第三話 イベント一日目
スタットに降り立ったフラウ。
今回はイベントに参加しようと息巻いていた。
友理彩の家にもゲームは届いたのだが、この前行った実力テストの成績が良くなかったらしく、友理彩はまだゲームに参加出来ていない。
そんなに悪かったのかと思った香瑠は、友理彩の点数を見せてもらったが、どこが悪いのか分からなかった。
結局、初参加のイベントは香瑠一人で行うことになった。
「友理彩も来れたら良かったのになぁ」
広場に集まる人々に紛れ、残念そうに呟いたフラウ。
その言葉をかき消すように大きなブザー音が会場に鳴り響いた。
とうとうイベント開始の余興が始まるようだった。
あれから、香瑠もゲームのことについて少し知識をつけた。
特に"ウルフメイク"の使い道について調べていたのだが、どうやらこれは特殊スキルに分類されるものらしく、いい情報は得られなかった。
特殊スキルとはモンスターの固有スキルのようなもので、基本的にはそう簡単に手に入るものでは無い。
フィールドに存在する隠れダンジョンを攻略し、そのダンジョンのボスモンスターを倒した時、一定の確率で出てくるらしい。
隠れダンジョンとは、一度攻略されると次はいつ現れるかわからない特殊なダンジョンだ。
フラウとなったあの日、無茶苦茶に走って洞窟の奥の奥まで逃げ込んだのだが、攻略したダンジョンは"地下道"と呼ばれる隠れダンジョンだそうだ。
モンスターもそんなに強くないため、攻略者は多く存在するが、フラウの手に入れた"ウルフメイク"と言うスキルは誰も所持していないらしい。
新しいスキル情報に掲示板は大いに盛り上がったが、初心者の言っていることを真に受けるなと言う意見も多数見られた。
しかし、そんなことは何処吹く風とばかりにフラウは自分の持っているスキルの特別感を味わっていた。
特殊スキルは鍛えると新たに進化するものもあるという。
フラウはそれに期待をし、結果今日まででレベルは二十五まで上り詰めたが、スキルにこれといった変化はなかった。
ただ、ウルフメイクを使用して戦闘した際に、ステータスが少し上昇すると言う事を知った。
ステータスは攻撃、スピード、防御、HP、MP、命中率、幸運、魅力、等普通のゲームより振り分けが多かった。
きっと組み合わせによるプレーヤーの自由な身体の使い方を可能にするためだろうと考えられる。
フラウは、ステータス画面を眺めたが、いい組み合わせなどもちろん知らない。
そのため、レベル上げで手に入れた称号を考えてスキル割り振りをしていた。
そして数ある中でも、攻撃力、スピード、HPをピックアップして全ステータスを振り分けたため、そのステータスだけで言えば中級モンスター程度まで登り詰めていた。
「さて、狩るぞ〜!!」
気合を入れたフラウは森に降り立っていた。
イベントは通常のフィールドで行う訳では無いらしく、特別な空間を設けられている。
変わらないのは、その空間も森や谷や砂漠がずっと奥まで拡がっているという事だ。
そして、イベントの概要はこう示された。
まず、モンスターを倒すとモンスターからドロップするコインを与えられる。
そのコインを多く集めれば集める程、豪華な景品と引き換えて貰えるというものだ。
景品の中には特別なスキルもあり、イベント限定でしか手に入らないものが存在している。
そして、前回に引き続き、上位のプレーヤーは掲示板の順位表で表示される。
期間は現実世界で七日間。
イベント参加者は、スタットの掲示板で二十四時間ランダムにピックアップして放送され、不参加者でも楽しめる仕様となっていた。
「とにかく、モンスターを倒してコインを手に入れたらいいものが貰えるってことだよね」
フラウが気合を入れて向かったのは、モンスターが多く存在する谷間エリア。
谷間は入口の転移魔法陣に乗り込むと谷底まで案内してくれる。
フラウは他のプレーヤーと同様に乗り込み、谷底までやって来た。
各々散っていくプレーヤーに紛れ、フラウも探索を始めた。
「スパーク! ファイアーボール!」
フラウは勢いよく叫ぶと、モンスターは麻痺しその場から動けなくなる。
そこにファイアーボールで畳み掛けるという単純な戦法だ。
時間をかけるとモンスターは逃げ出すこともあると言うので、状態異常を利用していた。
レベルの関係上、どうしてもフラウはまだモンスターを一発でしとめ切れるほどの実力がなかった。
特殊スキル"ウルフメイク"を使用すれば別だが、奥の手として取っておきたい心持ちだ。
二発、三発、そうしてモンスターは電子の粒子となって消えていく。
フラウは調子よく進めていた。
「ひとまず、二十匹は倒すことに成功したかな? そろそろ狩場を変えようかなあ、人も多くなってきたし」
フラウはそう呟いて別の場所へと向かう。
次の目的地は、谷間の奥の転移魔法陣から繋がる洞窟だった。
モンスターのレベルが上がれば手に入るコインの量も確率もアップする。
ボスモンスターを倒すことが出来たら、コインは百枚〜ボスモンスターのレベルに合わせて多く手に入るとされていた。
フラウはイベント一日目のためそこまでスピードを上げようと考えていなかったが、自分の実力でも倒すことの出来るモンスターが多かったため、イベントを進める方針に変えることとした。
「それに、レベルも上がって一石二鳥なんだから、がんばろっと!」
お〜! と洞窟の天井に拳を突き上げたフラウ。
目指すは洞窟の最奥だ。
どんな敵が待ち構えているのか、ワクワクと胸を躍らせた。