは両手を上にあげて戦闘する気がない様子だった。
「このっ!!」
リーリアがレイピアを持って切り掛る。
しかし、ヒラヒラと躱されて一撃も当たらない。
向こうから攻撃をされることも無いため、決着もつかない。
苛立ちを募らせたリーリアだが、象のモンスターは飄々と煙管をくゆらせている。
「私と戦え!!」
リーリアはモンスターに訴える。
モンスターはちらりとリーリアを見て大きなため息を吐き出した。
「落ち着け、ニンゲン。なにも、戦わなくてもよかろう? お前も穏やかに眠るが良い。ワシが良き夢を与えてやろうぞ」
モンスターがそう言い首を横に振る。
リーリアは「話せるの……!?」と攻撃の手を止めた。
「ニンゲン、何をカリカリしている?」
「リリィさんの目を覚まさせて!」
「何故? あのニンゲンは幸せそうに眠っておるよ」
「困ります!」
「ふむ、ならば自分で目を覚まさせれば良い」
モンスターはそう言って手をリーリアに向ける。
リーリアは身構えたが直ぐに瞼が重くなる。
「眠れ、そして、あのニンゲンを連れてくればいい」
ぐらりと視界が歪む。
「しかし、あのニンゲンはどちらを選ぶだろうな」
ふぉっふぉっふぉっとわざとらしい笑い声をあげて象のモンスターの姿は視界から消える。
次にリーリアが目覚めた時、そこは学校だった。




