第四十一話 昼休憩
昼休みだった。
学校で一つの机を囲んで座っていた。
璃々亜も最初は遠慮していたが、気軽に話せるようになってから一緒に昼を食べていた。
二人は昨日あったことを璃々亜に話していた。
「でさ、香瑠が暴走して」
「香瑠さん、完全にモンスター扱いなんですね」
璃々亜ははははと乾いた笑いを上げる。
「私はモンスターに変身できるだけだと思ってたよ〜あの時の画面凄く赤くって気持ち悪かったなぁ」
「そんな感じだったのか?」
「うん、体も言うこと効かないし。変な感覚だったよ〜」
「うーん、バグみたいな感じなのかな? 長い間その状態だと酔いそうだな」
友理彩は何かを考えるように顎に手をやる。
璃々亜も同じように何か考えていたようだ。
唯一キョトンとしていたのは香瑠だ。
「体にも良くなさそうなんで、今後気をつけてください」
璃々亜はそう言って香瑠を見る。
「そう言えば璃々亜ちゃんはパラノアに行った?」
香瑠は璃々亜にそう尋ねたが、璃々亜は「うっ」と声を出して苦い顔をする。
「ま、まだです」
「えっ! そうなの? なんで?」
「くっ……ボッチには……」
「え?」
香瑠がじっと次の言葉を待っていると、友理彩が「ははーん」とわざとらしい声を上げた。
「まさか、璃々亜、フレンド居ないな?」
友理彩のニヤニヤとした笑みに璃々亜は拗ねた様子で俯く。
「べっつにキョーミないです!! どーせソロボッチの私にはカンケーのない話ですからね!!」
フンッとそっぽを向く璃々亜に、香瑠は「そうなの?」と首を傾げる。
「友達私も少ないけど、掲示板とかでパラノア行く人募集してたし、璃々亜ちゃんなら強いし大歓迎だと思うよ?」
「そ、そんなこと、そんなことできたら……今まで強制ソロプレイしなくても済んでます!」
拗ねる璃々亜に友理亜はケラケラと笑う。
「まぁ璃々亜はそうだろうと思ってたぞ」
「むっ! 友理亜さんにそう言われると腹が立つ!」
「はっはっはっ! 何とでも言うがいいわ!」
「どうせ友理亜さんも香瑠さん以外友達いないんじゃないですか! いっつも一緒だし!」
「まさか、香瑠が居ない時はちゃーんと交流版でパーティーくんでレベル上げ行ってるっつーの」
「えっ!! くそっ! コミュ力の高いやつにはわかるまい! この苦しみが!」
璃々亜はぐぬぬと悶えて香瑠を見る。
「香瑠さんは! こっち側ですよね!?」
「えっ? わ、私も人に話しかけるのは苦手だけど、何人かお友達は居るよ〜初心者の時によく助けてくれた人達とはたまに一緒にやったり」
「なっ……!! まさか、突然の裏切り……!!」
「えぇ!? ご、ごめん……」
璃々亜は本格的に落ち込み始めた。
香瑠はそんな璃々亜を見てアワアワと手をばたつかせる。
友理亜はケラケラと笑ってからかっていた。
「私だって……興味津々ですよ。でも……海に出るのに一人とか……なんか豪華な海賊船を買えたとしてもなんか寂しいじゃないですかぁ……」
「私達にメッセージくれたら迎えに行ったのに」
「それもなんか……気恥しいと言うか、なんと言うか。海に出て適当な船に乗せてもらったとか、掲示板で見ましたけど、そんなこと尚更できないし……」
机に突っ伏しつつボソボソと話している。
そんな璃々亜に、友理亜は「焦れったいなあ」と笑っている。
「そう言う時は、一緒に連れてって〜って可愛く言ってくれたら連れてくぞ」
「なんですか! 可愛くって!!」
「それはあたしの趣味だ」
「変な趣味に巻き込まないでください!!」
そんな二人を香瑠も笑ってみている。
「ね、璃々亜ちゃんも今日一緒に行こう! 人が多い方がクエストも早くクリアできるから、私は大歓迎だよ〜」
「……! か、香瑠さんがそう言うなら……」
「決まりだね〜友理亜もいいよね?」
香瑠の問いかけに友理亜は「当然」と返事を返した。
璃々亜はやっと顔を上げて目を輝かせている。
どうやら相当興味があったようだ。
香瑠は今日も楽しくなりそうと気軽に思った。




