第四十三話 封じられた土地神
夜になり、ジャングル一体が不気味な静けさに包まれた時、地を這う遠吠えが三人の耳に聞こえてくる。
リリィは大剣を構え、リーリアはレイピアを構えた。
「武器変えたのか?」
「まぁ、こっちの方がしっくり来ますからね」
リーリアはそう言って細身の剣を掲げた。
剣先が不思議な色に輝いている。
「いいな、その剣。でも油断するなよ?」
「わかってますって」
リーリアは後ろのフラウに視線を向ける。
フラウも狼の頭の杖を構えて準備万端そうだ。
「来るぞ!!」
リリィの言葉と同時に拝殿近くの地面に黒い影が降り立った。
月の光に照らされて見えてきたその姿はライオンの頭、ヤギの体が見える。しっぽの蛇は"シャー"と威嚇音を鳴らして三人を見つめていた。
「誘導します! "エアーカッター"」
リーリアの剣から空気の刃が三つ飛び出した。
それはキメラの体にぶつかり、ダメージは与えないものの注意を引くには十分だった。
リーリアに標的を絞ったキメラは筋骨隆々な体躯からは想像できない身軽さでリーリアに近づく。
リーリアはそれを躱しつつ、拝殿の中央に迫る。
「"剣舞"」
リリィがリーリアの援護に向かうため、自身のスピードを上げた。
リーリアが真っ直ぐ拝殿に走る中、キメラが道を外れないよう地面を削る。
キメラはまんまと拝殿近くまで連れてこられた。
「このまま行けば中央です」
「キメラのケツを叩く! リーリアはそのまま突っ切れ! 中央にきたらフラウに任せる!」
「分かりました」
キメラはリーリアを追いかける。
その背後からリリィが大剣をスイングする。
すると、キメラは悲鳴をあげて中央に追いやられた。
そこにフラウが「"ポイズンボム"」と唱えた。
キメラは弱っていたのか、不意をつかれたのか、すくに状態異常を表す。
「シスターさん! 今です」
フラウの呼び掛けにシスターは物陰から現れる。
「"~~神よ身代にお戻りください"」
シスターはそうして石の欠片を掲げた。
エメラルドの輝きを放ち、キメラを囲うように、石の欠片はその形を中央に作る。
銅像が完全体となった時、キメラの叫び声と共にそれは封じられた。
「やった!」
フラウ達は飛び跳ねて喜んだが、シスターは物静かにそれを見つめている。
ふと、リリィが何かに気づく。
「おかしいぞ、クエスト達成の合図がない」
その疑問を口にした時、シスターは不敵に笑い始めた。
ギョッと目を見開き、彼女をみた三人。
シスターは薄ら笑いを貼り付けて三人に感謝を述べる。
「これで、邪魔ものはいなくなった」
シスターのその言葉は先程まで発していた美しい声とは裏腹に、嗄れた醜い声となる。
新たなクエストのスタートが切られた。




