第三十九話 サブクエスト"血の涙"
サブクエストはNPCが目印で立っており、そのNPCに話しかけるとクエストが提示される。
承諾を押せば契約が成立し、NPCの要件が開示する。
二人がジャングルをまっすぐ突き進むと、キャンプ地が見えてきた。
そこには数名のNPCが滞在しており、その中でも小さな少女にクエスト発生のマークがついていた。
「お前達はどこから来た?」
一番強そうな男が皆を庇う様に二人の前に立つ。
「海を渡って、流れ着いたんだ。そこにダンジョンがあったけど進めなくて、ジャングルに入ってきたんだ」
リリィがそう言うとNPCは「海賊か」と警戒体制をとった。
「ち、違う! 私達は敵じゃなくって! その、そこのピンク色のワンピースの女の子に用があるんです!」
「ん? レミに何の用だ。あれは俺の娘だ。悪さしようってなら、女でも容赦はしねぇぞ」
「ひぃ! ご、ごめんなさい! その、レミさんは赤い宝石とか流れ星の欠片とか見たことないですか?」
フラウがオドオドと尋ねると、小さい女の子レミはハッと顔を上げる。
「私の……私の救世主様ですね!!」
「なに!? 夢に出てきた人達ってのは……」
「はい! きっと彼らに違いありません!」
そこで"ピコン"と機械音が響いた。
二人の視界に「血の涙」というクエスト名が表示されている。
その下に「承諾」「拒否」の二文字が並んでいた。
二人は「承諾」を選択する。
「やっぱり、やっぱり救世主様ですね!! よければお話を聞いてくれませんか?」
二人が頷く間もなく、NPCは奥のテーブルへと案内する。
「実は」
レミは神妙な面持ちで話を始めた。
それは、数日前ジャングルに現れた大きな目玉が着いた十字架を中心に恐ろしいモンスターが現れた、と言う話だった。
「その十字架の目玉から真っ赤な血がダラダラと流れており、その血に触れたモンスターが何かに感染したかのように暴れだしたんです」
レミは眉根を寄せて話を進めた。
「小さいモンスターたちが暴れるとこのジャングルの主が現れて……その主も血の涙に触れてしまったようです。いつもは穏やかなモンスターなのですが、今はジャングルのあっちこっちで暴れ回っていて……私達はどうすることも出来なくて……」
レミが一筋の涙を流した。
父親のガジンはそんなレミを慰めるように肩に手を添える。
「俺の娘は占い師でな、よく予知夢を見るんだ。そこに二人の救世主が現れて、この問題を解決してくれるとお告げを受けた。頼む、力を貸してくれ! このままでは俺達は……」
そう言って口を紡ぐガジン。
フラウとリリィは「よしっ!」と気合を入れた。
「まかせろ! あたし達が解決してやるよ!」
「うん! 安心して暮らせるように、力を貸すね!」
「さっそく案内してくれ!」
二人の力強い言葉に、二人は顔を輝かせた。
「ありがとうございますっ……!」
レミは歓喜の涙を流した。
そして、二人をジャングルの奥地まで案内する約束を取り付ける。
「今日はもう日が暮れますので、明日、出発致しましょう!」
レミの言葉に二人は空を見上げた。
空は日が傾き、黒い雲を連れてくる。
レミとガジンが晩御飯と寝床を用意してくれると言う。
その言葉に甘え、二人はひとまず休憩をとることにした。




